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真剣な眼差しで見つめられ、

何も言えなかった敦は、もじもじと

背中に隠したクッキーをフェージャに手渡した。

中島敦

し、シグマさんと、作ったんです

中島敦

不恰好、だけど、フェージャに食べてほしくて……

中島敦

で、でも、フェージャはお金持ちだから、僕なんかより……

敦が次の言葉を言う前にフェージャはクッキーをひとつかじった。

中島敦

え、ふぇ、フェージャ!

そして敦の手を取り、手の甲にキスを落とした。

フョードル・ドストエフスキー

いいですか、アツシ

フョードル・ドストエフスキー

僕なんか、なんて言わないでください。

フョードル・ドストエフスキー

それに、どれだけ不恰好でも、

フョードル・ドストエフスキー

僕を思って作ってくれたという事実が嬉しいのです。

フョードル・ドストエフスキー

たくさんいる人の中で、僕を見てくれたことが、

フョードル・ドストエフスキー

フェージャは嬉しいのですよ

眠そうな目をぐっと開けて、フェージャは敦を見上げる。

胸がまた、とくんと鳴った。

フョードル・ドストエフスキー

それに、アツシの作ってくれたものは

フョードル・ドストエフスキー

なんでも美味しいに決まっていますから

中島敦

も、もう、フェージャったら

フェージャはクッキーをベッドの近くの机に置き、

明日また食べます、と敦の手を引いて

一緒にベッドに寝転がった。

だが、フェージャは電源が切れたみたいに

そのまま眠ってしまった。

中島敦

……本当、お疲れだったんですね……

もじもじと敦はフェージャの額にキスを落とす。

中島敦

いい夢を、見てくださいね

そう言った途端、急激に恥ずかしくなって、

フェージャに背を向けて敦も眠りについた。

フョードル・ドストエフスキー

……あなたって人は……

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