TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
猫と私は不甲斐ない

猫と私は不甲斐ない

「猫と私は不甲斐ない」のメインビジュアル

1

猫と私は不甲斐ない

♥

33

2020年09月20日

シェアするシェアする
報告する

メイ

あやかー?

メイ

寝てる?

メイ

電車間に合わないよ?

メイ

みんな待ってる

メイ

不在着信

不在着信

あやか

あー!ごめん!

あやか

今起きた!急ぐ!

やばい!やばい!

彩花

昨日の夜更かしのせいだぁ 泣

彩花

ん?

ネコ

ニャァ

彩花

ネコ?

彩花

君か?昨晩、ずっと鳴いてたのは

ネコ

にゃー

彩花

昨日、夜中に缶詰め片手に探してたんだよ、君を

ネコ

にゃー

彩花

そのせいで今日は寝坊だよ

彩花

君とは違って人間には決まった時間っていうのがあるんだ

彩花

今日は友達の好きなバンドのライブでね

彩花

まぁ、私もあまり興味ないんだけどね・・

彩花

・・・

彩花

って、なに猫に文句言ってんだろ

彩花

急がないと・・

ネコ

ちょっとまて

彩花

もぅ、なに?

彩花

・・・

彩花

え?

彩花

今誰かと喋った?

ネコ

私だ

彩花

私?

ネコ

猫だ

彩花

はい!?

彩花

え?

彩花

君、喋るの?

ネコ

大体、猫は喋る

彩花

・・・??

ネコ

大丈夫だ君がおかしくなったわけじゃない

ネコ

人間の言葉を普段から聞いてる猫なら、大体喋る。

ただほとんど人間の言葉を喋る意味がないだけだ。

彩花

・・・

彩花

なにそれ・・

ネコ

君に聞きたい

彩花

私よりも喋んないでよぉ、

ネコ

聞きたいことがあるのだが

彩花

ていうかなんでそんな口調・・

彩花

声も普通に低いし、

彩花

怖い・・

ネコ

・・・

ネコ

君が猫にどんなイメージを抱いていたのかは私の知るところではない

彩花

・・・

ネコ

そう、うずくまるな、そんなにショックだったのか

彩花

そういうわけじゃない

彩花

ショックはショックだけど・・

ネコ

そうか

彩花

悩んでるの、私、今、急いでて・・

彩花

でも、猫が喋る事なんて、もうないかもしれないし・・

ネコ

まぁ、そうだろうな

彩花

・・・

ネコ

そのことなんだが、君はなぜそんなに急ごうとするんだ?

彩花

それは、ライブの時間が決まってるから、

ネコ

でも、君は興味がないのだろう?
そのライブとやらに

彩花

・・・

ネコ

まぁ君が複雑な気持ちを抱く心情はよくわからんが、猫にも猫の事情があってね

ネコ

二三質問がしたかったのだが、こんな道端で話すわけにはいかないんだ

ネコ

私の質問に答えるなら、そこの路地裏についてきたまえ

ネコ

難しければ、ライブとやらに行ってもらってもかまわん

彩花

あ!ちょっと!

メイ

ねぇ?今どのへん?

彩花

こんなとこに公園なんてあったんだ

ネコ

よかったのか?

彩花

え?

彩花

よくはないけれど、

彩花

ついてきちゃった、

ネコ

どうするんだ?

彩花

どうしよう・・

ネコ

人間というのは本当に不思議だ

ネコ

私は変わった猫でね、人間の行動が不思議でどうしても気になってしまうんだ

ネコ

君を悩まして申し訳ないが

私の話は短くはない

彩花

・・・だろうね

彩花

よし!決めた今日は君の話しに付き合う!

ネコ

わかった

ネコ

じゃあ早速疑問なのだが

ネコ

なぜ君は悩んだのだ?

彩花

悩んだ?

ネコ

興味のない用事に行くかどうかで、何故悩んだんだ?

彩花

いや、だからそれは、約束があって・・

ネコ

だが、君の選択肢は二つ

いうならば
興味のある方と興味のない方だろう?

悩む必要はないと思うが

彩花

・・うーん
人間には付き合いってものが欠かせなくて・・

ネコ

付き合い?

彩花

そう、友達とか恋人とか、そういう付き合いがあって、その中には守らないといけない約束があって・・

ネコ

そうか

彩花

そうしてると、興味のないことにも、付き合わないといけない時がどうしてもあると言いますか・・

彩花

・・・

彩花

なんか、説教されてるみたい!

