TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

殺戮ホテルの案内人

一覧ページ

「殺戮ホテルの案内人」のメインビジュアル

殺戮ホテルの案内人

1 - 殺戮ホテルの案内人 第1話

♥

5,700

2019年06月24日

シェアするシェアする
報告する

???

ナツキ様

???

おはようございますナツキ様

誰かが私を呼ぶ声がする。

ナツキ

……え?

???

おはようございます

目の前に若い男性が立っている。

スーツを着た細身の体型。

綺麗な髪、鋭い目、

まるで人形のように、ハッとするほどの端正な顔。

ナツキ

……えっと、

ナツキ

ど、どちら様ですか?

ナツキ

(何この人?)

ナツキ

(左の頬にチャックが付いている)

それは皮膚からじかに生えているように見える。

ヨミ

私はコンシェルジュのヨミと申します

ヨミ

どうぞよろしくお願い致します

ナツキ

コンシェル…ジュ?

ヨミ

お客様の身の回りの世話し、

ヨミ

当ホテルをご案内する人間のことです

ヨミ

このホテル『ルナ・エクリプス』のことなら何なりとお申し付けください

私は周囲を見渡す。

確かにそこは、高級ホテルの一室みたいだった。

ナツキ

(私、なんでこんなところに?)

ナツキ

(…ダメ、思い出せない)

ヨミ

ナツキ様、何かご希望はありますか?

ナツキ

希望?

ヨミ

一応、オーソドックスなタイプを揃えてみたのですが…

ヨミ

こちらから出刃包丁、牛刀、小型ナイフ、サーモンナイフ、冷凍包丁となっております

ナツキ

えっと…すいません

ナツキ

これは一体?

ヨミ

あなた様を殺すための道具です

ナツキ

…え?

ナツキ

あの、どういうことですか?

ヨミ

今からあなた様の体を切り刻みますので、

ヨミ

ご希望があればと思い、こうして並べてみたのですが

ナツキ

いや、え…?

ヨミ

ひょっとして、切り刻まれるのは苦手ですか?

ナツキ

苦手…?

ナツキ

いや苦手っていうか、嫌です!

ヨミ

それは失礼しました

男性は体の向きを変えると、

部屋の隅に設置されたクローゼットの扉を開く。

ヨミ

少々お待ちください

ナツキ

(私を殺すための道具って、どういうこと!?)

ナツキ

(良くわかんないけど、今の内に逃げた方が良いよね?)

ナツキ

(入り口の扉からこっそり…)

ヨミ

…ナツキ様

男性の首が凄い勢いで私の方を向いた。

ヨミ

どちらへ?

ナツキ

え?

ナツキ

いや、その…

ヨミ

ちょうど良い

ヨミ

そこでジッとしていただけますか?

男性は相変わらず微笑を浮かべたままだ。

ナツキ

あの…それは?

ヨミ

刺殺は苦手ということなので、

ヨミ

今回はこちらの鎌を使おうかと

ヨミ

普段あまり使うことのない道具ですが、

ナツキ

え、あの!?

ヨミ

使用方法は頭に入っておりますので 

ヨミ

どうぞご安心くださいませ

ナツキ

ちょっと、え!?

ヨミ

ふんっ!

私の頭上数センチを、

巨大な鎌の刃が通過した。

ナツキ

ちょ、ちょっとあの!待ってください!待って!

ヨミ

一発で仕留められず申し訳ありません

ヨミ

次こそは…

ナツキ

(なにこれ!?!)

ナツキ

(と、とにかく逃げなきゃ!)

ヨミ

あ、ナツキ様!

ナツキ

はぁっはぁっ…!

ナツキ

(なに、今の人!?絶対やばいよね?)

ナツキ

(きっとコンシェルジェっていうのも嘘だ…)

ナツキ

(他の従業員の人に教えなきゃ)

ナツキ

(あ…!)

ナツキ

(誰かいる)

そこに立っていたのは、

先ほどのコンシェルジュと同じようにスーツを着た男性。

ナツキ

あのぉ!

オボロ

ん?

ナツキ

さっきそこに変な人がいたんです!

オボロ

変な人?

ナツキ

はい!コンシェルジュって名乗って

ナツキ

大きな鎌を持っていて…え?

彼のノド元には、やはりチャックがあった。

ナツキ

(なにこれ!?)

ナツキ

(最近の流行りとか!?)

ナツキ

(いや、そんなわけないよね?)

