翌日、私は職員さんとその人の元へ向かった。
後遺症の在宅治療を受けているようなので自宅へ向かう。
紗奈
あの……
職員
どうしたの?
紗奈
その人の名前って……
職員
『笠島駿哉』くんよ
紗奈
(お、お……
男の子!?
紗奈
(あんな可愛い字で男子ですって…?
職員
何で驚いた顔してるの?笑
紗奈
え、そんな驚いた顔してましたか
職員
うん
紗奈
……あは、なんでもないです
職員
……あ、ここがそうよ
職員さんが指さした先には、『Kasasima』という表札がかかっている家が1件。
ピーンポーン
?
はい、どなたでしょうか?
職員
こんにちは、◯◯療護施設の酒田です
?
ああ、酒田さんですね!
?
今うちの息子がドア開けに行くので待っててくださいね!
職員
あ、はい!
30秒後
ガチャッ
?
(紙)こんにちは
?
(紙)どうぞ上がってください
職員
駿哉くん、わざわざありがとね
駿哉
(紙)いえ、どういたしまして。
紗奈
(この人が……
後遺症があるなんて言われなければ分からないくらいの元気な人だ。
ただ、話す時に紙を用いるので大変そう
駿哉
(紙)あなたがサナさん?
紗奈
はい……紗奈です、よろしくお願いします
駿哉
(紙)僕は駿哉!よろしくね
駿哉
(紙)まあここで立ち話もなんだし上がって
紗奈
ありがとうございます
駿哉の母
いや本当にごめんなさいね〜
職員
いえいえ、大丈夫ですよ
駿哉の母
あ、駿哉、お母さん達はここで大人の話してるからあんたは紗奈ちゃんと話しておいで?
駿哉
(紙)あ、うん
紗奈
お心遣い感謝します
駿哉の母
あら紗奈ちゃん、礼儀正しいね
紗奈
ありがとうございます
駿哉
(紙)行くよ
紗奈
はい
駿哉
(紙)ここ僕の部屋
紗奈
広いね
駿哉
(紙)そうかな……?
駿哉
(紙)そういえば紗奈さんってどうして死にたいの……?
最初、この言葉を聞いて、カチンときた
何も知らない人に話したくないって……
でも、この人になら話しても『救われる』んじゃないかと思って口を開いた
紗奈
唯一の支えだった両親を無くして……
紗奈
交通遺児になって……
紗奈
私が施設に入ったことを知った友達はどんどん離れていって……
紗奈
だんだん自分は1人なんじゃないかって恐怖感に押し潰されそうになって……
紗奈
1人きりなら、寂しいから死にたいよ……
駿哉
(紙)……辛かったね
この文字を見た途端、目から涙が溢れ出た
駿哉くんは、私が泣き止むまでずっと背中を撫でてくれていた
どうしてだろう……
今まで、この事は絶対に話さないって決めてたのに
出会ったばかりの駿哉くんに話すなんて……
駿哉
(紙)一人が寂しいなら
駿哉
(紙)僕が傍に居るよ
駿哉
(紙)今日あったばかりだけど、信用して欲しい
駿哉
(紙)我儘かな……?
紗奈
ううん……
紗奈
ありがとう
紗奈
駿哉くんのお陰で前を向けた気がする
紗奈
……!
紗奈
駿哉くんは、癌になって『辛い』とか『死にたい』とか思わなかったの……?
紗奈
……!なんかごめんね
駿哉
(紙)難しい質問だね(笑)
駿哉
(紙)うん、思ったことはあるけど……まぁ、それ以上に『生きたい』って思えたから
紗奈
どうすれば生きたいって思えるかな……
駿哉
(紙)生きることが楽しいと思えばいいんだよ
紗奈
そっか……
紗奈
でも楽しみなんてあるかな……
駿哉
(紙)あるよ
紗奈
……じゃあ、駿哉くん
紗奈
また来てもいい?
駿哉
(紙)勿論、歓迎するよ
紗奈
……じゃあ、駿哉くんと会うことを楽しみにする!
駿哉
(紙)ありがとう
紗奈
お礼を言うのはこっちの方だよ
紗奈
話沢山聞いてくれてありがとう、駿哉くん!
ガチャッ
?
駿哉、母親がもうそろそろ降りてこいだって
駿哉
👌
?
あとお前は誰だ?(可愛い😆)
紗奈
紗奈と申します
蒼哉
紗奈?俺は蒼哉。駿哉の兄だ
蒼哉
うちの駿哉にまた会いに来てくれよな
紗奈
あ、はい!
駿哉
(紙)じゃあ下に降りようか
紗奈
うん!
職員
今日はありがとうございました
駿哉の母
いえいえこちらこそ
紗奈
駿哉くん、またね!
駿哉
(紙)またね
職員
じゃあ紗奈ちゃん、行きましょう
紗奈
はい
歩き始めて5分後
キキーッ
紗奈
(……車?)
バッ!
紗奈
ん、んーん!
職員
紗奈ちゃん!
謎の男
邪魔だ。
バタン!
職員
紗奈ちゃん!
職員
車のナンバー……
職員
79-28
職員
……紗奈ちゃん……
紗奈
ん……
紗奈
ここは……
蒼哉
紗奈
紗奈
そ、蒼哉さん!?
紗奈
どうしてここに……
蒼哉
……お前が駿哉に取られそうで怖いんだよ
蒼哉
(耳元で)……しばらくここで、俺と生活してもらうぜ……
紗奈
ひゃっ!
紗奈
(嫌だ嫌だ)
紗奈
(助けて)
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