柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
そう言うと、中学生くらいの少年は蕾が開いたような笑みを浮かべた。
__私は訳あって、中学生の少年の「避難所」になっている。
少年ーー鳴沢柚月は近所に住んでいる。童顔だが身に纏う空気は中学生のそれじゃなかった。
そんな柚月君が1年前、突然私の家を訪問してきた。
2~3時間でいいから、自分をこの家に置いて欲しいと言うのだ。
私と柚月君は数回話したことがある程度の仲だったので、当然理由を尋ねた。
すると当時 中学一年生だった柚月君は顔色ひとつ変えず「大人のアソビ」とおっしゃったから驚いた。
曰く「再婚した母は時折家でアソブから追い出される」、とのこと。
どうして私の家なのか、と尋ねたら柚月君は、「僕友達いないから」と寂しそうに笑った。
__3回目の訪問で、罵詈雑言で埋め尽くされたノートを見てしまい、学校での柚月君の立場を悟った。
それ以来 私は時々柚月君を家に招き一緒に遊ぶようになった。
そこに「迷惑」とか「鬱陶しい」といった感情はない。
むしろ…
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
柚月
柚月
昔繰り広げた他愛もない会話。
だけどたぶん、今の私は柚月君にあんなこと言われたら動揺する。ドキドキする。
私は6歳も年下の男の子が…………
柚月
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月君は黙々と漫画を読み始めた。その横顔は やはり少しだけ寂しそうで、私は見いってしまう。
そしてすぐに柚月君の変化に気づいた。
山川のぞみ
柚月君は一瞬だけ漫画から顔をあげたけど すぐに目を伏せた。
柚月
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月君を病院に連れて行き、薬を処方させて貰うと一晩私の家で安静にさせた。
ただの風邪だと診断されたし、男子中学生のさすがの回復力で一晩寝たら熱は下がった。
私は学校を休むことを提案したが、これ以上私に迷惑をかけられない、と言って柚月君は学校に行った。
そしてその日の夜、柚月君からラインが来た。
柚月
山川のぞみ
柚月
柚月
山川のぞみ
柚月
柚月
山川のぞみ
柚月
柚月
柚月
柚月
山川のぞみ
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柚月
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
それから、柚月君が私の家に来ることは無くなった。
近所に住んでいるからたまに見かけるけど、もう私に声をかけて来なくなった。
箱買いしたコーラだけが私の家に残った。
柚月君と疎遠になってから1週間後。
夜、インターフォンが鳴った。
柚月君かも、と思い急いでドアを開けると、 柚月君が立っていた。
隣に香水の匂いをこれでもかと振り撒く、厚化粧の女もいた。
鳴沢真由子
女は形の良い唇を歪めて艶っぽい声で続ける。
鳴沢真由子
鳴沢真由子
鳴沢真由子
鳴沢真由子
柚月君はずっと下を向いている。母親はお構い無しに喋り続ける。
謝罪に来たのではないのか。 私は延々何を聞かされているのだろう。
山川のぞみ
鳴沢真由子
山川のぞみ
山川のぞみ
鳴沢真由子
鳴沢真由子
鳴沢真由子
そう言いながら全然困ってなさそうに、話題は新しい旦那さんに移る。 この人が…柚月君のお母さん…
勝手な理由で柚月君を追い出して、柚月君に あんな寂しそうな顔をさせて…… この人が
この人が、いったいどれだけ柚月君のことを気遣ってあげたんだろう。
山川のぞみ
鳴沢真由子
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
鳴沢真由子
母親の顔から笑みが消えた。
鳴沢真由子
鳴沢真由子
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
鳴沢真由子
母親は、怒りで赤く染まった顔で私を睨み付けた。
私が目を逸らさないでいると、母親が舌打ちして顔を背けた。
鳴沢真由子
母親は踵を返すとハイヒールを鳴らしながら大股で帰って行った。
もう柚月君は下を向いていなかった。驚いた顔で私を見ている。
私はその目をしっかりと見返して言った。涙が溢れた。
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月君は涙に濡れた目で私を見ると、あの蕾が開くような笑みを浮かべた。
柚月
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
コメント
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すてきですね
表現からなにから何まで本当に上手です🤗 本当に面白いです
すげぇ!!! ライクじゃない方で好きって………… いつか、言ってみたいです😲