TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

お題に挑戦シリーズ

一覧ページ

「お題に挑戦シリーズ」のメインビジュアル

お題に挑戦シリーズ

61 - その頭痛は記憶を呼び起こす

♥

80

2021年06月21日

シェアするシェアする
報告する

まだ夏に入る少し前の季節

梅雨時の少し蒸し暑いある日の朝

和樹は突然の痛みに目が覚める

和樹

……ッ

和樹

頭がいってぇ…

和樹

なんだって急に頭痛が?

和樹

しかも起きてる時じゃなくて寝てる時に

和樹

こんなこと初めてだぞ

和樹

とりあえず原因がわからないから調べてみるか

和樹

まず可能性として熱がある

和樹

熱があると頭痛も起きるからな

和樹

体温を測るか

ベッドからゆっくり起き上がり体温計をしまっている戸棚に行き体温計を取る

電源をつけて脇に挟んで少し待つ

ピピッ と計測し終えた音が部屋に鳴り響き体温計を取り数値を見る

36.6度とそこには表記されていた

人によるかもしれないが和樹の平熱は丁度この数値36.6なのだ

和樹

平熱か…

和樹

じゃあ熱とかではない

和樹

あとの可能性は…

和樹

時期的に低気圧のせいか?

和樹

低気圧頭痛の症状を少し確認してみるか

それから少し低気圧による頭痛について調べてみるも和樹の症状に当たるものは見当たらない

和樹

なんだよじゃあこの頭痛…

和樹

とりあえず頭痛薬を飲んで様子を見てみるか

その後頭痛薬を飲みまたベッドにと潜り瞳を閉じる

が、しかしものの数時間で目が覚めてしまった

起きた原因はもちろんあの頭痛

和樹

薬に即効性はないにしても…

和樹

効いてる感じはないか…

和樹

それじゃあこの頭痛なんだよ

原因不明の頭痛に少し苛立ちを覚えている時玄関からインターホンの音が鳴る

和樹

一体誰だ?

今日誰かが家に訪れる予定は無い

だからこそ和樹は少し不安を感じていた

玄関につきドアスコープから外を見る

するとそこには見知らぬ女子高生が立っていた

きっと友人の家と間違えてインターホンを鳴らしたに違いない

そう考えて玄関を開けてそれを伝えようとした時

女子高生から驚きの一言がとび出た

女子高生

【泉 和樹】さんのご自宅で間違いないですか?

確かにその名前は自分の名前だ

だがしかしそうだとしても自分はこの女子高生と面識が一切ない

それが自分の中の恐怖心を煽る

ここでいいえ違いますと答えたところで恐らく結果は変わらない

彼女は自分を探している

そして現に自分の元にたどり着いている

ここまで調べあげられていればしらを切る気にはなれない

和樹

あ、あぁ…そうだが?

女子高生

大変厚かましいとは思いますがご自宅にあがらせてもらってもよろしいですか?

和樹

ま、待ってくれ!

和樹

俺の家に上がるにしてもその理由を知りたい

和樹

第1俺と君は面識が無いはずだ

女子高生

確かにそうですね

女子高生

とは言ってもここで詳しくは話せません

女子高生

私自身についてもその目的についても

和樹

そんな怪しいヤツを家には上がらせたくはない

和樹

目的が何か知らないが話せないなら…

女子高生

あなたのその原因不明の頭痛治せるかもしれませんよ?

和樹

!?

女子高生

ではこうしましょうか

女子高生

私の目的の詳細は伏せさせてもらいますが

女子高生

あなたの頭痛は治してみせます

女子高生

悪くない取り引きですよね?

和樹

頭痛なんて病院いけば…

女子高生

行ったところで時間とお金の無駄です

女子高生

現に和樹さんは頭痛薬を飲んだんですよね?

女子高生

それで効力が見られなければ行くだけ無駄です

和樹

………

女子高生

あなたからすれば怪しい人なのは順々承知です

女子高生

ですが信じて欲しい

女子高生

決してあなたを騙すようなことはしません

和樹

和樹

……分かった

和樹

部屋に上がってくれ

女子高生

ありがとうございます

和樹

それで?

和樹

具体的に俺のこの頭痛をどうやって治すんだ?

女子高生

昨日のことを思い出して欲しいんです

和樹

昨日を?

