カレシの浮気日記

―朝

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ...

目覚ましの音で朝を自覚する

昨日まであんなにうるさかった女の喘ぎ声も無くなっていた

まだあまり回っていない頭をぽりぽりかいてリビングに行った

今日もまた1人でご飯を作って1人で食べる

最近はずっとこの調子だ

いくらご飯をあいつの為に作って待ってもきっと浮気相手と食べてきたんだろ

すっかり体調を崩したのか精神的にもやられたのか味のしないご飯を食べる

朝から一緒に恋人と食べたご飯は味がするのに、

いつも飲んでいる頭痛薬を何箱か手に取りレジに行く

帰る時にチラッと見えたのは浮気相手とゴムを見ていた恋人だった

誰もいない部屋にただいまと声をかけてまた蹲る

怖くなるほど聞きなれた女の喘ぎ声

聞いても聞いても耳を塞ぎたくなるような嫌な声

そんな自分が嫌になってカッターを手首に当て切った

痛みでさえも無くなって行く自傷行為

そんな体になった事を俺は心の中で酷く絶望した

急いで包帯を巻いて長袖のパーカーを着て隠す

そんなことをしていたら頭痛薬の存在などすっかり忘れてしまった

薬を飲んで横になる

何回も浮気しすぎているからなのか何も考えられなくなっていた

思い出は優しかった頃のものばかり

棚の上に置いてあるのは貰ったとものか、フォトフレームにある写真

スマホの画面に映し出されるデートの時に撮ったツーショット

それを思い出す度また悲しくなってしまうのだ

フォトフレームのガラスに一粒一粒雫が落ちる

何故あんなに優しかったのにいつの間にこんな浮気をする人になってしまったんだろう

昨日は俺の誕生日だった

昔は祝ってくれたのに今じゃもう浮気相手に夢中で俺の誕生日なんかとっくに忘れているだろう

冷蔵庫に入っている小さなケーキを見つめる

きっと沢山の浮気相手の誕生日を祝うのに忙しいんだな

1人で虚しく食べるケーキは味がしない

俺はただそのケーキを無我夢中で食べた

食べてる時に玄関乗った開く音がしたからきっと浮気相手とどっか行ったんだな

三日目 昨日は俺の誕生日だったけど、あいつとケーキを食べる事もプレゼントをくれる事もなくなった 今日もまた浮気相手を家に連れてヤってる どれだけ弱っても俺を見てくれた頃のあいつはいないらしい