燎煉地方
読者さん
さてと……
読者さん
意気込んで外に出てきたのは良いものの
読者さん
ケーキショップはどのへんだろうか?
建物の外は灼熱の洗礼
……いや
今は勇気の証である真紅の作業着を纏っているのだ
読者さん
(暑さなど微塵も感じない……)
読者さん
(相変わらずどんな技術なんだか)
読者さん
(……)
読者さん
(いや、魔法かぁ)
たぎる溶岩の如く
荒ぶる自身
赤より紅い衣
読者さん
そんなことよりも店の場所の確認だ!!
読者さん
そのためのスマホだろう?
読者さん
ただの高く高性能なポケットの肥やしじゃあない
読者さん
……
読者さん
(まぁ実質タダで貰ったも同然なのは内緒だが)
取り出すは文明の利器
足取りならぬ指取りは軽く
近くの菓子屋を表示させるなど取るに足らない
読者さん
うわ……
読者さん
何件あるんだ!?
読者さん
菓子屋さんだらけじゃんか……
読者さん
燎煉の街ぃ
よく周りを見渡してもやはりこの近くだけでも数件はある
意識すれば甘い香りもわかるだろう
視野というのは目だけのものではない
読者さん
どの店のケーキがいいんだ!?
読者さん
……
読者さん
……
読者さん
……
読者さん
どの店も高評価すぎて当てにならん!!
高評価のインフレーション
見極めと本質のデフレーション
ここは見た目の華やかさ勝負といったところか
読者さん
みんなが皆美味しいと口を揃える
読者さん
それは非常に良いことだ
読者さん
(だが待て?)
読者さん
(人それぞれ美味しいの価値観は違うもの)
読者さん
(となると)
読者さん
……
読者さん
……
読者さん
……
読者さん
(智美さんにとっての美味しさとはなんだろう?)
こればかりは何でも調べれば知ることのできるスマホにもできぬ芸当
人工知能は人にいずれ勝るというが
個人的な想いの代わりには決してなれない
読者さん
(味よりもだ……)
読者さん
(結局のところは)
読者さん
(気持ちがこもってるかどうかなんだよな)
想いを込めたプレゼントはなんであれ
喜ばれるに違いない
味や値段なんかじゃ測れないプライスレス
読者さん
ちょっと距離はあるが
読者さん
休憩時間の範疇では往復できる位置のこのお店
読者さん
この写真のケーキはなかなか美味しそうだ
読者さん
これにしよう
一度決めたら即行動
迷うなかれ
少なき時間に精一杯の行動を