ワコ
うっ
ワコ
まず……
K
まずい?
K
どれ……
K
確かに美味くないな……
K
あいつは首だ
ワコ
殺すの?
K
はっ?
K
まさか
K
なんでもかんでも殺したりはしない
K
僕は殺人鬼じゃないからね
ワコ
9人殺したら
ワコ
立派な殺人鬼だわ
K
ふふっ
K
彼女らを救ったと言ったら?
K
皆、悦んで死を選んだとしたら?
K
現にきみだって早く死にたいって言ったじゃないか
ワコ
じわじわと苦しみぬいて死ぬくらいなら早く死にたい
ワコ
そう言う意味よ
ワコ
死に悦びなんてない!
K
きみはじゃじゃ馬だ
K
そこがいいとろだ
K
ワコでちょうど10人めだ
K
きみはアニバーサリー
K
だから特別だ
ワコ
10人めの記念日?
ワコ
なら、お祝いでもする?
K
いいや
K
きみの死を悼み
K
喪に服すよ
K
だってその日が
K
ワコの命日になる日なんだから
K
静かに祈ろうと思う
K
そーだ
K
記念だから
K
特別にワコのお墓を建ててあげる!
Kは無邪気に笑う。
ワコ
いや!
ワコ
死んだら
ワコ
海でも
ワコ
山にでも
ワコ
棄てて
ワコ
バラバラだって構わないから
Κはダメだと笑う。
ワコ
お願いよ……
ワコ
死んでも囚われの身だなんて
ワコ
いやよ……
K
外に出すときは
K
粉末だ
K
みんな粉にしちゃう
ワコ
散骨?
ワコ
9人全員
ワコ
粉にしてばらまいた?
K
ああそうさ
K
だって
K
ブームだろ?
K
散骨
ワコ
あ……
ワコ
あの黒いボート
ワコ
あれで海に撒いたんだ
一度だけ連れて行ってもらった。
デートはまるで霊柩車のように黒光りしたボートの上だった。
K
そう霊柩車と同じ意味
K
ふふっ
お見通しとばかりに微笑んだ。
Kはパンをちぎりワコの口に押しつける。
K
さぁ
K
もう少しだけ
K
食べてくれる?
ワコは顔をしかめる。
ワコ
もう
ワコ
むり
ワコ
……
K
そうか──
K
なら、しかたない
Kはゴミ箱にパンを投げ捨てた。
K
さぁ
K
ベットに横にお入り
線の細い綺麗な手がワコの髪に触れる。
K
いい子だ
まるで子供でもあやすかのように──
K
今日も手術が立て込んでいるから
K
帰りが遅い
K
だから僕が帰ってくるまでの間、寝いてほしい
Kは注射器を取り出すと
ワコの腕にプスリと刺した。
ワコ
もっと
ワコ
たくさん打って
ワコ
お願いよ
ワコ
どうせだったら早く死なせてよ
Kは笑みを浮かべ首を横に振る。
K
ゆっくりお休み
K
また今夜
K
話そうね
つづく