耳が聞こえなくても

めぐろが居なくなってから、何故か俺はスタッフさんに虐められるようになった。理由なんてよく分からない

俺のせいでと言うが、正直めぐろが俺の元から離れた理由なんて分からない。でももう、どうでもいい

俺が耐えればこいつらは満足する。痛みなんて一瞬だし。我慢出来る

ズルッとズボンとパンツを脱がされる。俺の後ろにはいつの間にか屈強な男がいた。多分、俺が暴れないようにだろう

ニコニコと微笑みながら動画を回している。俺のモノに冷たい刃先が当たる

ジャキンッ

歯の摺れる音と共に痛みが来る。どうしてこんなことになったのか。俺の何が悪いのか。よく分からない

痛みでその場に踞る。動けるわけもない。助けを求めたくても痛くて声が出ない

痛みに悶えていると、遠くから足音が近づいてくる

ドアを勢いよく開けたのは翔太。血溜まりの中で悶えながらも何とか反応をする

身に覚えのない話が翔太の口から出てくる。俺は痛くて何も言えない

違う。そう首を横に振る。でも翔太は俺の話なんて聞いてくれなかった

唯一のメンバーにも愛想をつかされた。俺の中にある、糸がプツンと切れた音がした

遠ざかる翔太を眺める。まだ血は出ているものの、パンツとズボンを履き、血溜まりを無視して屋上へ向かう

今日、俺は死のうと思う。めぐろが居なくなって二年。何とか耐えてきたものの、もう無理だ

もう全てが嫌だ。でも、もういい。ここから飛び降りれば、この苦しい鎖から開放される

叶わない願いをボソッと呟いては飛び降りる

パシッ

飛び降りた瞬間に誰かに手を掴まれる。見上げれば、そこには居ないはずのめぐろが居た

めぐろは俺を屋上へ戻した後、手話で何かを語り掛けてきた

険しい顔をして、俺を見てくる。めぐろのスマホを手に取って、俺は返事をする

そう返すと悲しそうな顔をするめぐろ。御前が2年まえ、好きな人が出来たって、振ったのに

俺は行くのを渋った。行きたくないわけじゃない。助かるのなら今は元彼だろうと話したい。でも、痛いんだ。大切なものが、なくなって

ケラッと笑ってやった。昔のようにあのクシャクシャの笑顔で。でも、めぐろは悲しそうな顔をする

俺の断りも聞かずにめぐろは俺の手を掴んで屋上へから事務所内、事務所内から外へ出てタクシーを呼んでくれた

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