本条綾子
ねぇ、このニュースみた?
土山花梨
今流れてきたけど
本条綾子
美奈子が…
美奈子が駅で死んだというニュースが流れた
財布の入っていた運転免許証で身元を特定できたらしかった
土山花梨
改札じゃなくって電車に乗るまで見届けるべきだった…そうすれば…
本条綾子
花梨のせいじゃないって
本条綾子
そんな気に悩まないで
土山花梨
でも…
本条綾子
それに酔ってホームから落ちたみたいだし
本条綾子
花梨は悪くないよ
昨日まで楽しかった日々がどんよりと暗くなっていく
死が身近に感じられた
本条綾子
ねぇ、行ってみない?
土山花梨
どこに?
本条綾子
あの駅に
土山花梨
嫌だよ
本条綾子
どうして?花梨が転んで落ちたんじゃなくって
もし他殺だったら私は許せない
もし他殺だったら私は許せない
土山花梨
そんなことはあるかな?
本条綾子
わかんない
綾子は霊感の強い子だった。 もしかしたら何か感じるのだろうか
だけど、人が死んだところなんて 当分行きたくない
本条綾子
確かめたいことがあるんだ。でも一人じゃ怖いからついてきてほしいんだけど
土山花梨
ごめん、私はやめておく
本条綾子
そっか、わかった
それから私たちはお葬式に参加し、 美奈子の家に行ってはお線香をあげたり、おばさんと話をしたり…。
暗い日々だけど美奈子の為なら何でもできると思った。
美奈子の母
あの子の酒癖の悪いとこが…バカよね…
とおばさんは泣いていた。
その言葉で私の心はキュッと痛む。
もっとしっかりしてなければ、思わず自分のスカートの裾を握りしめた。
帰り道、綾子は現場を見てくると荒若駅へ向かった。 私はその誘いには断り1人で自宅へ戻った。
だがそれから、綾子の態度は変わっていった。
ライバルがいなくなった嬉しさがあったのか、 美奈子を思い出して泣く私とは違い
お葬式を終えてからは勝ったような表情をしだした。
本条綾子
ずっと泣いていたって仕方がないじゃない?
私には私の道があるんだから
私には私の道があるんだから
土山花梨
そんなこと言ったって
本条綾子
暗い顔したって美奈子は戻ってはこないの
土山花梨
なんでそんなこと言えるの?
本条綾子
本当のことだから
土山花梨
本当のことだって言っても言っちゃ悪いことだってあるでしょう?
本条綾子
私は嘘つくほうが嫌だけどなぁ
土山花梨
私は綾子がわからない!急に態度が変わって
本条綾子
そんなことないよ
本条綾子
ただね、私は気づいちゃったの
私には綾子の目が怖かった
何かを知っているような探るようなその目が怖かった。