山川 のぞみ
山崎 朋美
朋ちゃんの言葉に私も頷いた。 本当に一瞬だった。
体育祭や文化祭などの主な学校行事を終えると、急に2倍速になったんじゃないかと思うほど時間は早く過ぎた。
私の周りでこれと言った変化はなく……圭佑君との進展もなく………季節だけ移ろいでいく。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
学校の帰り、駅のホームで偶然出会い、帰りを共にしてる のぞみさんが意味あり気に笑った。
……楽しいイベント…。 もうすぐ冬休みになるこの時期に思い浮かぶ「楽しいイベント」は…
山崎 朋美
山川 のぞみ
………そしてここだけの話なんですけどね
山川 のぞみ
ほら柚月君たち受験勉強で疲れてるだろうから息抜きにね
山川 のぞみ
山崎 朋美
山崎 朋美
山川 のぞみ
山崎 朋美
ですので今回は私の代わりに……
山崎 朋美
柴本 桃花
いきなりその名前が出て来たので、電車の中にも関わらず大きめの声が出た。 のぞみさんが親指と人差し指でマルを作る。
山川 のぞみ
柴本 桃花
山崎 朋美
山崎 朋美
山川 のぞみ
それじゃあ…
山川 のぞみ
___もうすぐ私の降りる駅に着く。私は急いで、そして赤くなった顔を隠すように頷いた。
柴本 桃花
山川 のぞみ
でもパーティーだし、かなりの量だから…
山川 のぞみ
圭佑君には私から連絡しとくね☆
柴本 桃花
山崎 朋美
柴本 桃花
降りる駅に着いたので私に発言権は回って来なかった。 …いや回って来ても何も言えないけど
桃花が降りた後、朋美は興奮した様子でのぞみに向き直った。
山崎 朋美
桃ちゃんと溝口君は…クリスマスイブに…!!
山川 のぞみ
のぞみは笑みを絶やさぬまま親指を立てた。
山川 のぞみ
クリスマスイブのショッピングセンターはかなり人が多い。
明日のパーティーの食材の他に、プレゼント交換用のグッズも買うことになってるので(私と圭佑君以外は買ったらしい)半日は かかるだろう。
溝口 圭佑
柴本 桃花
赤と黒のチェック柄のマフラーを外す圭佑君をチラチラと盗み見る。
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
柴本 桃花
………私が言ってるのは今のこの状況のことなんだけど…
口には出さないでおいた。 _____と言うか出せなかった。
人混みの熱気と暖房と あとその他の理由で
マフラーだけに留まらずコートも脱ぎ捨てたいほど体が熱い。
食材は一番最後にして先に何を買うか定まってないプレゼント交換用のグッズを買おう、と言うことになった。
現在時刻は10時過ぎで、レストラン街が一番混む時間帯に昼食を食べるのは避けたいと、この買い物は1時間くらいで済ませたいなーと思っていたけど、
溝口 圭佑
柴本 桃花
ショッピングセンターの2階を半周したけど「これだ!」と思う物は見つけられなかった。
もう何軒目か分からない雑貨屋さんに入ると、入り口近くに1人用のソファーが置かれていた。
溝口 圭佑
柴本 桃花
溝口 圭佑
展示用らしくソファーは座ってもいいことになっている。 浅くソファーに腰掛けた圭佑君が感心したように頷いた。
私も触ってみようかとソファーに一歩近づき ……爪先が引っかかった。
幸い前方にあるのは柔らかいソファーなので大惨事にはならなかったけど
そのソファーには圭佑君が座っていた。
___ソファーに両手と片膝をついた私。__の真正面に圭佑君の顔があった。
確かに沈み混むような柔らかさだなぁ、と感じたのは一瞬だった。 私は慌ててソファーから離れた。と言うか飛び退いた。
柴本 桃花
溝口 圭佑
____その後20分かかった。
プレゼント選びじゃなくて バクバクする心臓を宥めるのに。
結局プレゼントを買い終えた時は12時を回っていた。
レストラン街は大混雑しているだろうことは想像に難くないので、とりあえずフードコートに立ち寄ってみる。
フードコート内もかなり賑わっていた。
溝口 圭佑
圭佑君が上座の端の方を指さした。 確かに席は2人分空いてる。
小走りでその席に向かったけど、いざその席を前にすると私たちの足は止まってしまった。
その席は2人用のテーブルを2つくっつけて4人座れる状態になっており、そのうちの1席を背の高い男性が使用していた。
男性は眼光鋭く辺りに視線を飛ばしている。 クリスマスイブのショッピングを楽しんでる様子には見えない。
柴本 桃花
溝口 圭佑
すると私たちの会話が耳に入ったらしく男性が私たちの方を向いた。
一瞬身を固くしたけど、男性は一転して相好を崩した。
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
「君たちが行っちゃったら俺泣くかもしれない」と男性に拝み倒されたので、席に着いて話を聞くことにした。 男性は中学校の教師を務めてると言う。
溝口 圭佑
柴本 桃花
不意に何かを発見した男性教師の目に鋭い光が走った。
どうやら探している生徒が見つかったらしい。 男性教師は獲物を狩る鷹のような目をして歩いて行った。
数十秒後 私たちの席の横を、先ほどの男性教師と派手な格好の男の子が言い合いしながら通り過ぎた。
そんなんだから彼女出来ねぇんだよ
そして君も彼女いないでしょーー!
