梨子
(まったく、2学期末の補習を冬休みにやるとか、ありえないんだけど)

梨子
(まぁ、でも明日の数学の補習で終わりだし頑張ろ!)

梨子
あっ、すみません…。前を見てなくて…大丈夫ですか?

相良先生
ああ、大丈夫です。

梨子
…あれ?相良先生?家近いんですか?

相良先生
お前…なんで女子高生がこんな時間に歩いてんだ。

相良先生
たしか…お前の家もこの地区だったっけ。

梨子
なんで知ってるんですか!こわいです…

相良先生
ばーか、俺も一応お前の担任なんだぞ?

相良先生
4月に住所調査用紙、書いたろ。それで分かってた。

梨子
なるほど…先生はいつもこんなに遅いんですか?

相良先生
違うよ、基本的には冬季休業は教員は学校に来ないんだが

相良先生
今日は補習があったんだ。化学の平均点低かったから、補習組が多くてな。

梨子
そうなんですか。お疲れ様です。

梨子
(私も現代文の補習やってたなんて言えないな…)

その時、身振りをしようとした先生の手と話題を変えようとした私の手がぶつかってしまった。
梨子
あっ、ごめんなさい。

相良先生
いや、いい。それよりも…

相良先生
ちょっと手貸してみろ。…やっぱり、すごい冷たい。

そう言って先生は私の手を包み、先生のコートに入れた。暖かかった。
梨子
あの…その…あ、ありがとうございます…

相良先生
しょうがない!お前は今俺から離れられないし

相良先生
家まで送っていくよ、今日だけ特別な?

梨子
はい、ではお願いします!

相良先生
よし、着いた。今日は冷えるから暖かくして寝ろよ?

相良先生
…それと、補習した所ちゃんと復習しとけよ?

梨子
バレてたんですか

相良先生
当たり前だろ、お前帰宅部だし委員会もないし

梨子
…はい。予習もやっておきます…。

相良先生
それともう一つ

相良先生
俺みたいなやつがいるから夜道には気をつけろよ?

相良先生
…高校生に恋する教師とかさ。

梨子
……?はい!それでは、お休みなさい!

相良先生
ああ、また明日な。

こういう事があるなら補習もいいかも、なんて不覚にも思ってしまった。ちなみに明日は化学の補習だ。
それと部屋に帰ってから気づいた。先生も気をつけた方がいいって。
梨子
…教師に恋する生徒がいるから。
