神代
あっ、お家ここなんですね。
冬弥
はい。
神代
本当にお邪魔してもいいんですか?
冬弥
もちろんです。あ、散らかってますけど…!
神代
ふふ、大丈夫ですよ。
神代
わぁ…
冬弥
あ、すみません!!やっぱり譜面が散らかって…
神代
すごい!これ全部青柳さんが?
冬弥
え、ええ。まぁ…まだ途中ですけど、
神代
わぁ…!!すごいですね!
神代
こんなにいっぱい…あ、これは ピアノの楽譜ですか?
冬弥
え、ええ。
神代
わぁ〜すごいなぁ…!
冬弥
か…完成したら、また…聞いて欲しいです。
神代
もちろんです!待ってますね!
神代
あっ、台所借りますね。出来るまでしばらく待ってて下さい!
冬弥
は、はい!じゃあ、ちょっと片付けときます。
神代
ふふ、お願いします。
冬弥
(こんな…俺が作った曲を褒めてくれるのは、やっぱりあの人だけだ。)
冬弥
(そういえば…何故、神代さんはピアノを辞めたんだろう…)
冬弥
(気になる…けど、聞いていいのだろうか…)
冬弥
(いつか…あの人が、俺の作った曲を奏でてくれたら…)
神代
青柳さん!出来ましたけど、お皿って勝手に使っちゃっていいですか?
冬弥
は、はい!好きに使って頂いて大丈夫です!
神代
分かりました!ちょっと待ってて下さいね。
冬弥
あ、俺運びます!
神代
ふふ、じゃあお願いします。
冬弥
…すごく、美味しいです!
神代
ふふ、良かったです。
冬弥
本当に…わざわざありがとうございます。
神代
いえいえ。どうせ帰っても1人だし、暇ですし。
冬弥
俺も…曲作るか課題するしか、やる事はありませんから…
神代
僕より忙しいじゃないですかw
神代
僕は大学も行けてないし…バイト尽くしなんですけどね。
冬弥
あっ、そうなんですね。
冬弥
(聞くなら今…聞いていいだろうか?)
冬弥
あの…神代さんって、どうしてピアノ辞めたんですか?
神代
!
冬弥
あ、えっと、気になってて…
神代
…ふふ、大した理由じゃないですよ。
神代
けどまぁ…そうですね、僕も昔は音大を目指してました。
冬弥
!
神代
ピアノが、音楽が好きだったんです。コンクールにも出させてもらって…何度か賞ももらいましたし。
神代
小学五年生の頃に"全日本学生音楽コンクール"に出て入賞した事もあったかな。
冬弥
え!?
冬弥
そんな……それ、相当な実力じゃないですか!
冬弥
(確か司先輩も入賞したっていうコンクールだったよな…)
神代
ふふ、そうですね。指導してくれていた先生にも良く褒められていました。
神代
「この子は天才だ」「将来絶対に有名なピアニストになる」「音楽に愛されてる」…僕なんかには勿体ない言葉ばかりです。
冬弥
そこまで言われて…勿体ないとは、何故?
神代
…ある、コンクールの前日に指を怪我したんです。
冬弥
!
神代
それでコンクールにも出られなくなって…あんなに練習したのに、って悔しくて。
神代
それからかな。父の会社が倒産して、ピアノ教室に通えなくなったんです。
神代
それからは自然とピアノから離れて…両親には音大に行きたいなんて到底言えず、今はこうしてコンビニでバイトをしてます。
冬弥
あ……えっと、
冬弥
(神代さん……悲しそうだ、)
神代
あ…でも、ピアノ教室を辞める事になった時、父の会社の倒産が理由って言うのが嫌で、飽きたから辞めるって言ったんですよ。
神代
そしたら…同じ教室に通ってた同い年の子にすっごく怒られちゃって。そのまま口も聞かずに引っ越しちゃったな。
神代
今思うと子供だったなぁ…
冬弥
そんな事があったんですね…えっと、何も知らずにズケズケとすみませんでした…!