ネコ

別に私はなにも責めていない

ネコ

責めてるとすれば君自身だろう

彩花

・・・

ネコ

私から言わせれば、その付き合いとやらは必要かどうかでしかない

ネコ

恐らく、君の"付き合い"についてはやめたとこで死にはしないだろう?

彩花

死には・・しないね

ネコ

交尾もしないだろう

彩花

・・・

ネコ

私たちにとって付き合いとは、生きていくのに必要かどうかでしかない

彩花

だろうね・・

彩花

私はその方がシンプルでいいなと思うよ・・

彩花

あ!

彩花

そうは言ってるけどさ

彩花

こうやって私に質問するような"付き合い"も生きてくには必要ないんじゃないの?

ネコ

・・・

ネコ

良いことを聞いてくれた

ネコ

そこについては私もよくわからんのだ

ネコ

つい最近まで、人間のことに興味を持ったことなどなかったのに

ネコ

最近いろんなことが分からんのだ

ネコ

この公園は私の好きな場所なんだ

ネコ

いつから好きかわからないが、これも、生きてくのに必要なことなのか?

彩花

トキメキだね

ネコ

トキメキ?

彩花

あるんだよ、人間には、いや、猫にも、生きるとかに関係なく、ドキドキとする瞬間が

ネコ

ドキドキというのは血流が早まり、心拍数が上がった時の話か?

彩花

君、本当にネコ・・?

ネコ

君も私も意味もないのに、そのトキメキとやらに連れられて、付き合いを持っているのだな

彩花

意味ないことなんて・・

ネコ

これは私の感覚だ、どうしてもそう思わざる得ないのだ。

彩花

・・・

ネコ

でも、

ネコ

意味がなくても、君は立ち止まってくれた

ネコ

この関係自体は悪い気はしない

彩花

・・・

彩花

私もだよ

あやか

ごめん、色々あって間に合わなさそう、先に行っといて!

メイ

はい?

メイ

多分後から入場できないよ・・

メイ

色々ってなに?

あやか

また話すかも!本当にごめんね🙇‍♀️

ネコ

こっちだ

彩花

ちょっと待ってよ・・

彩花

神社?

ネコ

そうだな

彩花

なんでこんなとこに・・

彩花

あ・・ネコ?

ネコ

ここはたくさんネコが集まっている
人間が餌でも撒いてるんだろう。

彩花

この子たちは喋らないのかな

彩花

あぁ、そっか、喋る意味がないんだっけ・・

ネコ

こっちだ

彩花

あっちょっと待って!

彩花

なんかボロボロだね・・

ネコ

ここだ

彩花

え?

ネコ

私はここで目覚めたのだ

ネコ

それから前の記憶がない

彩花

・・・・

彩花

・・猫にも記憶喪失ってあるんだ

彩花

聞きたいことってそれのこと?

ネコ

あぁ

彩花

私それについてはあまり答えられることないよ?

ネコ

そうか・・

ネコ

記憶を取り戻す方法とか・・

彩花

・・・・うーん

彩花

思い出したいの?

ネコ

なんというか

ネコ

思い出さないといけない気がするんだ

彩花

頭とかも打ってなさそうだし・・

ネコ

ニ"ャ!

彩花

なに!?

ネコ

・・・

ネコ

いや、触られそうになると、体がやけ反応するみたいだ・・

彩花

君、触らせてくれない系の猫だったんだね・・

彩花

あれ?君、もしかして・・

ネコ

どうした?

彩花

もしかしたら、君の記憶の手掛かりがあるかもしれない。

ネコ

ん?

彩花

ちょっと、さっきの公園で待ってて!

ネコ

え?

ネコ

手掛かり・・

ネコ

なにが分かったのだろう

彩花

あ、いたいた

ネコ

長かったな

彩花

本当にあった!

ネコ

手掛かりか?

彩花

これ君だよね?

ネコ

これは・・

ネコ

迷い猫?

彩花

そう!迷い猫の貼り紙

彩花

君の首、よく見たら逆だっててさ
それって首輪の後だよなって思って

彩花

ペットショップの掲示板見たら貼り紙があったよ

彩花

なかなかの名推理だね

彩花

君の名前はクロ

彩花

公園で拾った猫だって

彩花

公園ってここのことじゃないの?

ネコ

これは・・・

彩花

これで全部解決だよ、電話するからちょっと待ってね

ネコ

・・・

ネコ

ちょっと待ってくれ

彩花

・・・

彩花

あれ、つながらないや

彩花

君の・・いやクロだったね、クロの家に直接いくしかなさそうだね

ネコ

・・・

ネコ

・・そういえば君の名前はなんだったかな

彩花

・・?

