#1 お散歩
リリア
歩きなさいよ。
キララ
リリアさん。
キララ
多めに見てよね。
リリア
森、一周しちゃった?
キララ
キララ
見えるし、
多分そうだよ。
キララ
狭いんだねー。
リリア
キララ
荷物がいつもより
散乱してるね。
キララ
リリア
リリア
他の小屋よ、これ。
キララ
キララ
うちに違いないよ!
リリア
リリア
うちの家じゃないのよ、
分かってる?
キララ
雰囲気からして家だよ。
リリア
汚いしうちの家かー
#2 牢のなかの姫君
リリア
キララ
キララ
——助け……
リリア
キララ
キララ
キララ
リリア
リリア
キララ
リリア
リリア
リリア
どうすんのよ!
リリア
都合いいから
殺すわけには
いかないのよ!
キララ
キララ
キララ
音は聞こえますね。
リリア
キララ
怖いです。
キララ
リリア
リリア
リリア
キララ
なっちゃいました。
キララ
大丈夫かな。
リリア
リリア
大丈夫かしら。
キララ
酷いですよ!
リリア
本人いないし。
リリア
もう少し、
耐えてちょうだいね。
キララ
ミラージュさんの
生命力は雑草以上です!
リリア
リリア
リリア
大丈夫でしょう。
リリア
リリア
くっつきそうよ。
ご飯食べたい。
キララ
ってもしかして背骨も
内臓もないんですか?
リリア
表現的によ、馬鹿ね。
キララ
キララ
リリア
キララ
キララ
……せ
キララ
リリア
キララ
キララ
トンネルの中です!
リリア
リリア
リリア
分かれ道もないのよ。
キララ
隠し通路がどこかに
あるはずです!
キララ
ミラージュ
ビシア
ヴァロ
ヴァロが退屈そうな声をあげると、首に下げた碧(あお)の宝石が揺れる。
ビシアはそれを見つめながら言った。
ビシア
ヴァロ
ビシア
ビシア
とどめを刺すしかないな。
ミラージュ
キララ
リリア
キララ
白い粉を撒くことで
扉を誤魔化してたんだ!
キララ
見つかったね。
リリア
…………ぁぁぁ!
キララ
キララ
リリア
扉の先には
絶望的な"風"景が広がっていた。
リリア
トンネルなのよ!
キララ
奥の扉を開けば
着くはず!
リリア
リリア
150メートルはあるわ。
リリア
キララ
#3 さらに重なる罪
リリア
キララ
2人は部屋へ倒れ込む。
2人の足はすでに崩壊直前までに追い込まれていた。息までも白い蒸気と化し、2人は壊れかけた機関車のようだった。
キララ
キララ
すぐに助け……
ミラージュ
キララ
ミラージュさん!
リリア
死ぬんじゃないわよ!
リリアはミラージュを助け起こそうとする。ミラージュはぐったりとして起きる気配もない。
突如リリアの視界は影に覆われた。
上を向く。 と、リリアの背中の筋肉がひどく強張る。
ビシア
ビシア
ヴァロ
哀れだな。
リリア
なんの真似よ!
リリア
どうすんの?
キララ
キララ
どうするんだ!
キララ
作ってもらうんだぞ。
ヴァロ
ビシア
ご馳走してやるよ。
ビシア
作らせるぜ。
なあ王の息子さんよ
キララ
ふざけないで!
キララ
王様の子供じゃないよ!
ビシア
ビシア
キララ
なにになるんだよ。
キララ
どうか……生きていて!
ヴァロ
もう脈も止まった。
ヴァロ
医療でも与えられぬ限り
動物は死に絶える。
それはリリアにもキララにも分かる。
ビシア
ビシア
死んだも同然だ!
キララ
キララ
キララ
キララ
ヴァロ
ビシア
俺は嫌いなんだ。
ビシア
ビシア
してやるよ。
キララ
キララはリリアの後ろに隠れる。
ビシア
お前も連帯責任だ!
リリアの肉体を邪魔だと思ったのか彼女はナイフを空中にうならせている。
ヴァロ
ヴァロ
ナイフを突きつけられた。これくらいならきっと、見切れる!
そうよ、自然解凍。やるのよ! キララ、あんたはあたしが救う。
リリア
ヴァロ
すばしっこいな。
2方向から飛んできたナイフ。
それが皮膚を突き抜ける感触。
血液が撒き散らされて、あたりを全て赤く染め上げた。
ビシア
なんか、なんかやばいぜ!
彼女が言ったのはリリアの出血のことでも、キララがリリアに庇われて傷を負わなかったことでもない。
ヴァロ
ビシア
そうだ。
動物は心肺停止すれば死ぬ。
じゃあ……
ミラージュ
雑草は?
ミラージュ
キララ。
ミラージュ
申し訳ないね。
キララ
リリア
ミラージュ
呼ばないんだね。
リリア
リリア
悪いあだなで
呼ばれたまま
死んだんじゃあ
悪霊にでもなって
出てきそうじゃない。
ミラージュ
ミラージュ
いいだろう?