オボロ

そっかそっか

オボロ

それは大変だったなぁ?

オボロ

俺はオボロ

オボロ

安心しな。俺はちゃんとしたコンシェルジュだからよぉ

ナツキ

あの…それなんですか?

オボロ

あぁ、これ?

私はオボロさんの右手を指差す。

オボロ

目ん玉だけど

ナツキ

!?

ナツキ

な、なんの?

オボロ

人間のに決まってんだろ

ナツキ

決まっている!?

ナツキ

(そんな常識、知らないんだけど!)

オボロ

てか逃げてきたのか!

オボロ

だったらあれだよな!

オボロ

あんたはもう誰のものでもないってことだよな!?

オボロ

そうだよな!?なぁ!そうだろ!?

ナツキ

え?えっと、確かに誰のものでもないですけど

オボロ

うほぉおおおおおおおおお!

オボロ

ツイてる!これはツイている!

オボロ

あ、待ってろ!

オボロさんはそう言いながら、

ノド元にあるチャックをゆっくりと開け始める。

ナツキ

!?

ナツキ

(なにこれ?舌があって、歯があって…

ナツキ

(チャックの中に…もう一つの口があるの!?)

オボロさんはその中に手を突っ込むと、

小型のナイフを取り出す。

ナツキ

あの…それは…?

オボロ

決まってんだろ

オボロ

お前の体をくり抜くんだよ

ナツキ

はい!?

オボロ

まずは心臓だろぉ?

オボロ

目ん玉は最後が良いよな?

ナツキ

え、え、え、え!?

オボロ

耳は削いでぇ、髪の毛は切り取ってぇ、

オボロ

綺麗なつるつるの球体にしてやるからなぁ

オボロさんのナイフの先が私に向いた。

その刃の鋭さに背筋がゾッとする。

オボロ

ご臨終~

ナイフが私に凄い勢いで向かってくる。

その時、

ヨミ

お待ちください

私の前に飛び出て来たのは、

さっき私を襲ったヨミさんだった。

グサッ

ナツキ

ひっ!

オボロさんのナイフが、ヨミさんの体に刺さる。

オボロ

ヨミぃ?なんだよ、お前の客か

ヨミ

ええ

ヨミさんは特に苦しい様子も見せず答えた。

オボロ

でもあれだよな?

オボロ

こいつは誰のものでもないって言っていたぞぉ?

オボロ

つまり俺のものでもあるよなぁ?

ナツキ

いや、そういう意味で言ったわけじゃ!

ヨミ

違います

ヨミ

ナツキ様は理解していないだけ

ヨミ

彼女の所有権は私にあります

ナツキ

所有権!?

オボロ

…………

オボロ

ちっ

オボロさんは舌打ちをすると、

私たちの前から立ち去った。

ナツキ

(と、とりあえず、助かったの…?)

ナツキ

(あ、ダメだ)

ナツキ

(腰が抜けて立てない…)

ヨミ

怖い思いをさせてしまい申し訳ありません

ヨミさんの手が私の前に差し出される。

ナツキ

(このヨミさんって人)

ナツキ

(刺された場所から血が出ていない…)

恐る恐る、私はその手を握った。

ナツキ

…暖かい

ヨミ

暖かい?

ヨミさんは意味がわからないという風に首をひねった。

ヨミ

ではナツキ様

ヨミ

部屋に戻りましょうか?

ナツキ

え?

ヨミ

先ほどの続きを行いますので

ナツキ

それは嫌です!

ヨミ

そうですか。鎌も苦手でしたが…

ヨミ

では絞殺、毒殺、焼殺、射殺、撲殺はいかがでしょう?

ヨミ

この辺りでしたらすぐにご用意できるのですが

ナツキ

いや違います!

ナツキ

鎌が嫌なのではなく、

ナツキ

死ぬのが嫌なんです

ヨミ

死ぬのが嫌…!?

ナツキ

当たり前じゃないですか!嫌ですよ

ヨミ

それは失礼しました

ヨミさんが困惑した表情になる。

ヨミ

いえ、こんなことは初めてなのもので

ヨミ

なるほど、死ぬのが嫌…

ナツキ

初めて?

ヨミ

ええ

ヨミ

ここは生者と死者を繋ぐホテル

ヨミ

運命に逆らった者だけがここを訪れ、

ヨミ

そして死者へとなっていくのです

殺戮ホテルの案内人

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

5,700

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