彩花

あやかだけど

ネコ

そうか・・

ネコ

あやか、ここまで、ありがとう
もう後は自分でなんとかするよ

彩花

え?

彩花

なにそれ、せっかくこんなに関わったんだから、最後まで付き合わせてよー

ネコ

・・・

彩花

いいでしょ?

彩花

もう私、今日、なんも用事なくなっちゃったしさ

ネコ

・・あぁ

彩花

よし、そうと決まれば、クロを飼い主さんのところに届けよう

ネコ

・・・

彩花

・・・

彩花

あれ、この住所って

彩花

私の隣の家じゃん

ネコ

そうなのか

彩花

誰もいないのかな

ピンポーン

彩花

・・・

ネコ

・・・

彩花

誰も出ないね

ネコ

・・あぁ、そうみたいだな

ネコ

いつかは帰ってくるだろう
私は、ここで待っておくよ、君は帰りな

彩花

ねぇ、さっきからなんで、そんなに焦ってるの?

ネコ

なんだかザワザワするんだ

彩花

ザワザワ?ドキドキじゃなくて?

ネコ

ザワザワだ

ネコ

悪い予感がする

彩花

・・?

男の子

お姉ちゃんだれ?

彩花

!!

女性

あの・・

女性

うちに何か用ですか?

彩花

え・・

彩花

あ!この貼り紙を見まして!

男の子

クロの・・?

女性

・・それは

女性

先、家に入っといて

男の子

え、、うん

女性

その貼り紙はどこで・・

彩花

え・・?

彩花

隣町のペットショップの掲示板です

女性

すいません、はがし忘れてたみたいで・・

彩花

え?それは、どういう・・

彩花

あ!クロ!

女性

え?

女性

・・・

彩花

はぁはぁ・・

彩花

ちょっと!なんで逃げるのさ!

クロ

・・・

クロ

あやか・・君に謝らないといけない

彩花

謝る・・?

クロ

私の意味のない茶番に付き合わせてしまった

彩花

茶番って・・さっきからどういう・・

クロ

私は・・

クロ

・・・

クロ

・・すでに死んでいるんだ

彩花

・・はい?

クロ

全部、思い出した

クロ

いや、わざと思い出さないようにしてただけだ

彩花

死んでるって、そんな・・

彩花

クロは、いまここに・・

クロ

君にしか見えてない

クロ

私の飼い主も様子がおかしかったろう

クロ

ネコが誰だって喋れるなんてのは嘘だ

クロ

そんなに頭は良くない

クロ

ただ、家を飛び出して、車に轢かれた
それだけの話だ

彩花

でも・・

彩花

じゃあ、ここにいるクロは・・

クロ

なんなのだろうな

彩花

・・・

クロ

・・・

ネコ

そう、浮かない顔をするな

クロ

私は思いのほか満足している

彩花

そんなわけ・・

クロ

一つ残念な事があるとすればネズミだな

彩花

・・?

彩花

ねずみ

クロ

ねずみのおもちゃだ、私と良く遊んだ、私は彼を気に入ってるのだ。

クロ

飼い主はジェリーと名付けていた

彩花

なんか聞き覚えのある名前・・・

彩花

じゃ・・じゃあそのことも伝えなきゃ!

クロ

言っただろう、君とこうやって付き合いを持てたことが、悪い気はしないと

クロ

今もそれは、変わらない

彩花

付き合い・・

クロ

それで充分だ

彩花

・・・

彩花

・・クロ!

彩花

体が・・

クロ

どうやら、消えていくようだな

彩花

今だけだよ、飼い主さんに気持ちを伝えよう私が代わりに伝えるから!

クロ

やめた方がいい

クロ

人間が意味のないことをするのはよく分かったが

クロ

本当に意味のないことをしてどうする

クロ

君が変人扱いされて終わるだけだ

クロ

それは誰もときめかないだろう

彩花

・・・

ネコ

君は第二の飼い主だ

ネコ

飼い主には、ちゃんと感謝を伝えたい

彩花

・・・

クロ

ありがとう

彩花

・・・

彩花

こちらこそ・・

彩花

・・ありがとう

にゃぁ・・にゃぁ

彩花

・・・

にゃあ

彩花

・・ねこ?

彩花

外から?

にゃぁぁ・・にゃぁ

彩花

すごく寂しそうな声・・

彩花

明日、早いんだけどなぁ

にゃぁ

彩花

・・・

彩花

缶詰め残ってたっけな・・

彩花

あ!

クロ

クロ

なんだ

彩花

やっぱ、昨日の鳴き声はクロだったんだ

クロ

・・・?

