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水曜日
明日夢
丈太郎
遂に来た第一段階、決行の日
いつものように父ちゃんの爆音目覚ましで起きた俺は
洗面所で顔を洗いつつ洗濯機のスイッチを入れた
いつもと変わらない朝
でも俺はどこか落ち着かずにそわそわしていた
丈太郎
明日夢
明日夢
丈太郎
絶対に悟られてはいけない
絶対に怪しまれてはいけない
冷静に
冷静に
丈太郎
明日夢
丈太郎
明日夢
丈太郎
明日夢
父ちゃんの言葉が全然、入ってこない
頭の中は母ちゃんのことでいっぱいで
今日の鍵のことばかりを考えてしまっている
丈太郎
明日夢
父ちゃんが出掛けた後
いつものように食器を洗い洗濯物を干す
でもやっぱりどこか落ち着かなくて
心臓も変にドキドキしていた
おばあちゃん
明日夢
今日じいちゃんが出掛けることは何日も前から確認していた
学校が終わったら速攻で家に戻り
適当に理由をつけてじいちゃんの家に行き鍵を拝借
それを予め調べておいた専門店に持っていって鍵を複製
じいちゃんの作業をずっと見てきたから
タイムマシーンの操作は全く問題ない
接続されたパソコンに日時や時間を入力して
専用のヘルメットをかぶってenterキーを押す
明日夢
未来に戻るために必要なアイテム
リモコンがなければ俺一人では戻れない
今まではずっと
じいちゃんが全面的にバックアップしてくれていた
戻る時もちゃんとあの地下室で待っていてくれて
じいちゃん
じいちゃん
じいちゃんに過去でのことを報告するのも楽しくて
時間が許す限りいっぱい母ちゃんのことを話した
じいちゃんはいつも優しくて
どんな話もちゃんと聞いてくれる
そんなじいちゃんがあんな風に怒るなんて思わなかった
じいちゃん
じいちゃん
わかってる……
それがいけないことだってことはよくわかってるんだ
でもどうしても
俺は諦めることができなかった
明るくて優しい母ちゃんのことを知ってしまったから
俺の知っている眠ったままの母ちゃんじゃなくて
普通に仕事して恋をして
色んな事で落ち込んだり悩んだりしながら
父ちゃんと再会して恋をして
あの酷いトラウマさえも乗り越えて
結婚して妊娠して……
そんな幸せいっぱいの母ちゃんを守りたい
それがどんなにいけないことでも
俺はどんな罰でも受けるから
明日夢
笠井
今日も朝から笠井がいる
一昨日から珍しく遅刻ゼロ
尾上
三村
笠井
尾上
三村
笠井
明日夢
明日夢
明日夢
尾上
尾上
笠井
最新型の爆音目覚まし
誕プレにそれをチョイスするとは
明日夢
笠井
三村
いつもと変わらない日常
いつもと違うのは
俺の心がそわそわして落ち着かないこと……
絶対に悟られてはいけない
絶対に怪しまれてはいけない
冷静に
冷静に
そして待ちに待った放課後
明日夢
周りの生徒たちが部活の準備をする中
俺は一人、帰り支度をして学校を出て行く
六時間目までびっしりの時間割りを少しだけ恨めしく思った
早くしなければじいちゃんが帰ってきてしまう
そうなる前に早く帰らなければ……
俺が部活に入っていないことをよく思わない生徒もいて
その件に関して陰口を叩くやつもいた
みなみさんのように面と向かって言ってくる生徒もいたが
俺が地元組で柳駅を利用していないことを話すと
殆どの人が理解を示してしてくれて
陰口や文句を言う生徒は殆どいなくなった
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
明日夢
鞄の中に手を突っ込んで鍵を探した
取り出したのは青色のホテルキーホルダー
ホテルでよく見かける棒状のキーホルダーと同じ形状で
注文する際に好きな文字を入れることができる
そのオリジナルのキーホルダーにはHOTELの文字と
SPECIAL ANNIVERSARY
特別な記念日と言う意味の英文
そして俺の誕生日である0719と言う数字が刻まれている
このキーホルダーは母ちゃんとお揃いで
ホテルキーのホルダーにずっと憧れていた母ちゃんが
父ちゃんと再会した頃にネットショップで見つけた
母ちゃんはピンク色のホテルキーホルダーに
二人の再会記念日である1025と言う数字を入れた
そんな母ちゃんのキーホルダーは今も
居間の写真立ての横に置かれている
明日夢
鞄を置いて直ぐに着替えた
おばあちゃんのお陰で家に入る口実ができた
ここからは時間との勝負だ
一刻も早く草むしりを終わらせて
地下室の鍵を……