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無那

希空さんの...遺言...?どうして知っているんですか...‼︎

茉莉

どうしても何も、黒星に伝えるように頼まれたからな

無那

私に...?

茉莉

あれは目覚めて建物内を捜索していた際、外でとても大きな音が聞こえたんだ

茉莉

何だこれは...

慌てて外に出てみると 天文台が跡形もなく 崩壊している光景が 目に飛び込んできた。

茉莉

まさか...‼︎

あっしは黒星と天国が 巻き込まれていると考え、 急いで現場に急行した。

現場は瓦礫まみれで 2人を探すには 困難に思えた。

するとその時、 遠くで誰かの呻き声が 聞こえたんだ。

急いで瓦礫をかき分け 声のする方向へ向かうと 血だらけの天国がいた。

茉莉

おい天国‼︎分かるか⁉︎

希空

あ...れ...

希空

てっぽ...が...らか...?

茉莉

お前...大量出血じゃないか...

茉莉

今救急車を呼ぶからな

そう言ってあっしが 指輪を通話機能に しようとすると 天国があっしを止めた。

茉莉

何故止める?

希空

...俺は...も...死...ぬ...

希空

だから...黒...し...に...伝え...れ...

天国は途切れ途切れに あっしに伝えてきた。

あっしは無視して救急車を 呼ぼうと思ったが あいつは自分の死が近いこと を悟っていたんだろうな。

ならば最期の言葉を 聞こうと電話をやめたんだ。

茉莉

...何だ?

希空

俺は...く...星の...お...やを...守...なか...た...

希空

アイツに...迷惑...かけた...

希空

謝って...済む...話じゃな...

希空

ゲホッ‼︎ゲホッ‼︎

茉莉

天国...

希空

だから...せめて...これを...

そう言うと天国はあっしに 何かを渡してきた。

茉莉

通信手段の指輪?

希空

一応...お守...で...持って...れ...

希空

あとは...任せ...た...

そして天国の命が尽きる直前、 あいつは空を見て笑いながら 一言こう呟いた。

希空

ああ...綺麗...だな...

そして天国は静かに 目を閉じると、二度と 開くことはなかった。

茉莉

これが天国の遺言だ

そう言うと茉莉さんは 希空さんが着けていた 指輪を私に差し出した。

無那

....

私はゆっくり それを受け取ると スッと指に着けた。

無那

...希空さんはとてもいい人でした

無那

最初は私に抱きつくセクハラ男という印象でした

無那

でも一緒に過ごしていくうちに希空さんの優しさと情熱に気が付きました

無那

天文台が崩壊する直前でさえ、私を最優先に考えてくださって...本当に...

無那

本当...に...

私はその場で慟哭した。

それは亡くなった人達に 向けての涙と、自分の 弱さに対する涙だった。

茉莉

....

私が泣き崩れていると フワッと温かいものが 私を包み込んだ。

無那

茉莉...さん...?

茉莉

涙は好きなだけ流せ。今ここはお前だけの場所だ

私は茉莉さんに 抱きしめられながら 今までの思いをすべて 吐き出すように泣いた。

あれから暫く経ち 涙は止まった頃、私は 茉莉さんにお礼を言った。

無那

ありがとうございました...いくらか落ち着きました...

茉莉

それは良かった

茉莉

ならば今日はもう寝ろ。明日は頃合いを見て起こす

無那

分かりました...茉莉さんは?

茉莉

あっしはまだ起きている、夜型人間なものでな

無那

そうですか...あまり遅くならないうちに寝てくださいね

茉莉

ああ、承知した

無那

では、おやすみなさい

茉莉

ああ、おやすみ

そして私は建物の奥にある 小さな個室へ向かった。

無那

希空さん...最期に空が綺麗だって...

無那

琴音さんと同じ景色を見れたのかな...

そんなことを言っていると 個室に辿り着き、私は中に 入りバタンと扉を閉めた。

終末の理想郷(ユートピア)

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