女子高生

なるべく鮮明に

和樹

んなもん簡単に……

和樹

和樹

あれ?

女子高生

思い出せませんか?

彼女に言われて初めて気がついた

自分は昨日の記憶を何も覚えていない

酒でも飲んでたのかと言われてもそれは違うと断言出来る

今俺の家に酒はなくテーブルの上にはテレビとエアコンのリモコン

そして先程薬を飲むのに使った水が入ったコップ

それらしかないのだから

和樹

なんで思い出せない…

女子高生

和樹さんの頭痛を解消するには

女子高生

昨日を思い出すことです

和樹

昨日を……思いだす

女子高生

物事を思い出すには何かきっかけが必要です

女子高生

これは私の予想でしかないのですか

女子高生

そのキッカケはこの部屋にあるはずですよ

和樹

この部屋に?

女子高生

そうですこの部屋にあります

女子高生

なんでもいいです

女子高生

自分が昨日どんなことしてたのかを想像しながら

女子高生

部屋を歩き回り気になるものを手に取ってください

その言葉に少し怪しさを感じたが頭痛が治るならばと思いその邪念を消し飛ばす

女子高生

私は邪魔にならないようにこちらの椅子に座ってますので

それから俺は自分の部屋の中を探索する

昨日自分に何があったのかを知るために

和樹

いちばん何かがありそうなのはこの部屋だ

和樹

テーブルはさっき見た通りだ

和樹

他の場所で気になるところは…

和樹

ベッドか?

和樹

最初頭痛がしたのはここで寝てた時だ

和樹

ならこの辺にきっかけなるものが……

自分のシーツをめくるとヒラリと何かが舞落ちた

和樹

これは……写真?

自然豊かな公園をバックに写真の中心には仲の良さげな2人の人物が写っている

和樹

俺ともう1人は……女?

和樹

和樹

ッ!?

和樹

あ、頭が痛てぇ……

和樹

和樹

はぁ…はぁ……

和樹

そうだ俺には確かに彼女がいた

和樹

だけどどうしてだ?

和樹

なぜそんな大事なことを俺は忘れて…

和樹

まだ謎が残ってる

和樹

この部屋を探していけば……

その後モニターとPCの置いてあるデスクに向かいその周辺も見てみる

マウスにキーボード…一般的な周辺機器だ

その近くにはまだ中身の入ったマグカップが置いてある

中からほのかにコーヒーの苦味のある香りがした

このコーヒーを入れてからそれほど時間は経っていないようだった

その後ふと思い立ちパソコンを起動してモニターを見てみる

昨日おそらくここに居たとすれば

なにか自分がやっていたに違いない

そう判断したからだ

パソコンが起動してモニターに自分のディスクトップが映る

その瞬間自分に身に覚えのない謎のファイルがあることに気がついた

ファイルに名前はなく中身を見て見ないとなんのファイルかは分からなかった

恐る恐るそのファイルをクリックする

中にはメモ書きのようなものがひとつあるだけだった

そのメモ書きにはたった一言

【お前の女もらったから】

俺の彼女は何者かに奪われた?

自分で打ち出した答えに焦りと恐怖を感じ少し震える

そのメモ書きをくれた差出人を特定するのは簡単だった

そして特定した瞬間また昨日の記憶が蘇る

和樹

和樹

ッ!?

和樹

ま、また……か

和樹

和樹

はぁ……

和樹

そうだ昨日これを昼頃に見たんだ

和樹

そしてそれに激怒した俺はこいつを呼び出して……

和樹

それから……

和樹

……ダメだあと少しが思い出せない

和樹

この1ピースで全てが思い出せそうなのに

和樹

あと俺が思い当たるのは…

和樹

別の部屋か…

和樹

この部屋以外だとトイレかバスルームの2個しかない

和樹

トイレよりもバスルームの方が何かありそうだし

和樹

先にそっちに行くか

女子高生

(和樹さんはこの真実を知って立ってられるのかしら)

バスルーム

和樹

来てみたけれど思い出すのに必要なきっかけなんてこの辺にあんのか?

和樹

洗面台にも特にそれらしいものはなくて

和樹

洗濯機も特になし

和樹

浴槽も蓋がしてあって……

和樹

おかしい…

和樹

なんで浴槽に蓋がしてあるんだ?

