地下室の鍵を複製するため
俺はじいちゃんが用事で家を空ける水曜日を狙っていた
回りに怪しまれないよう普段通りに学校へ行き
その日の放課後に実行に移そうと考えていた
そのためにはじいちゃんの家に入る口実が必要で
迷いながらも帰宅すると
草むしりをするおばあちゃんの姿が目に飛び込んできた
明日夢
急いで家に戻って着替え
おばあちゃんのいる隣家の庭へ
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
はやる気持ちを抑えながら
黙々と延びた雑草を引き抜いていく
絶対に悟られてはいけない
絶対に怪しまれてはいけない
冷静に
冷静に
その後、必死に作業を続けた結果
三十分で全ての作業を終えることができた
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
おばあちゃん
時刻は17:20
ここから専門店までは自転車を使えば十五分で辿り着ける
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
明日夢
全く怪しまれずに中に入ることができた
あとは鍵を拝借するだけ
鍵の場所もしっかりとリサーチ済み
明日夢
この世界に二つしかない特注の地下室の鍵
その一つをじいちゃんは常に持ち歩いていて
出かける時も必ず鞄に入れて持って行っていた
でもスペアとなるもう一つの鍵は持ち歩かず
居間の棚の引き出しに締まっていると言っていた
重要な地下室の鍵を何故こんな場所に……
そんな疑問をずっと抱き続けていたのだが
引き出しを開けてその理由が分かった
明日夢
俺は衝撃で固まってしまった
中には数えきれない程どの鍵が入っていて
どれが本物なのか全く判別ができなかった
万が一泥棒に入られても
この大量の鍵の中から本物を探し当てられる可能性は低い
木を隠すなら森の中
鍵を隠すなら大量の鍵の中……
明日夢
などと感心している場合ではない
いったいどうすればいいんだ……
おばあちゃん
突然、後ろから声をかけられて固まってしまった
明日夢
明日夢
慌てて誤魔化そうとしたけど
おばあちゃん
その必要はなかったみたいだ
明日夢
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
こんなにたくさんの鍵の中から本物を探す
じいちゃんが帰ってくるまでにできるかどうか……
でもどれが本物なのかわからなければ
計画が実行できなくなってしまう
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
おばあちゃん
どうせ見分けが着くはずがない
だからおばあちゃんは見ることを許可してくれたのか
でも今がチャンスだ
絶対に悟られてはいけない
絶対に怪しまれてはいけない
冷静に
冷静に
それから三十分
お茶を飲み終えたおばあちゃんは台所にいて
俺は一人
ずっと鍵を探し続けていた
早くしなければじいちゃんが戻ってきてしまう
焦る気持ちをグッと堪え
鍵の中に手を突っ込んだ
明日夢
そしてやっと
一つだけ違うものを見つけた
引き出しの中にあるのはどれも同じ
ディンプルシリンダーと呼ばれる種類の鍵で
ピッキングしにくいように複雑な作りになっている
でもよく見ると……
持ち手の部分に他の鍵にはない突起のようなものがあった
一見しただけではわからない
注意深く観察しなければきっと気づかなかった
明日夢
恐る恐るその突起部分を押してみると
鍵の先から複雑な形の模様が出現
鍵穴にこの鍵を指し突起部分を押すと
この模様が飛び出てガッチリと填まる仕組みのようだ
ただのディンプルシリンダー錠だと思っていたのに
こんな複雑な構造になっているとは思わなかった
どう考えてもこの鍵を複製することはできない
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
明日夢
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
もう諦めるしかないのかもしれない
母ちゃんを救うことはできないのかもしれない
明日夢
明日夢
しばらくして俺は家に戻った
まだ誰もいない家の中で一人
明日夢
俺は諦めかけた計画を実行すると心に決めた