神代
ふふ、気にしないで下さい。
神代
こちらこそ、楽しくない話をしてしまってすみません。
冬弥
いえいえ!そんな…
神代
…青柳さん、頑張って下さいね。本当に、応援してますから。
冬弥
…はい!えっと、ありがとうございます…!
神代
……家にもピアノ、置いてあるんですね。
冬弥
はい。防音室なので…えっと、弾き…ますか?
神代
えぇ?ふふ、いやいや、無理ですよ。
神代
もう10年以上も弾いてないし…弾き方なんて忘れました。
冬弥
教え…ますよ
神代
え?
冬弥
あ、いや!辞めたとはいえ、そんな凄い方に教えるなんて上からですけど…
神代
いやいや、むしろ光栄ですよ!
神代
そうですね…なら、少しだけお願いしてもいいですか?
冬弥
!
冬弥
は、はい!もちろんです!
🎶ポロン
神代
わっ、ふふ、久しぶりに鍵盤叩いたな。
冬弥
えっと…何弾きますか?
神代
うーん…そうですね…
神代
あっ、さっき見た青柳さんが書いてた曲、練習したいです。
冬弥
え?!
冬弥
お、俺の…ですか!?いや、でも…
神代
出来てるところまででいいので!練習させて下さい!
冬弥
え…じ、じゃあ…
冬弥
これ、譜面です。
神代
わぁ!ふふ、ありがとうございます!
神代
えーっと、最初が…
🎶♪♪🎶.•
神代
で…えっと、次…
冬弥
あ、でも結構弾けてるじゃないですか。初見の譜面なのに…
神代
ふふ、何となく…ですけど、
神代
あっ、ここの音のとり方ってどんな感じですか?
冬弥
え?あぁ、そこは…
♪♪♪🎶♩
冬弥
こう、ですね。
神代
わぁ…難易度高いなぁ…
神代
えーっと、こうして…こう…
神代
うーん?
冬弥
えっと、指使いはこうした方が…
鍵盤に触れようとした手は少しズレ、神代さんの手に触れてしまった。
冬弥
あっ!す、すみませ…
神代
!//
神代
だ、大丈夫です!気にしないで下さい!
冬弥
え?は、はい…!
冬弥
(今の…は、気の所為だよな?)
冬弥
指はこっちにこう使った方が弾きやすいと思います。
神代
えーっと、こう…あ、確かに!
神代
ふふ、すごいですね。そんな事も考えながら作曲してるんですか?
冬弥
ええ、まぁ…弾けない曲は作れないので、
冬弥
神代さん…やっぱりピアニストの手ですね。すごい指が長い…
神代
ふふ、そうなんですよ。青柳さんもスラッとしてて綺麗な手ですよね。
冬弥
えっ、あ、ありがとうございます…!
神代
ふふっ……あ、もう21時になりますね。
神代
青柳さん、明日大学ですよね?僕もバイトあるんで、そろそろ帰りますね。
冬弥
は、はい!えっと、今日はありがとうございました!
神代
ふふ、こちらこそ。
神代
あ、そうだ。また…この曲、練習しに来てもいいですか?
冬弥
も…もちろんです!いつでも!
神代
ふふ、ありがとうございます。
神代
今日は遅くまでお邪魔しました。また連絡しますね。
冬弥
はい!気を付けて…あ、送りますよ。
神代
いえいえ、すぐそこなので大丈夫です。ふふ、ありがとうございます。
冬弥
そうですか…?えっと、気を付けて帰って下さいね。
神代
はい。ありがとうございました。
司
ボー
司
……明日も大学、、はぁ
司
「愛」か……
司
ビクッ
司
だ、誰だ……?
司
あ、彰人から?!
司
「司さん明後日空いてます?一緒に遊びに行きましょう」…??
司
えっ、えっと、ん?
司
そうか、振られた…訳じゃ無いもんな。
司
「空いてる」っと…
司
む、これも少し冷たいか…?
司
むむ……
司
期待……してもいいんだろうか。