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作業を一通り終えて、 背伸びをする。
外は豪雨。
気がつけば部屋は冷えきっていて 身震いを起こした。
コーヒーでもいれるか…
ピーンポーン
インターホンに映った この姿を見るのは、今月で 何回目だろうか。
お姫様のご来訪だ。
⋆̩☂︎*̣̩
答えなんて1+1より 分かりきっている。
でもびしょ濡れの身体を拭きながら 気まずそうにしている彼に、 話の糸口を作ってやろうと 思ったのだ。
彼は僕の友人、 基歌い手「そらる」だ。
何処か中性的で 「綺麗」という言葉はこいつの 為に作られたようだ。
黒いふわふわの髪、そして赤い唇。
その唇が動くのが見えた。
やっぱりな。
彼はココ最近、何者にも 変え難い相方について悩んでいる。
いや…?
彼からすれば、愛方、か。
喧嘩、しちゃったの。
⋆̩☂︎*̣̩
短く纏めてしまえば、この友人は 相方であるまふまふさんに 恋をしている。
ただの恋ではない。
同性同士であるし、 歌い手ユニットの相方同士。
戸惑いや世間の目。
人よりも何倍も気遣いな彼は 相当煮詰まってしまったようで。
暫くは僕も作業が滞っており、 彼の話を聞けなかったと いうのもあり。
彼はストレスからか、呑気に 笑っている相方さんに 当たってしまった…らしい。
相方なんだから、この恋は 諦めないといけない。
同性なんだから、この気持ちは あっちゃいけない。
彼はそうやって自縛して苦しんで。
でも嫌われるのは嫌で。
せめてもの救いになればと 彼を抱き締めてやると。
自分から甘えられない彼は、 儚げに笑った。
それは無理だよ
だって僕は、あの人ほど…
バイブレーションの音。
予感的中だ。
スマホのロックを解除すれば、 嗚呼やっぱり。
⋆̩☂︎*̣̩
ピーンポーン
王子様のご到着だ。
⋆̩☂︎*̣̩
そうやって頬を膨らませる仕草に いくらの男女が貴方に堕ちて 来たと思ってるんだ。
本当罪作り。
僕らが話し込んでいるのが 気に入らなかったのか、むくれ顔で まふまふさんがそらっさんに 向かって手を差し出した。
そらっさんは一瞬躊躇して、 まふまふさんの横をすり抜ける。
ぺこりと綺麗なお辞儀をして、 まふまふさんがそらっさんの 後を追いかける。
まふまふさんの腕に 掛かっているのは、1本の傘。
そらっさんをわざわざ 迎えに来たのに、傘は1本だけ。
どうやらあの二人は 心配無さそうだ。
大雨の中に傘1本、ねぇ…。
…そらっさん。
その想いはどうか捨てないで。
血迷っても、誰かに お前の事好きになろうかな、 なんて言っちゃいけないよ。
王子様は貴方が何処に行っても、 傘1本で迎えに来てくれるから筈だから。
❦ℯꫛᎴ❧