2人だけの甘い楽園。

電車に揺られる。

どこか遠い場所。

そう思い考えついたのが

電車での移動だった。

何故か不思議と眠くなってしまって。

安心出来てしまうからだろうか。

睡魔に襲われそうだ。

どうにかして、おきなきゃ、

寧々の優しい眼差しがこちらに向けられる。

目をぱちくりさせる。

一瞬固まる。

どうしよう、

下を見る。

す、き？

え、？

どうして躊躇してるんだろう。

分からないはずがない。

心の中では焦っているのに

体が勝手に反応し言葉を発している。

まるで、

誰かに操られているみたいだ。

まもなく、○○駅〜、○○駅〜

お降りになる際はくれぐれも忘れ物がないよう＿＿

言いかけた言葉が遮られる。

どこか悲しげで、

何かを押し殺していたようだった。

迫り来る黒い影なんて気づきやしないで

風が心地良い

見渡せばほとんどが緑色。

寧々が急に黙り込む。

発せられた言葉はとてつもなく弱々しい。

む、り？

無理って何、、？

何を言ってるの、？

声がでない。

寧々の頬を伝って何かが落ちる。

温かい体温にまた包まれた。

出てくるのは謝罪の言葉達だった。

逃げて

別れを惜しむことも許されないのか。

言われるがまま、走り出す。

きっとまた会えるよね、

走り去っていく類の背中を眺める。

あーぁ、

手を膝につく。

涙が止まらず、地面に落ちていく。

電車で言いかけたあの言葉。

今言ってれば、きっと、

そうだ、この思いを伝えてしまったら

だけど、だけど、

ここで死ぬんだったら、

ｶﾁｯ

頭に何かが当たる。

話し方からして全く違う。

これが類が言っていた

ｶﾁｯ

上が見れない。

司は一体どんな顔をしてるんだろう。

ゆっくりと息を吐く。

足や手が震える。

悲しいから、だ。

顔をあげられないんだ。

ずっと一緒にショウをしてきたから。

まだどこかにいるんじゃないかなって

探してる、未だに、

腕を振り回されたせいで手首を離してしまった。

司の持っているものがこちらに向けられる。

ｶﾁｯ

あーぁ、

負けちゃった、

ごめんね、類。

頭にあてられる。

ダメだなぁ、

こんな瀬戸際でも、

苦しそうに見えるな、

脳裏に浮かんだのは、

ﾊﾞﾝｯｯｯ

類の笑顔だった。

ありがとう。

私の好きだった人。

どうか、逃げ切ってください。