茶柱
言えなくても、言って

茶柱
…言わな、いで一番辛、いのは、っ…きっ、と、

茶柱
しゅーちゃ、だから

朱。
…、っ、ゎ

朱。
わたし…はっ、…

茶柱
…おね、がい。

朱。
………、

朱。
…だ、って、皆もその方が嬉しい、でしょ、?

朱。
優しい私が好きなんじゃないの、?

茶柱
、…っ

重い。体が重すぎる。
でも、耳を傾けずにはいられない。
朱。
皆が嬉しいなら、それがいい、でしょ

朱。
だから、…だから、私は、私、はっ…皆に優しくあろう、って

朱。
私だけは、優しくいよう、って、…

朱。
……そう、すれば

朱。
もう、あんなの、見なくていい、でしょ、?

茶柱
……ー、

茶柱
(…あぁ、そうか。)

茶柱
(…他人に振り回されてきたんだろうな。)

茶柱
(相手の求められた自分でいる事にずっと固執している。)

…優しさなんて、微塵も考えてない。でも、周りが優しいと言えば優しい事に固執する。
茶柱
……分かった。

茶柱
ちゃんと、分かったよ

茶柱
…やっぱり、君、は優しく、なんて無い。

茶柱
どこまでも自分のエゴが消えない、ただの偽善者、だよ。

茶柱
今の、言葉…からは、
何、も、感じられない。

茶柱
過去の…自分が、許せなくて、その、罪悪感、っを、造り物の優しさ、でっ、埋めようと、してるだけ

茶柱
…っ自分が可愛くて可愛くて仕方ないんだ。変わるのが…怖い。自分、が…今まで積み上げてきた全てを、壊されたくない、んでしょう、?

茶柱
ずるい、よ。そんなの。

朱。
…ち、ちが、う

朱。
違うっ…のっ…

茶柱
、何が?…何が、違うの?

朱。
わ、わた、しは

朱。
ずっと、こんな、風にっ

茶柱
だから何

朱。
私は、ずっとこうやって
生きてきたのっ!!

茶柱
…っだ、から何なんだ、
って聞いてんの、!

茶柱
っそう、やって生きる方法しか分かんない、からそれで、いい?目を瞑ろうって、?

茶柱
自、分の言葉には責任を持っ、てくれる、?何が"優しい私"、だよっ、それに、一番違和感を抱いてる…のは、間違い、なく他でもない自分自身じゃんか!

茶柱
違、和感を潰しちゃえ、ば、そりゃ楽さ。でも、それが…出来なかった、から、今そうなって、るんでしょ?

茶柱
自分で気づいたなら、
自分で変えなきゃ

茶柱
周りは、変えちゃくれない。変わるなら、自分…っで、選ばなきゃ。周りを理由にして、たら、いつまでたっても、何も、変わんない。

僕凄い名言言ってるなぁとか頭の片隅で思いつつ、
迫りくる死を自覚し始める。
そりゃそうだ。もう死にかけってとこから
ずーっと休みなく喋ってんだもん。
茶柱
(…で、も、まだ、駄目。気合いだ気合い!いけぇ茶柱!!!)

茶柱
…僕っ、は、それを、優しさ、だと、思わない。

茶柱
罪悪感に押されて、嫌な事を嫌とすら言えないくせに。

茶柱
…自分に、優しく出来ないくせにっ、他人に優しく出来るわけが、ないでしょ、

茶柱
……でもっ……僕、は

茶柱
その偽善を、認めなきゃ

茶柱
その偽善…は、紛れもなく、歪んだ優しさが生み出したもの、だから

茶柱
優しい私…を、優しさで造ってたから

茶柱
優しい私を造るのが、君の出来る最善の優しさだったから。

茶柱
…嫌いに、なれないよ。

朱。
、……ごめ、んなさい。
私が悪かったです。

茶柱
(……は、?)

まだ駄目だ。まだこの子は駄目なんだ。
…もう身体が持たない。でも、まだ駄目だから。
茶柱
…あはは。そんなに、面倒くさかった?

朱。
…ぇ

この子は納得なんてしてない。
その場を乗り切ればいいとか思ってる。
僕が体張ったのが無駄とか、
そんなのがあってたまるかぁ!!
茶柱
バレて、ないわけないでしょ、

茶柱
…その場しのぎでいいや〜、って、僕からしたら、たまったもんじゃない、んだけど…?

朱。
…ぇ、ぁ、ご、ごめんなさっ…

茶柱
僕、そん、なに、謝罪してほしそ、うな顔、してたかな、w?

朱。
っえ、な…んで、…?

茶柱
謝ったら、僕が満足する…と、思ったん、でしょ?…そ、んなわけ、ないじゃん。

この子はどこまでも傀儡だ。人の理想を演じる。自我のない傀儡。
それを変えるのはどんなに難しい事だろう。
朱。
っぁ、…ぇ、と

茶柱
…やっと、自覚した、w、?

すっと彼女の顔が青ざめていく。
自覚と共に罪悪感が芽生えたのだろうか。
きっとそれは、どこまでも僕には理解できないもので、彼女にとっては、軸の様な存在であった。
絶望から立ち上がるのは難しい。
だがその絶望から救ってくれる人はいないだろう。
朱。
…………っ、

茶柱
(僕は彼女を救えない。…でも、立ち上がる手伝いくらいなら出来るはず。)

茶柱
…でも、いいんだよ。

茶柱
それでいい。

朱。
…、っえ、?

茶柱
…ゆっく、り、変わろ、うよ。

茶柱
しゅーちゃは、その、…人に、寄り添える所、が魅力なん、だから

朱。
っ……ごめ…っ…なさっ……

瞬間、彼女はその場に崩れ落ち、
何か、溢れ出したように彼女の瞳から
大粒の涙がこぼれだす。
さっきは怒りで泣いていたのに。
…感情豊かだなぁ、なんてw
朱。
…ごめっ…なさいっ……

静かに謝罪の言葉を繰り返している。
…彼女はこれから…変われる、だろうか?
茶柱
(…変われると、信じよう。)

瞬間、僕は、すべてが終わった心地と共に、
本当の死の淵を味わう事になった。