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じいちゃんのタイムマシーン

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じいちゃんのタイムマシーン

117 - 第百十七話:変えられた過去

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6

2022年09月06日

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病室の扉を開けると

母ちゃんはいつもの様にベッドの上にいた

心電図の音が響くこの部屋で

ずっと眠り続けていた……

まるであの出来事はなかったみたいに……

明日夢

何で……

明日夢

何のために……

明日夢

何のために俺は!!

作造

明日夢……

明日夢

じいちゃん……

明日夢

俺……

悔しさが涙となって溢れ出る

作造

父ちゃんが待ってる

作造

母ちゃんのこと聞いてこい

明日夢

え?

病室に戻ってからも涙が止まらなかった

母ちゃんがトラックと衝突するのを回避できたと思ったのに

母ちゃんはずっと眠ったままだった

俺は母ちゃんを助けられなかった

明日夢

父ちゃん……

明日夢

俺、母ちゃんを助けられなかった

明日夢

うまくいけば……

明日夢

意識を失うことなんてなかったかもしれないのに……

タイムマシーンがちゃんと作動していれば

ちゃんと前日に到着していれば

母ちゃんは事故に遭うこともなかった

丈太郎

そんなことない

明日夢

でも俺は……

おかしい……

俺が庇ったはずなのに

母ちゃんはトラックと接触しなかったのに

母ちゃんの未来は変わらなかった

丈太郎

お前は彼女を助けた

明日夢

ダメだったんだよ……

明日夢

母ちゃんは目覚めてない……

明日夢

俺は助けられなかったんだ!!

丈太郎

助けたんだ!

明日夢

え?

丈太郎

お前はちゃんと彼女を助けた!

父ちゃんの言葉の意味がわからなかった

助けたのなら何故

母ちゃんは眠ったままで……

明日夢

ど……

明日夢

どう言うこと?

丈太郎

目を覚ましたんだ

明日夢

母ちゃんが?

明日夢

本当に!?

丈太郎

あぁ……

丈太郎

十日間だけだったけどな……

明日夢

未来で……待っ……てて……

俺がスイッチを押して未来に戻った直後

母ちゃんは意識を失った

その直後に

作造

大丈夫か!?

琴音

愛紗ちゃん!

おじいちゃんとおばあちゃんが駆けつけてくれて

誰かが呼んでくれたのか

救急隊や警察の人も駆けつけ

母ちゃんは直ぐに病院に搬送された

意識のない中で俺を出産……

でもその後

母ちゃんは奇跡的に目を覚ました

丈太郎

あいちゃん……

丈太郎

事故の時のことだけど

愛紗

明日夢のこと?

丈太郎

その……明日夢って……

愛紗

今から話すこと……

愛紗

信じてくれる?

丈太郎

うん……

母ちゃんは父ちゃんに全てを話した

七年前

突然、未来から息子が訪ねてきたこと

父ちゃんと再会してからもずっと

未来から来て話を聞いてくれていたこと

俺が母ちゃんに事故のことを話してしまったこと

それでも母ちゃんは俺を諦めずに産むと決めて

ずっと不安を抱えながらも

俺の誕生を待ち望んでいたこと

丈太郎

未来から来たと言われて驚いた……

丈太郎

でもあの事故の時

丈太郎

目の前で消えた明日夢のことを思い出して

丈太郎

本当なんだろうと思った

丈太郎

本当は目を覚まさないはずだったんだろ?

丈太郎

でも彼女は目を覚ました

丈太郎

間違いなく明日夢のお陰だ

丈太郎

明日夢が助けたんだ

明日夢

父ちゃん……

その言葉に再び涙が溢れる

丈太郎

彼女が教えてくれた

丈太郎

明日夢は……

丈太郎

とても優しく思いやりのある子に育つんだと……

明日夢

母ちゃん……

それから十日後

母ちゃんは再び意識を失い

ずっと眠り続けることになる

何故、再び眠ってしまったのかはわからない

丈太郎

明日夢……

明日夢

これは?

丈太郎

彼女が書いた手紙だ……

明日夢

母ちゃんの手紙!?

丈太郎

明日夢が戻ってきたら渡してほしいって頼まれてた

明日夢

父ちゃん全部、知ってたの?

丈太郎

いや……

丈太郎

忘れてた……

丈太郎

でもお前がいなくなって思い出した

丈太郎

お前が無事に未来に戻るって……

丈太郎

彼女は信じてたんだな……

丈太郎

だからこれを俺に……

明日夢

これ

明日夢

読んでいいの?

丈太郎

当たり前だろ

丈太郎

お前に宛てた手紙なんだ

明日夢

父ちゃんは……

明日夢

これ……

丈太郎

読んでない

ドキドキしながら手紙を開いた

明日夢

母ちゃんの字ってさぁ……

愛紗

やっぱ汚い?

明日夢

ちょっとね……

明日夢

でもホンのちょっとだよ?

愛紗

フォローになってないし!

明日夢

でも俺は好きだな

愛紗

褒めたつもり?

明日夢

本心だよ!

愛紗

本当かなぁ

明日夢

じゃあさ!

明日夢

いつか俺に手紙、書いてよ

明日夢

俺の宝物にするから

明日夢

絶対に大切にするよ

愛紗

へいへい

愛紗

気が向いたらね!

何気なく交わした約束……

母ちゃんはそれを覚えていてくれたのか

手書きは苦手だと言っていたけど

俺のために書いてくれたんだ

少し汚い母ちゃんの字

それを見たらまた泣きそうになった

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