渉
恵美ちゃんさ

渉
あの、迷惑…だったかな?

渉
ほら急に誘っちゃったし

渉は足元を見るばかりで
恵実の方に顔を向けられないでいる
恵実
迷惑って…

渉
大丈夫!気ぃ使わないで!

渉
俺、今日一緒に過ごせるだけで十分だから!!

渉
次もまた会いたいなぁとか、そんなん全然ないし!!

渉
それにほら俺もさ…

恵実
渉!!

渉
え!!はいっ!!

恵実
迷惑ってなに?

渉
(やばい怒ってる?どうしよう気使わせて怒らせて、最悪だ…)

恵実
ふふ

渉
?

恵実
あははっ!笑

恵実
そんな子犬みたいな顔してー!笑

恵実はいつも屈託なく笑う
その笑顔に様々な疑心は
意味を持たなくなる
恵実
今、うわ怒らせた!って思ったでしょ?笑

渉
…うん

恵実
渉くん分かりやすいよね(笑)

恵実
そっかそっか、それでランチの時から変だったのか

渉
…え?

恵実
いやいやー、さすがに気付くよ?
だってめっちゃ烏龍茶飲んでたじゃん?まだ飲むかね!?ってくらい

渉
あぁ…(笑)

恵実
それ?聞きたかったこと

渉
…うん

恵実
迷惑じゃないし、私も会いたかったよ

恵実
そんな事気にしてたの?

渉
そんな事って!

渉
俺割とまじで悩んでて

恵実
てか、なんでそんな事思うの?

渉
ほら、誘った時に

渉
変な間があったじゃん?

恵実
…

渉
だから誘われるの嫌だったかなって、気を使わせちゃったかなって…

恵実
うん

渉
そうなの?!

恵実
あ、違うって!

渉
間があったのもやっぱり!

恵実
間があったのはそういうんじゃなくてさ…

渉
ほら!今!認めた!

渉
間があったって認めた!!

渉
あっぶね!あの太陽みたいな笑顔に騙されるとこだったぜ!!ちくしょ…

恵実
とーうっ!!

恵美は豪快にラリアットを決めた
尻もちついた渉は
顔を上げ目を丸くしている
恵実
とりあえず話きけ

渉
…はい

恵実
まず迷惑とか思ってない

渉
はい

恵実
間があったのは事実

渉
…はい

恵実
でもそれは私が勝手に自惚れてただけ

渉
?

恵実
一緒にどこか行こうって言われて嬉しかった、でもちょっとヘコんだ

渉
…

恵実
付き合ってほしいって言って欲しかったから

渉
…!!

渉
恵実ちゃ…

恵実
まぁでも?また会いたいとか全然思ってないみたいだし?

恵実
あー、失恋したなぁー!

渉
や!

渉
会いたい!会いたいよ毎日!ずっと会いたいッス!!

恵実
んー?

渉
やった!え!めっちゃ嬉しい!
あぁー!よかった!ぁあ!

恵実
ちょ、うるさい(笑)

渉
ごめん、でもうわぁ、
待って超うれしい…!!

恵実
嬉しいの?

渉
うん!そりゃあ嬉しいよ!恵実ちゃんと両思いだよ?飛べそう!!

恵実
え?

渉
え?

恵実
両思い?

恵実
リョウオモイ?

渉
…違うの?!

恵実
ふふ

恵実
行こっか、暑いし

渉
え、待ってよ!え!嘘でしょ?!

渉
ねぇ!ちょっ、えぇ?!

恵実に駆け寄る渉の顔は
眉毛が驚くほどにハの字になっている
渉
恵実ちゃん!

渉
俺、本当に恵実ちゃんの事好きで、
だから、そんな、嫌だよ!だって!

恵実
いや分かってる、道で叫ばないでよ、乙女か!

渉
分かってるならなん…

恵実
恋人でしょ?

渉
へ

恵実
両思い越えて恋人でしょ

渉
…っ恵実ちゃん!!

恵実
だから乙女か!笑

渉
だってぇ(笑)

渉
恵実ちゃん男前すぎて〜、えへへ

渉
っ!!

恵実
今度はなに?笑

渉
…トイレ

渉
なんか、色んな感情が一気にぶわってきて安心したからかな、急に…!

恵実
あんなに飲むからだよ!笑

恵実
ほら早く店いこ!

渉
ちょ、恵実ちゃん待って!

渉
や、優しく連れてって、あー!走らないで!押さないで!お願いー!!

楽しげなふたりの後ろ姿に
蝉の鳴き声が重なって
より一層にぎやかになった