彩花

よし!行くよ!

クロ

行くよってどこに

彩花

ほらっ!

クロ

って!なにをする!

クロ

離せ!

クロ

なぜ触れる!

クロ

キシャーーー!

彩花

ははは、やっぱ猫だ

クロ

・・どうやら、私は最後まで君を理解することはできないらしい

彩花

理解できるもんですか

彩花

人間同士ですら理解なんて出来ないのに

クロ

そうなのか、それは知らなかった

ピンポーン

男の子

彩花

こんにちは

男の子

お母さん!さっきのお姉ちゃんだよー!

女性

・・・

彩花

こんにちは

女性

なんなんですかあなたは、だからさっきの貼り紙は・・

彩花

知ってます

彩花

もう亡くなられたんですよね・・

女性

それを知ってるならなぜ・・

彩花

・・・

彩花

信じてもらえないかもしれないんですけど

彩花

クロの幽霊が私の目の前に現れたんです

女性

・・・

女性

はぁ・・

彩花

神社の裏に墓を作られたんですよね

女性

男の子

クロと会ったの?

女性

わざわざそんなことまで調べて・・

女性

あなた、中村さんの娘さんよね

男の子

クロはなんて言ってるの?

女性

やめなさい!

彩花

クロは・・

女性

やめなさいって言ってるじゃない

バチン!!

彩花

クロはありがとうって言ってます・・

女性

・・・

女性

もう、やめてください

男の子

ママ?クロなの?

女性

違うわ

女性

クロはもういないの

クロ

・・・

彩花

信じてもらえなくてもいいんです

彩花

嫌なことを思い出させてすいません。

彩花

でもどうしても伝えたくて・・

女性

・・・

女性

とにかく、帰りなさい

彩花

はい・・

彩花

あ、あとクロは

彩花

ねずみは・・

彩花

ジェリーは捨てないでほしい、と

女性

・・・

女性

そんなこと、言われなくても・・

バタン

クロ

・・・

クロ

行っちゃったな

彩花

うん

クロ

つくづく君は不思議だな

クロ

妙に清々しい顔をしている

彩花

・・・・

彩花

クロが嬉しそうだから

クロ

そうか・・

クロ

そうかもな・・

彩花

結局、消えないんだね

クロ

みたいだな・・

クロ

どうやら、私が望んでいるうちは消えないらしい

彩花

なんだ、焦って損しちゃった

クロ

・・・・

クロ

色々と考えたんだがな、少しずつ分かってきたぞ

彩花

なにが?

クロ

君たち人間の習性だよ

クロ

私が見た限りのことだが

クロ

君たちにはすごく余裕があるんだ

彩花

余裕?

クロ

私たち猫は、生き残ること、死なないこと、これだけを考えている

彩花

うん

クロ

でも人間はそうじゃないだろう

クロ

お洒落をして喜んだり、見知らぬ猫を助けたり

クロ

一見、意味のないことに、喜んだり、時に悲しんだりする。

クロ

それは猫と違って余裕があるからだ

彩花

意味がないのかな

クロ

いいや、それは猫から見たらという話だ

クロ

人間は、あまりに心を動かされる要素が多すぎるんだ、その分喜びも悲しみも強い

クロ

そうやって心を動かされているうちに、本当にしたい事や、何が幸せなのか、分からなくなってしまう

彩花

何がしたいのか・・

彩花

何が幸せなのか・・

クロ

君にも心当たりがあるだろう

彩花

・・・・

クロ

だけど、少なくも私はそんな君を通して、人間の素晴らしさを知った

クロ

いいじゃないか、余裕があること

彩花

そうかぁ

彩花

私は猫の生き方の方が憧れるけどなぁ

彩花

なんかわかんないけど

彩花

堂々としてて

クロ

そうだな、猫はいいぞ。

クロ

いいとこ取りすればいい

クロ

人間のように余裕を持って
だけれど猫のように堂々と

クロ

君には、そんなふうに生きてほしいと思う

彩花

・・・

彩花

無理かも・・?

クロ

・・・

クロ

それぐらい、ハッキリと物が言えるなら大丈夫だ

彩花

そうかな?

彩花

いま、褒めてくれた?

クロ

あやか

彩花

え、なに、急に!

クロ

ありがとう

彩花

・・・

彩花

あぁ、なんか私がさっきやったこと

彩花

いま、すごい後悔してたんだけど

クロ

・・・・

彩花

今の言葉ですごいスッキリしたかも

彩花

こちらこそ

彩花

ありがとう、クロ

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

1

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