夏実
ここかぁ
夏実
『ぬいぐるみ神社』
夏実
思ったより古い神社だね…
夏実
ちょっと怖いかも…
アイ
『も~。なっちゃん!』
アイ
『怖がりだなぁ』
アイ
『もう高校生でしょ?』
夏実
しょうがないじゃん
夏実
いくつになっても怖いものは怖いの!
アイ
『ほんと、なっちゃんは私がいないとダメね?』
夏実
そうなんだよね…
夏実
ダメだなぁ…私
夏実
(…こうやって)
夏実
(テディベアのアイに声をあててお喋りして)
夏実
(お出かけも一緒で…)
夏実
(変だよね…高校生なのに)
夏実
…でも
夏実
アイは私が小っちゃい頃からの大事な友達だもん
アイ
『そうだよ、なっちゃん』
アイ
『一番の仲良しだもん!』
夏実
優しくてフワフワで…
夏実
こんなに可愛い女の子、他にいないよ
アイ
『ふふ。照れちゃうな』
アイ
『でも他のぬいぐるみ達がやきもち妬いちゃうかも!』
夏実
今日はお留守番だもんね
夏実
皆も連れて来たかったなぁ
アイ
『ウサギのリンなんか』
アイ
『きっと寂しくて泣いてるよね!』
夏実
リンは甘えんぼだもんね
夏実
よし、早くお参りして帰ろっか
アイ
『それにしても珍しいよね』
アイ
『ぬいぐるみが飾られてる神社なんて!』
夏実
元々はここ人形供養の神社なんだって
夏実
お別れするお人形達にお祈りしてくれる神社…
夏実
それが今は
夏実
ぬいぐるみ関連のお願いを叶えてくれるって
夏実
評判の神社なんだ
アイ
『それで、なんてお願いするの?』
夏実
そうだなぁ、私は…
夏実
『アイ達と』
夏実
『ずっと友達でいられますように』
夏実
…かなぁ
夏実
いくつになってもアイ達と離れたくないもん
夏実
学校の友達には
夏実
そんなんじゃ彼氏とかできないって言われるけど
夏実
アイ達と離れるくらいなら
夏実
私はそれでも良いかな…
アイ
『私たちはずっと友達だよ』
アイ
『ずっと、ずっとね!』
夏実
そうだよね
夏実
大好きだよ、アイ
夏実
ただいまぁ
夏実
(…って言っても)
夏実
(一人暮らしだから誰もいないんだけど)
夏実
…ううん、皆がいるもんね
アイ
『そうだよ、寂しくないよ』
アイ
『私も、ウサギのリンも』
アイ
『他の子達だって一緒!』
夏実
お父さんもお母さんも仕事で忙しいんだから…
夏実
私だって子どもじゃないし
夏実
寂しがってられないよね
夏実
…今日も一緒に寝ようね、アイ
アイ
『もちろん!』
夏実
アイがいれば…私は大丈夫
夏実
よし!
夏実
一人暮らし、頑張るぞ!
アイ
(…………)
ピピ、ピピピ…ッ
夏実
ん…朝…?
夏実
起きなきゃ…って
夏実
え…?
夏実
(体が動かない!?)
夏実
(誰かに抱き締められてる…!?)
夏実
い…やっ
夏実
誰!?離して…っ!
???
…っ、ちゃん…
夏実
え?
???
なっちゃん…
ギュッ
???
あんまり暴れないで…?
???
俺ベッドから落ちちゃう…
夏実
ひッ!?
夏実
(力強い…っ)
夏実
(解けない!)
夏実
やだっ…ちょっと…っ!
夏実
このっ…
夏実
変態!!!
???
ん~…なっちゃん、朝からどうしたの
???
って…あれ?
???
俺のカラダ…なんか変…
夏実
(うわ…よく見ると)
夏実
(すごいキレイな男の人…!!)
夏実
じゃなくてっ!
夏実
なんっ…なんですか貴方!?
夏実
け、警察…呼びますよ!
???
…俺、もしかして…
???
人間に、なれてる…?
夏実
…は…?
???
すごい!なっちゃん、俺…!
???
本当に人間になれたんだ!!
夏実
な、何言って…っ
???
なっちゃん、俺だよ!
???
クマのぬいぐるみの、アイ!
夏実
あ…い?
夏実
アイって…あの
夏実
アイ…?
アイ
神様の言う通りだ…!
アイ
本当に人間にしてくれたんだ
アイ
なっちゃんと喋れてる…!
アイ
嬉しい!!大好きだよ…
チュッ
夏実
んっ…む、ぅ…!?
夏実
(これ…キス!?)
アイ
…ん
夏実
はっ…ん、ん…!
夏実
や、だ…っ
夏実
苦し…ぃ
アイ
あっ…ごめん
アイ
感動しちゃって…つい
夏実
…………
アイ
…なっちゃん?
アイ
スマホ持ってどうしたの…?
夏実
もしもし、警察ですか?
夏実
家に不審者がいるんですけど
アイ
えっ…ちょ
アイ
やめっ、警察呼ばないで!?
アイ
なっちゃーん!?
夏実
それじゃあつまり
夏実
ぬいぐるみ神社の神様に願いが届いて
夏実
ぬいぐるみのアイが人間になった
夏実
…そういう事?
アイ
うん、そうみたい
アイ
…だから、この手を縛ってる布
アイ
解いてくれない…?
夏実
(信じられない、けど)
夏実
(こんなキレイな男の人が)
夏実
(本当にアイだとしたら…)
夏実
か
アイ
か?
夏実
解釈違い!!
アイ
解釈…?
夏実
は?アイが?男の人!?
夏実
そんなの解釈違いすぎる…!
夏実
アイは優しくてフワフワで
夏実
可愛い『女の子』なの!!
夏実
男の人なんてヤダ!
アイ
…ごめん
アイ
そうだよね…なっちゃんは
アイ
小学生の時に男の子達に
アイ
『ぬいぐるみと話してキモい』
アイ
って、からかわれてから
アイ
男の人苦手だもんね…
夏実
な、んで…それ知って…!
アイ
なんでって、俺もいたし
アイ
無理やり引っ張られてさ
アイ
あれは俺も痛かったな…
夏実
う…
夏実
…………
夏実
…もし、本当にアイだとして
夏実
元には…戻れるの?
アイ
…やっぱり、今の俺はイヤ?
夏実
う…
夏実
い、イヤだよ…
夏実
私はいつものアイがいい
アイ
…そっか
アイ
…………
アイ
…元には、戻れるよ
夏実
ほんと!?よかった!
アイ
神様が言ってたんだけど
アイ
俺の『願い』が叶ったとき
アイ
自然と元に戻るんだってさ
夏実
アイの願い?
夏実
…って、何?
アイ
うーん…そうだな
アイ
あ
アイ
お風呂に入りたい、かな
夏実
お、お風呂…?
アイ
なっちゃんはいつも俺のこと
アイ
優しく丁寧に洗ってくれて…
アイ
俺、すっごい好きなんだ
夏実
…えっ
夏実
ちょっ、と…それって…
アイ
…ね、なっちゃん…
アイ
『いつも』みたいに
アイ
俺を、お風呂に入れて?