喫茶店の軒下にある、オープンテラス席に、珍しい組み合わせの二人が、座っていた。
佐古大和
二人は先日の飲み会の時に連絡先を交換していた。 そして、昨日の夜、相談したいことがあると言って、佐古が小峠を呼び出したのだった。
小峠華太
佐古大和
佐古大和
小峠華太
小峠の返答はもっともである。力量の差を考えれば、到底、無理な話である。そして、実力行使が使えない以上、守若に頼んで言って貰う方が、どう考えても遥かに、ハードルは低い。
佐古大和
小峠華太
佐古大和
佐古にやや押し切れる感じで、小峠は佐古にレクチャーする事となった。
佐古大和
小峠華太
小峠は引き留めようとしたが、既に佐古の背中は遠退いていた。
小峠華太
リビングを覗くと、守若が興味なそうにしながらもテレビを見ていた。因みに、こういう日は、佐古にとって安息日。要は、守若が気乗りしないので、襲われる心配のない日なのである。
何時もなら触らぬ神に祟りなしを貫くが、今日は違う!何故ならば、守若の兄貴を驚かすという、大事なミッションが、俺に課せられているから!
佐古大和
そして、佐古は小峠から聞いた方法を実践すべく、鏡の前で最終確認を終え、いざ、乗り出したのだった。
守若冬史郎
佐古大和
よっしゃ!第一段階の彼シャツで相手の目の前を横切り、相手の視線を此方に向ける作戦は成功。
守若冬史郎
それだけ言うと、また守若の兄貴の視線は、テレビに向き直る。
佐古大和
守若冬史郎
今日は乗り気ではない為、会話もどこかお飾り気味。でも、そっちの方が、此方にとっては好都合。
よし!これより、第二段階へ移行する。
ソファに膝をつき、じりじりと守若の兄貴へと、にじりよっていく。所謂、女豹のポーズで。ここで肝心なのは、ボタンを開けすぎない事。見えるか、見えないかくらいの方が、相手の興を誘う。
ふふん!守若の兄貴、涼しい顔をしていられるのは今のうちだけだ!
佐古は守若の耳元に、そっと唇を寄せた。
佐古大和
さぁ、くらうがいい、小悪魔(小峠さん)直伝の囁き攻撃を!
佐古大和
守若冬史郎
佐古大和
そして、この攻撃は、見事に決まった!
だって、あの守若の兄貴が、ガタタと音を立てて、ソファから転げ落ちたのだから。
ソファの下で、呆気にとられたままの顔で、守若の兄貴は、佐古を見上げてくる。
してやった!俺は遂にやり遂げた。その顔!その顔を見たかったんですよ!やっぱり持つべきものは、小悪魔な知り合いだ。
守若冬史郎
佐古大和
当然ちゃ、当然の結果である。小悪魔に聞けば、結果はこうなるのは明白。だから、小峠もこの事を伝えようとしてくれたのだが、それよりも先に、佐古が席をたってしまったのだ。
佐古大和
守若冬史郎
佐古の当初の目的である、驚かす事には成功したが、その代償は大きかった。
教訓 人の話は最後まで聞きましょう。
おわり
おまけのくがかぶ
小峠華太
久我虎鉄
小峠華太
小峠が言わんとしている事に、久我は気付き
久我虎鉄
久我は、おもむろにスマホを取り出し、野島に電話をかける。
久我虎鉄
通話
00:00
野島翔
数コール目で、野島が電話に出ると同時に、開口一番に、野島は何かあったのか尋ねてきた。
久我虎鉄
野島翔
久我虎鉄
電話を切ると久我は、小峠に向き直る。
久我虎鉄
小峠華太
要は久我の頑張り次第で、泊まっていくか、決めるということで、もっと分かりやすく言えば、泊まって欲しければ、俺をその気にさしてみろ、という、久我への挑発でもあるのだ。
久我虎鉄
久我は恭しく、膝をつき、傅いてみせる。
小峠華太
久我虎鉄
久我は小峠をお姫様だっこで抱えあげると、寝室へと向かって歩き出したのだった。
おわり
あとがき いつも佐古だけが、被害に合うのはフェアじゃないので、たまには守若も痛い目を見たらいいよ、と思ってソファから落としてやったぜぇ!フハハ、という話です。(性格悪っ) 前回の『計画的犯行』を書いてた途中で思いついたんだけど、元々、佐古と華太は公式的に接点がないので、何で知り合ったかという背景がいるので、計画的犯行の方を必死で仕上げた。予定より、長くなっちゃった。やはり佐古の絵は難しい。画力降ってこないかなぁ