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放課後の校舎裏。 夕焼けが差し込む静かなその場所には、 ほかの誰の姿もなかった。
哲汰
哲汰が少し照れくさそうに言う
咲は無言で頷いた。 心臓が、妙にうるさいくらいに鳴っている。
哲汰
咲は黙って聞いていた。 風が吹いて、髪が揺れる。 哲汰は一度深く息を吸ってから、言葉を続けた。
哲汰
その言葉に、咲の指先がぴくりと動いた。
哲汰
咲は少し目をそらした。 いつものように茶化そうと思った。 でも、口が開かなかった。
哲汰
真正面から言われたその一言に、 胸がギュッと締め付けられる。
咲はゆっくりと哲汰の方を見た。 目の奥に、嘘がないのが分かった。 ふざけた言葉も、都合のいい期待も、 一つもなかった。
咲
哲汰
今までの自分に向けられた言葉より はるかに嬉しかった。
しばらく沈黙が流れたあと、 咲は小さく、でも確かに頷いた。
咲
その瞬間、哲汰の顔がぱっと明るくなった。 まるで少年みたいに、嬉しそうに笑って、 でも目にはほんの少し涙が滲んでいるようにも 見えた。
哲汰
咲もまた、笑った。 こんな風に、自分の名前を呼ばれて嬉しいと 思ったのは、初めてだった。