TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
じいちゃんのタイムマシーン

じいちゃんのタイムマシーン

「じいちゃんのタイムマシーン」のメインビジュアル

105

第百五話:特殊すぎた鍵

♥

10

2022年08月17日

シェアするシェアする
報告する

地下室の鍵を複製するため

俺はじいちゃんが用事で家を空ける水曜日を狙っていた

回りに怪しまれないよう普段通りに学校へ行き

その日の放課後に実行に移そうと考えていた

そのためにはじいちゃんの家に入る口実が必要で

迷いながらも帰宅すると

草むしりをするおばあちゃんの姿が目に飛び込んできた

明日夢

俺も手伝う!

急いで家に戻って着替え

おばあちゃんのいる隣家の庭へ

おばあちゃん

助かるわ~

明日夢

いつもくれるおかずのお礼……

明日夢

ちゃんとできてなかったから

おばあちゃん

そんな大層なもの作ってないわよ~

明日夢

そんなことないよ

明日夢

おばあちゃんの料理は最高だもん!

おばあちゃん

ありがとう

おばあちゃん

そうだ!

おばあちゃん

草むしりのお礼に何か作るわ

明日夢

本当に!?

おばあちゃん

何が食べたい?

明日夢

お芋の煮っころがしが食べたい!

おばあちゃん

わかったわ

おばあちゃん

じゃあ草むしりが終わったら作るわね

明日夢

やった!

はやる気持ちを抑えながら

黙々と延びた雑草を引き抜いていく

絶対に悟られてはいけない

絶対に怪しまれてはいけない

冷静に

冷静に

その後、必死に作業を続けた結果

三十分で全ての作業を終えることができた

おばあちゃん

明日夢ちゃんがいてくれて助かったわ

おばあちゃん

私一人じゃこんなに早くできなかったもの

明日夢

よかったね

明日夢

暗くなる前に終わって

おばあちゃん

本当はもっと早くにやりたかったんだけど

おばあちゃん

今日は忙しくてなかなかお庭のことできなかったのよ

おばあちゃん

明日の予報は雨だったから今日中にって思ったの

時刻は17:20

ここから専門店までは自転車を使えば十五分で辿り着ける

おばあちゃん

疲れたでしょう?

明日夢

平気だよ

おばあちゃん

お茶にしましょう

明日夢

うん……

全く怪しまれずに中に入ることができた

あとは鍵を拝借するだけ

鍵の場所もしっかりとリサーチ済み

明日夢

(確かここに……)

この世界に二つしかない特注の地下室の鍵

その一つをじいちゃんは常に持ち歩いていて

出かける時も必ず鞄に入れて持って行っていた

でもスペアとなるもう一つの鍵は持ち歩かず

居間の棚の引き出しに締まっていると言っていた

重要な地下室の鍵を何故こんな場所に……

そんな疑問をずっと抱き続けていたのだが

引き出しを開けてその理由が分かった

明日夢

(嘘だろ……)

俺は衝撃で固まってしまった

中には数えきれない程どの鍵が入っていて

どれが本物なのか全く判別ができなかった

万が一泥棒に入られても

この大量の鍵の中から本物を探し当てられる可能性は低い

木を隠すなら森の中

鍵を隠すなら大量の鍵の中……

明日夢

(さすがじいちゃん……)

などと感心している場合ではない

いったいどうすればいいんだ……

おばあちゃん

驚いたでしょ?

突然、後ろから声をかけられて固まってしまった

明日夢

ゆ、床に鍵が落ちてたから……

明日夢

仕舞おうと思って……

慌てて誤魔化そうとしたけど

おばあちゃん

さっき掃除した時に落としたのね

その必要はなかったみたいだ

明日夢

これ……

明日夢

じいちゃんが考えたの?

おばあちゃん

元々は裕太がいたずらしないようにって

おばあちゃん

関係ない鍵をいくつも用意して

明日夢

凄い数だね……

明日夢

これじゃあどれが本物なのかわからないや

おばあちゃん

見分け方があるらしいけど

おばあちゃん

私にはさっぱりわからないわ

こんなにたくさんの鍵の中から本物を探す

じいちゃんが帰ってくるまでにできるかどうか……

でもどれが本物なのかわからなければ

計画が実行できなくなってしまう

明日夢

これ見てもいい?

おばあちゃん

えぇ

おばあちゃん

構わないけど

おばあちゃん

後でちゃんと戻しておいてね

どうせ見分けが着くはずがない

だからおばあちゃんは見ることを許可してくれたのか

でも今がチャンスだ

絶対に悟られてはいけない

絶対に怪しまれてはいけない

冷静に

冷静に

それから三十分

お茶を飲み終えたおばあちゃんは台所にいて

俺は一人

ずっと鍵を探し続けていた

早くしなければじいちゃんが戻ってきてしまう

焦る気持ちをグッと堪え

鍵の中に手を突っ込んだ

明日夢

(あ……)

そしてやっと

一つだけ違うものを見つけた

引き出しの中にあるのはどれも同じ

ディンプルシリンダーと呼ばれる種類の鍵で

ピッキングしにくいように複雑な作りになっている

でもよく見ると……

持ち手の部分に他の鍵にはない突起のようなものがあった

一見しただけではわからない

注意深く観察しなければきっと気づかなかった

明日夢

(押せる……)

恐る恐るその突起部分を押してみると

鍵の先から複雑な形の模様が出現

鍵穴にこの鍵を指し突起部分を押すと

この模様が飛び出てガッチリと填まる仕組みのようだ

ただのディンプルシリンダー錠だと思っていたのに

こんな複雑な構造になっているとは思わなかった

どう考えてもこの鍵を複製することはできない

おばあちゃん

煮っころがしできたわよ

明日夢

ありがとう

おばあちゃん

鍵はもういいの?

明日夢

ずーっと見てたら疲れちゃった

明日夢

どれも同じで見分けなんて着かないんだもん

おばあちゃん

そうよね

おばあちゃん

私もたまに見るけどわからなくて

もう諦めるしかないのかもしれない

母ちゃんを救うことはできないのかもしれない

明日夢

そうだ……

明日夢

おばあちゃんにお願いがあるんだけど

しばらくして俺は家に戻った

まだ誰もいない家の中で一人

明日夢

おばあちゃんありがとう……

俺は諦めかけた計画を実行すると心に決めた

じいちゃんのタイムマシーン

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

10

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