和樹

いつもの俺なら栓を抜いて浴槽を洗っているはず

和樹

だから蓋なんてされてないのに

和樹

なんで今日に限ってしてあるんだ?

和樹

この中に俺の求める答えがあるのか?

少し脅えながらも浴槽にかけられた蓋を開ける

すると和樹の眼に恐ろしい光景が映る

頭部から血を流して息絶えてる自分自身が今目の前にいるのだ

和樹

ど、どういうことだよ…

和樹

な、なんで俺がこんなところに……

女子高生

見つけましたか…

和樹

お、おい!

和樹

これは一体なんなんだよ!?

和樹

お前の仕組んだイタズラか!?

和樹

だとしたらこんな悪趣味なイタズラは今すぐ…

女子高生

それはあなたの胸に聞いてください

女子高生

それを見た今あなたは昨日の真実を全て知ってるはずなんですから

和樹

………

和樹

そうだよ……な

和樹

取り乱して……済まないな

和樹

俺思い出したよ…

和樹

昨日あのメモを見て差出人を呼び出して

和樹

口論したんだ

和樹

それが酷くなっていき口だけでなく手も出した

和樹

それからさらにエスカレートしていき遂には

和樹

取っ組み合いになりそのまま俺は押し負けて

女子高生

全て思い出してもらいありがとうございます

和樹

俺はもう…

和樹

この世のものじゃなかったのか

女子高生

自分が死んだという事実を最後の最後まで認めなかったが故に

女子高生

霊体となりここに取り残されたんです

女子高生

しかし生き物の定めとして死者の魂は現世には留められません

女子高生

それを知らせるためにありもしない頭痛が起きたのです

女子高生

幻頭痛とでもいいますかね

女子高生

その現象が起きたのです

女子高生

だから体温を測っても薬を飲んでも調べても原因は不明だったんですね

和樹

何から何までスッキリした

和樹

この世に悔いがない訳では無いが

和樹

俺のいるべき場所はここじゃなくなったみたいだしな

和樹

名残惜しいがここを出ることにするよ

女子高生

そうしてください

女子高生

せめてあちらでは優雅な生活を

和樹

送れたらいいな

そういい男はゆっくりと消えていった

男が消えた後ドアが勢いよく開く

刑事

【菜々美】くん無事か!?

刑事

君がこの部屋に入った途端扉が開かなくなってな

女子高生

えぇ大丈夫ですよ

女子高生

それは恐らく”別の空間”にいたからですかね?

刑事

な、なんだいその別の空間とやらは

女子高生

刑事さんには分からなくて大丈夫ですよ

刑事

それよりも被害者の和樹さんは!?

女子高生

遺体は浴槽にあるそうです

女子高生

和樹さん本人はもうここには居ませんよ

刑事

そ、そうか

刑事

君に頼んで正解だったな

刑事

霊界探偵菜々美さんに

女子高生

そんなたいそれたもんじゃないよ

女子高生

ただ他の人より”見える”だけだし

女子高生

それよりも検視官さんを呼んできたらどうですか?

刑事

そ、それもそうだな!

刑事

それでは少し席を外す

刑事

菜々美くんにはほんとに感謝してるぞ

女子高生

いえいえ

刑事は少し忙しそうに部屋を後にする

菜々美も部屋を出ようとした時くるっと後ろを振り向き何者かに話しかける

女子高生

これでよかったんでしょ?

女性

女性

ほんとにありがとうございます

女子高生

もう誰にも邪魔されないよ

女子高生

彼は先に逝ってるから

女子高生

あとはあなたが逝くだけ

女子高生

彼もしかすると待っててくれてるかもね?

女性

どうですかね?

女性

でも待っていようがいまいが必ず私はあちらの世界で彼を見つけます

女性

ようやくの幸せを掴めそうだから

女子高生

えぇお幸せにね

女性

いつかあなたにもそんな人が現れますよ

女子高生

だといいもんね

会釈してその女性もゆっくりと消える

最期を看取った菜々美は満足気な顔をしてその部屋を後にした

お題に挑戦シリーズ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

80

コメント

9

ユーザー

初コメ&フォロー失礼します。 テラー通信から来ました。 気になって読んでみたところ、とても良かったので、フォローさせていただきました。 これからも頑張ってください。

ユーザー
ユーザー

ステキ。 ミステリーサスペンス。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