武永
なるほどな……錯覚に見える、という事実を逆手に取って、部屋をひとつ無いように見せかけたってことか。
武永
で、肝心の犯人は誰なんだろうな?
神崎
それはもう明白ですね。
神崎
このトリックを可能だったのは、部屋割りを自由にできて、事前にそれを把握できる人物です。
神崎
そうでなければ、緑川の部屋の隣を予約できたりはしません。
神崎
加えて、トリックを実行に移すためには、緑川の部屋が角部屋である必要がありました。
神崎
さらに、犯行時に気づかれないように、青山と黒井の部屋を緑川の部屋から離すことができたのも――部屋割りをした人物です。
武永
となると、確か――この旅行の幹事をしたのは。
神崎
青山だったはずです。
神崎
なぜ、わざわざ緑川の死体が消滅したように見せかけたのかは分かりませんが、状況的に考えて、彼が犯人だとしか考えられません。
神崎の言葉を聞いた武永は、残りが少なくなった煙草に火を点ける。
神崎
タケさん、この状況が長丁場になる可能性だってあるから、節約して吸ったらどうです?
武永
――いいんだよ。まだ何箱かあるし。
武永は窓の方に向かうと、外に向かって煙をくゆらせる。
武永
なぁ、神崎。
武永
このクイズってよ、過去の未解決事件をベースにしてんだよな?
神崎
……はい、RYUREIの言ってることが正しければ。
武永
だったら、なんで青山は捕まってねぇんだ?
武永
VTR越しで見たお前が、簡単にトリックと犯人まで見破ったってのに、当時の警察は束になって何をやってたんだか……。
武永
同じ刑事として情けなくなってきたぜ。
神崎
確かに、これが未解決というのはおかしいですね。
武永
あぁ、おかしいよな。
武永
まぁ、それはさておき、犯人が青山だったとして、じゃあ……その青山は誰なんだ?
このクイズ番組の奇怪なところは、例えVTR内で犯人が分かっても、それをパネラーと照らし合わせて考えなければならないということだ。
神崎
青山の正体ってことですよね……。
神崎
それならば。
長谷川
それで、犯人は誰なんだ?
長谷川
あ、いや……今の説明で、犯行は青山によるものだったってことは分かった。
長谷川
でもよ、その青山が誰なのか……それが分からないだろ?
九十九
もちろん、それだって分かってるさ。
九十九
実はこの事件、あるものがふたつの意味合いを持っている。
九十九
それがなんだか分かるか?
九十九
青山が事前に施した、ある事柄だ。
茜
……シャツじゃない?
茜
確か、あれって青山が自腹で用意したシャツだったはず。
眠夢
あー、あれがあったから、桃田達は緑川のことを一発で認識できたんだから、それも青山の計画だったと考えると、筋が通るよね。
青山が一同に配ったシャツは、それぞれの名前と同じ色で作られたものだった。
あれがあったから、首を吊っているのが緑川であると、桃田達はすぐに判断できたのだ。
九十九
その通り。
九十九
それがひとつめの意味だ。
九十九
だが、青山がシャツを配ったのには、もうひとつの理由がある。
九十九
思い出して欲しいんだが、このシャツを着用しないと、青山が怒る……なんて話題が出ただろ?
数藤
確か、桃田と黒井と青山で一緒にいた時は何も言わなかったが、黒井と青山と緑川で一緒にいた時は、シャツを着ないと怒ったとか。
九十九
良く覚えてんな、おっさん。
九十九
さて、この対応の差……なんでだと思う?
茜
桃田と黒井の時は、女子がいるから怒らなかったとか?
九十九
うーん、当たらずも遠からずと言ったところか。
九十九
だが、青山の基準がそこだったというのは間違いない。
凛
なに?
凛
青山は女の子に優しいってこと?
九十九
そうじゃねぇんだよ。
九十九
男と女なら、声のトーンでどちらかが分かるだろ?
茜
は?
茜
そんなことしなくたって、男子と女子じゃ見た目で分かるでしょ?
九十九
もし、分からなかったとしたら?
九十九
黒井と桃田と一緒にいた青山は、その声さえ聞けば、どちらが黒井で、どちらが桃田なのか判別することができる。
九十九
だから、シャツを着用していなくても怒りはしなかった。
九十九
だが、黒井、緑川と一緒の時は、2人とも男であるため、声での識別が困難だ。
九十九
だから、青山はシャツを着てもらわねばならなかった。
九十九
どちらが黒井で、どちらが緑川なのか区別をつけたかったんだ。
九十九はある人物の方へと視線をやった。
九十九
なぁ、そうだろ?
九十九
青山……いや。
九十九
数藤のおっさん!






