2010年6月15日(火)
彼女を拉致してから五週間が経過した頃
もうすっかり傷の癒えた彼女は
失声はまだ続いているものの
筆談ボードを用いての会話にも慣れてきて
三村の質問にも淡々と答えるようになっていた
逃げる素振りなどは一切なく
むしろ自らの意思で留まっているようだった
三村優真
いつものように大学に行く三村を
笑顔で見送る彼女
腕に残っていた拘束の跡も消え
まるで新婚の夫婦のように
三村は彼女にキスをして家を出ていった
アルバイトを終え20時過ぎに帰宅した三村
玄関のドアを開けるといい匂いがして
奥へ進むと彼女がキッチンに立っていた
三村優真
包丁を片手に何かをしていた彼女が
三村の言葉に反応して振り返り
嬉しそうに三村に抱きついた
よく見ると
まな板の上には冷蔵庫に入っていた野菜があり
コンロのお鍋からは何かを煮込んでいる音がする
三村優真
三村優真
三村の言葉に彼女が頷く
少し料理の経験があったのか
再び包丁を握り野菜を切り始めた
おぼつかない手つきで野菜を切る彼女の手を止め
今度は三村が彼女を抱き締めた
三村優真
三村優真
三村優真
彼女は嬉しそうに頷き
二人で協力して夕飯を作った
三村優真
三村の言葉に彼女がにっこりと微笑む
後片付けも二人で協力して行い
三村優真
「私はあとでもいい」
三村優真
三村はそのまま浴室へ
彼女が入浴を終えベッドに戻ると
三村は彼女を強く抱き締め
何度も何度も髪を撫でた
「ありがとう」
三村優真
「どうして?」
三村優真
「どうしてこんなに優しくしてくれるの?」
「カラダの傷も手当てしてくれた」
三村優真
「私、ちゃんと受け止められてる?」
三村優真
「お願いがあるの」
三村優真
井川あすみ
「もうあんな家には帰りたくない」
三村優真
「私、あなたのそばに……」
彼女の手を止めた三村は
何度も熱いキスをして
再び彼女に愛を注ぎ込んだ
三村優真
自分の中にある想いを全て
彼女にぶつけたのだ
恥ずかしそうにしながらも
三村の愛を受け入れる彼女
それはまるで
本当の恋人同士のようだった
ブーーっ
ブーーっ
ここでアラームが作動した
沢田マリカ
私に向かって深々と礼をする三村
礼儀正しいその姿は
とても少女を監禁した犯人とは思えなかった
タイムリミットまで二週間を切った今
焦る気持ちとは別の感情が芽生えていた
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