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第1話 春、隣になった君。
春の教室は、少し苦手だった。
新しいクラス。
新しい席。
知らない名前。
知らない空気。
まだ誰ともちゃんと話していないのにもう笑っている子達が居て。
その声を聞くたび、少しだけ焦る。
M
小学3年生。
まだ''恋''なんてちゃんと理解していなかった頃。
だけど今思えば。全部は、あの春から始まっていた。
数日が経ち
窓の外では桜が揺れている。
風が吹く度に花びらが舞って 綺麗だなと思うのに。 心の中では少し落ち着かなかった
先生が前に立つ
先生
教室が一気にざわつく。
生徒
生徒
笑い声。
机の音。
少しだけ騒がしくなる空気。
Mは静かに移動した。
M
少しだけ緊張する。
怖い人だったらどうしよう。
話しかけづらい人だったら。
1人になったら。
そんな小さな不安を不安を抱えながら席を探した。
ガタガタと机が動く音。
みんなが席を移動する。
Mも自分の席へ向かい、椅子を引こうとして────
止まった。
隣の席にいた男の子と、目が合った。
初めてみる顔。
少し眠そうな顔。
数秒。
沈黙。
なのに。
M
なぜか吹き出してしまった。
本当に意味がわからない。
何も面白くない。
なのに。
隣の男の子も笑っていた。
?男の子
その言い方がなんか面白くて、また笑う。
M
?男の子
M
止まらなかった。
何がそんなに面白いのか、自分でも分からない。
笑いすぎて少し苦しくなるくらい。
初対面なのに。
まだ名前も知らない。
変だった。
でも、
その''変''が、不思議と安心した。
さっきまで怖かった教室が
少しだけ怖くなくなる。
男の子が笑いながら言う。
S
M
S
M
S
また笑う
変な始まりだった。
でも
休み時間や暇な時間があれば、なんとなく話していた。
先生の話。
給食の話。
誰が足速そうとか。
誰がモテそうとか。
本当にくだらないどうでもいい話。
なのに。ずっと笑っていた気がする。
Sが急に言った。
S
M
S
Mは吹き出した
M
M
M
S
S
また笑う。
変だった。
本当に変。
でも
「俺こんな人初めてだわー笑笑」
この言葉が、なぜか嬉しかった。
知らない教室だったのに。
少し怖かった場所だったのに。
Sと居ると、なんとなく安心した。
気を遣わなくていい。
無理して話さなくてもいい。
沈黙が変じゃない。
それが少し不思議だった。
帰りの会
窓の外が少しオレンジ色になる。
ランドセルを背負いながら、ふと思う。
M
その理由は分かっていた。
笑っていたから。
Sと。
帰り道
ランドセルが少し揺れる。
夕方の風が少し冷たい。
なのに、心は少し軽かった。
Mは今日のことを思い出す。
笑っていた顔。
「意味わかんな。笑」
って言った声。
"うちら独特すぎ笑笑''
そんな言葉。
M
少し笑う。
でも。
何となく思った。
明日も、また話したい。
また笑いたい。
理由なんてない。
ただそう思った。
夜
布団に入る。
静かな部屋。
目を閉じる。
なのに。
頭の中には今日の教室が浮かぶ。
S。
変な人。
笑ってばっかりだった人。
ツボ浅いのが同じ。
初めて喋ったのに。
なんか話しやすかった人。
少し眠そうな目。
8の字の少し可愛い眉毛。
笑う時の声。顔。
何でだろう。
少しだけ、思い出してしまう。
明日も笑えるかな。
話せるかな。
そんなふうに次の学校を少し楽しみに思ったのは、いつぶりだったんだろう。
まだ知らなかった。
その人が、これから何年も心に残る人になること。
ただ笑っていた時間ほど、あとから思い出すたび苦しくて優しい記憶になること。
まだ。
何も知らなかった。
────続く
主
主
主
第2話 少しだけ、嬉しかった。
コメント
1件
まこさん、第1話読みました……! 何これ、めっちゃ好きです……(小声) 席替えで隣になったSくんと、理由もなく笑い合っちゃうの、すごくわかります。小学生の頃って、そんなことあるよね。 "俺こんな人初めてだわー"ってSくんのセリフ、心に残りました。私もそういう言葉って弱いんだ……。 まだ"恋"じゃなくて、ただ"楽しい"だけの関係なのに、読み終わる頃にはもう胸がじんわりしてた。 続き、気になります。Sくんとのこの時間が、あとで"苦しくて優しい記憶"になるって伏線、本当にやばいです。 まこさん、素敵な作品をありがとうございます。また読みにきますね🌙