次の日玉壺は何も言わずに壺を二つ並べた。
どちらからも同じ気配。多分人間だろう。
玉壺
どちらかを殺せ
軽い声だった。私は壺を見た。見て止まった。…選べない。
喉が縮んで声が出ない。視線を逸らしたくなるのを必死で堪える。
月
(どうしよう、)
月
(選べない…)
時間だけが過ぎる。玉壺は何も言わない。それが逆に怖かった。
月
え、選べません…
絞り出すように言った。次の瞬間空気が変わった。
玉壺
は?
低い声。
玉壺
今なんと言った?
体がびくっと震える。反抗したい。言い返したい。でも出来ない。
月
選べない、です
沈黙。そして小さくくっと笑った。
玉壺
はは…なるほど
壺の影がゆらりと揺れる。
玉壺
それが一番醜い
玉壺
選ばないという選択はない
玉壺
それはただの逃げだ
一歩距離が詰まる。圧だけで息が苦しい。
玉壺
お前は優しいんじゃない
耳で囁くような声。
玉壺
怖いだけだ
グサリと刺さる。
玉壺
失うのが怖い
玉壺
自分が壊れるのが怖い
玉壺
だから選べない
言い返したいのに言葉が出ない。冷たい声。
次の瞬間私はまた壺の中にいた。
玉壺
罰だ
そう言って両方の壺を割った。私が助けれる前に。
玉壺
選べない者に選択肢など不要
壺の内側に自分の姿が歪んで映る。目を逸らしたくなる。
玉壺
ここで考えろ
玉壺
感情か、恐怖、どちらに支配
されている?
されている?
反抗出来ない。怖い。圧が存在そのものを押し潰してくる。
玉壺
次は答えを持ってこい
その声を残して気配が遠ざかる。壺の中で私は小さく息を吸った。
胸の奥がじわじわと痛くなる。
月
選べないと…生きていけない
そうようやく理解し始めていた。