ミラージュ
少し退いてくれ。
彼の赤い目は光の中では闇であり、闇の中では光である。
異端であること。それが "今時(このとき)の彼にとって"唯一誇れる長所なのかもしれない。
ビシア
ヴァロ
ミラージュ
鎖が切れたようだね。
まさか、驚いた。このタイミングで切れるとは。
これを待って僕は生きてきたのか、または……
これのせいで、僕は延々と続く時計塔の針の中生きてきたのか。
いやあるいは……
ミラージュ
殺戮魔法II。
生まれながらの運命があるのか。
リリア
私たちももう少し
近くにいたら
巻き添えだったわよ。
リリア
この"雑草"という呼び名は、今はなんだか不思議なことにミラージュを称えていた。
ミラージュ
キララ
カッコよかった!
ミラージュ
よかったけどさ……
リリア
リリア
大丈夫ですか?
キララ
キララ
サンドウィッチ!
キララ
ミラージュ
ミラージュ
リリア
ミラージュ
リリア
リリア
魔法は戻ったの?
ミラージュ
さっきの魔法も
完璧じゃない。
ミラージュ
せめてもの救いだよ。
ミラージュ
封印が解けるらしいから、
気をつけてほしい。
キララ
キララ出なかったよ。
リリア
リリア
気色悪いわ、生ゴミ野郎
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
塵ぐらいかな。
#4 死体の中にただひとり
まさか2人を殺してしまうなんて、思わなかった。
いや、キララとリリアに彼らが手を出さなければ、彼らを殺したりなんてしなかったろう。
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
話していたかったよ。
ヴァロ
ミラージュ
ミラージュ
ヴァロ
生命力はある。
お前ほどじゃないが。
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
殺して殺して殺して。
ヴァロ
分かったのか。
ヴァロ
ヴァロ
気づけなかったのか。
いや、気付けていた。
僕は魔法で遊んだことはない……
ずっと僕は、魔法に遊ばれていただけだったのだから。
僕は魔法のおもちゃなのだから……
ミラージュ
ヴァロ
ヴァロ
仕置きをせねばならぬな
ミラージュ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
隔離してやってもいいぞ。
ミラージュ
ヴァロ
お前のせいで私の人生は
酷かった。
ヴァロ
ビシアだってお前のせいで
死んだ!
ヴァロ
必要ってことだろうな
兄上。
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
加えてやるから
覚悟してろ!
苦痛?
何度だって何度だって味わった。
もう十分なほどに。
まだ?まだ罪を償えてないのか?
この生まれながら背負った罪を償えてないのか?
いや、償えた。お前は。
なんて、君がいうわけがあろうか。
ミラージュ
いや、絶対にいわない。反語法だ
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
ヴァロ
ミラージュ
君を苦しめる。
ヴァロ
苦しんだ。
ミラージュ
ミラージュ
君は最期を暮らせ。
ヴァロ
ミラージュ
出てもらうわけには、
いかない。
ミラージュ
誰かが救いに来ない限り
外へ出られない
魔法は続くはずさ。
ヴァロ
まとめるのは誰だ……
ミラージュ
ヴァロ
お前が殺した。
ヴァロ
ミラージュ
息子がいるだろ。
ヴァロ
ミラージュ
君は間違いなく。
ミラージュ
ミラージュ
しないのかい。
ミラージュ
辛いはずだ。
ミラージュは、申し訳なさそうにうつむいた。
ヴァロ
ミラージュ
ヴァロ
ヴァロ
お前なんだよな。
ヴァロ
ミラージュ
ヴァロ
ミラージュ
ヴァロ
知っててあの罠に
かかったんだろ……?
ヴァロ
入れられるなんて
思わなかったんだよな?
ヴァロ
ヴァロ
何度も何度も裏切った。
ヴァロ
お前をよく、
仲間はずれにして……
ヴァロ
大丈夫だ。
ヴァロ
ヴァロ
情のかけすぎだ。
ヴァロ
日照時間だけ。
しかもたった20年なんて、
甘すぎる。
ヴァロ
僕は君のことを子供だなんて思っていない。
君は僕なんかより帝らしくて、強くて大人で真面目で……
ミラージュ
かけるわけがない。
ミラージュ
心の奥底から、
恨んで、憎んで、
そして妬んでいたさ。
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
シャナの前の使用人を
焼き殺す前さ……
ミラージュ
町の市場に出かけて、
ミラージュ
ガラス玉のネックレス、
買ったろう?
ヴァロ
2人は、長く語り合っていた。
思い出のことも、今のことも、失ったもののことも。
全てを話し終えることはない。
ミラージュはヴァロを閉じ込める魔法を使ったことを気に病んでいたが、ヴァロは何もいわなかった。
ヴァロ
ヴァロ
ミラージュ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ミラージュ
ミラージュ
ヴァロ
ミラージュ
ミラージュ
ミラージュ
キララ
盗み聞きしちゃった。
リリア
リリア
リリア
リリア
キララ
そういうことじゃ、
ないと思いますよ!