溝口 圭佑
柴本 桃花
「……なぁあの席の今注文取りに行った人」 「どこ」 「あそこ。一番端っ子の席」
「ああ あそこな。あそこがどうしたん」 「女の人の向かいに座ってた人さ…あ、今注文取りに行ったんだけど
溝口圭佑だ」 「誰?」
「テニスの、全国大会4連覇した人。今年は準優勝だったけど すっげーテニス上手いんだよ
蒼陽高校ってあるじゃん。偏差値バケモンの高校。あそこに一般で入ったんだって」 「スポ推じゃなくて?ヤバ。文武両道かよ」
「姉ちゃんが大ファンなんだけどさー。やっぱそんだけスゲーと彼女くらいいるよな」 「あの女の人?彼女なん?」 「知らん」 「なんだよお前
でもそんな人と知り合いって、あの女の人もスゲーよな」 「それなー。俺だったら超自慢するわ。帰ったら姉ちゃんに絶対自慢するわ」
___圭佑君が注文した食べ物を取りに行っている間。 近くの席からそんな会話が聞こえて来た。
下を向いた。 頬が熱くなるのを感じた。
圭佑君はテレビの取材も来る有名人だ。 あんな風に囁かれ羨望の眼差しを浴びる有名人だ。
そんな人を下の名前で呼び、一緒に買い物をして一緒の席で食事を摂ることが出来てる。
その事実に誇らしく思うし嬉しく思う。 あの時気持ちをぶつけて良かったと思う。
でも
下の名前で呼ぶのも一緒に買い物をするのもご飯を食べるのも 今は「友だち」としての行いだ。
私はそれ以上の関係になりたいんだ。
このペンギンの箸置きかわいい…
箸置きだったら男女関係なく使えるからプレゼント交換には ぴったりですね
そうだよね……あ、これ置物としても使えるんだ
そうみたいですね。 2つを、こうやって並べたら…
抱きしめあってる…かわいい…
………………
……………
……俺これにしようかな
え?
だってカップルが2組もいるし
……辛くないの?
圭佑君は……まだ好きなんでしょう…?
…恥ずかしい話なんですけど ……………そうです
もし……その人とその人の彼氏さんにこれが当たったら…当たらなくてもこれを気に入って2人で買いに行こうってなったら…
辛いです
でも
………諦め、つくかなって
幼稚な考えですよね。笑ってくれていいですよ
笑わない
私もこれ、買うから
私と圭佑君で1個ずつ買うことにしよう
………
___なんで、って思ってるよね
……はい
1個ずつにしたら、「その人たち」に2個のペンギンが当たる確率は下がるでしょ
……抱きしめ合う置物にもなることは、言われないと分からない、し…
…言いたいことは分かりました
俺が辛い思いをしないようにってことですよね。 ___そのことなら俺は全然
違う。 それもあるけど…それだけじゃない
…なんですか
……聞いたら、きっと私の方が幼稚だってなるよ
…………わ、私と圭佑君で1個ずつ買うことで い、いつかこのペンギンたちみたいになるかなって…いう
……願掛け……………みたいなもの…
溝口 圭佑
柴本 桃花
柴本 桃花
柴本 桃花
それとソファーの時も…
溝口 圭佑
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
柴本 桃花
溝口 圭佑
柴本 桃花
溝口 圭佑
今「テニスの王●様」やってるんですよ
柴本 桃花
「先輩!ガチャでリョータくん当てたって本当ですか。一発で当てたって本当ですか!」
「すごい偶然ですね。俺のが当たるなんて」
圭佑君が興奮している様子の孝太君を綺麗に無視して話しかけて来た。
「ね、狙ったわけじゃないよ…?」
「先輩も知ってると思うんですけど俺の最推しはリョータくんでs
「知ってますよ。プレゼント交換ってそう言う物じゃないですか」
「先輩!分かりやすく無視しないでください」
クリスマスパーティー当日。 プレゼント交換でなんと私は圭佑君が買った箸置きが当たった。
「俺は全財産つぎ込んでも出なかったのに…さすが先輩ですね。さすがです。すごく さすがです」
「俺からのクリスマスプレゼントと言うことになりますね」
「あ………う、うん…」
「リョータくんリョータくんリョータくんリョータくんリョータくんリョータくん」
「うるっせーなお前はさっきから」
クリスマスプレゼント…
嬉しい……すごく嬉しいけど、やっぱりちょっとだけ胸が痛い。
まだ圭佑君はあの人が好きだ。
きっと私はまだ片割れだ。 この箸置きのように。
何もしなかったら時間は残酷なほど早く流れる。 でも何をすればいいんだろう。あの時以上の勇気が出せるだろうか。
___私は頑張らないといけない。そう決めた。
あの願掛けが現実になるように。 今はまだ片割れだけど
いつか…
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コメント
4件
一ヶ月ほど遅れてごめんなさい…! てっきり4月ぐらいからかなぁと勘違いしていました。すみません💦 久しぶりすぎて見つけた瞬間叫びそうになりました… また孝太くんを見れて幸せ…笑 これからも応援してます✨✨
まずは謝ります。約3ヶ月、お待たせして申し訳ありません🙇🙇 第4章「ハロウィン」編と第5章の間を埋めるお話として「四→五」と言う形で数話お届け致します。もう次のお話も大体出来上がってるので出来次第投稿します✏!めちゃくちゃお待たせしたからね😳 久しぶりのbitterの方々でした!読んでくださりありがとうございました❗