作者
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ずっと前から、好きだった。 アナタのことが。 優しいところが好き。 物知りなところが好き。 頑張りやさんなところも好き。 トリになってからは、怖いのに、怯えてたのに、一緒に戦ってくれた。 そんなところも好き。 声も瞳も姿形も。全部大好き。 だけど、この好きを伝えたら、アナタを困らせてしまうだろうから、アナタは私のことを親友と思っているから、この関係が崩れてなくなってしまうからこの気持ちには蓋をした。 蓋をした、はずだった。 「フラミンゴ。」 なのに、何でアナタは。 「大丈夫?」 なんで。なんで。 「わっ、怪我、してるよ…今、手当てするから。じっとしててね…フラミンゴ?」 「あ、いいよ、自分でやる。」 「ううん、ワタシにやらせてほしい。」 なんでそんなに優しくしてくるの? なんでそんなに構ってくれるの? せっかく、蓋をしたのにさ。 …我慢、できなくなっちゃうじゃん。 最近、ますますアナタのことが好きになっていく。トリになる前は見られなかった、新しいアナタを見つけるたびに、嬉しくて、愛しくて。くるしい。 ぐるぐるぐる ワタシが胸の中のもやもやと葛藤している間にも包帯は巻かれていく。 「はい、手当終わり。大丈夫?きつくない?」 「うん、大丈夫だよ。ありがとう、フクロウ。」 フクロウに心配かけないように。 いつもどおり、いつもどおりに、振る舞う。 大丈夫。いままで、ずっと隠してきたんだ。きっと、大丈夫。 「フラミンゴ、顔色悪いよ。大丈夫?」 「えっ、」 「体調悪いの?」 失敗した。悩んでるの、フクロウに見破られちゃったかな…? 「…ううん、大丈夫だよ。」 いいや、大丈夫。きっと、バレてない。普通に顔色が悪いから心配してくれただけ。 「じゃあCAGEに戻ろっか!」 「うん…」 まだフクロウは何か気がかりみたいだけどそれに気づかないフリをする。 いつもどおり、いつもどおり… 自分に暗示をかける。やれる、ワタシなら、やれる…! フクロウの手を取り、歩き出す。ワタシたちの、家へと向かって。 「じゃあフラミンゴ、おやすみ。」 「おやすみ、フクロウ。」 ぱたん フラミンゴは私に挨拶を返して扉の向こうに消えた。 「…フラミンゴ。」 誰もいない廊下でぼそっと、つぶやく。 元々声が大きいほうではないが、それでも誰もいない廊下は静かで、私の声は響く。 今日のフラミンゴはどこか様子がおかしかった。 いや、最近はずっとおかしかった。 話しかけても上の空のことが多くなったし、前はあんなに多かったスキンシップも減った。 はじめのころは何かあったのかな、と思いつつも話してくれるまで待ってみようと思っていた。ひと月たって、あまりに長い間悩んでるから一度聞いてみた。なにか悩んでいることがあるのなら教えてほしい。自分も力になりたい。フラミンゴの支えになりたい、と。 そのときは『フクロウ!!ありがとう!!とーっても嬉しいよ!大好き!!!』みたいなかんじではぐらかされてしまった。 でもフラミンゴが何で悩んでいて、何で困っているのか。どうして私に話してくれないのか。私がそれを知る術は今のところはない。 けれど。もうそろそろ終わりにしたい。私も悩みを知りたい。フラミンゴの力になりたい。今まで、助けてもらってばかりだったから。 …今夜、フラミンゴとちゃんと話をしよう。 覚悟を決めて、フラミンゴの部屋の前に立つ。 扉をノックしようと手を伸ばしたとき。 「………して」 「っ!!」 中から、フラミンゴの泣き声が、聞こえた。 感情を押し殺しているような、悲しい声が。 「どう……して………ないの… わ……ないよ…」 「っ、フラミンゴ!開けるよ?」 今までにないくらい、素早く、感情的に動いた。 勢いよく扉を開けて、部屋にのりこむ。 「っえ、っ、ふく、ろう…?!」 初めはドアの前で聞いていようかな、とか、また日を改めて見ようかな、とか思ったけど、我慢できなかった。 「フラミンゴ!大丈夫?」 フラミンゴは、ベッドに座って、泣いていた。クッションを抱きしめて、目を真っ赤にして。 「ふ、フクロウ、どうしたの…?」 「…フラミンゴが、泣いてたから。来ちゃった。」 「っ、泣いて、なんか、ないよ…?」 「じゃあなんでそんなに…」 悲しそうなの? 目が真っ赤なの? クッションが濡れてるの? 眉が下がってるの? 声が震えてるの? 「そ、れは…」 「フラミンゴ。」 私はフラミンゴにそっと歩み寄って、抱きしめる。 「私は、フラミンゴが何で悩んでたのか知らない。知らない、けど。」 「……」 「私はフラミンゴに泣いて欲しくない。」 「っ!!!」 「なにかあったら、頼ってほしい。そりゃ、私は頼りないし、フラミンゴなら他にもたくさん頼れる人がいるのかもしれないけど。それでも、」 フラミンゴを抱きしめる腕に力をこめる。 「一番に私を、頼ってほしい。今回のことも、無理に話さなくてもいいけど、頼ってほしい」 「……い、いいの?ワタシ、フクロウのこと、困らせちゃうよ?いっぱい、めいわく、かけちゃうよ?」 「いいんだ。全然。むしろ、迷惑かけてほしい。フラミンゴがひとりで抱え込まないで、私のことを頼ってくれるのが一番嬉しい。」 「ぁ、っーーーーーーーーーーーー」 ぽろり、ぽろりとフラミンゴの瞳から雫がこぼれ落ちる。 それはとっても綺麗で、見惚れてしまいそうだけれど。 「ふ、フラミンゴ、泣かないで…」 「だって!だって、ワタシ、嬉しくって…!」 「でも、」 「わぁあああああん」 フラミンゴは声を上げて泣いた。 ただひたすら、私のことを抱きしめて、泣いた。 今まで溜め込んでたものが、溢れちゃったんだろうな。きっと。 泣き止むまでの数十分。私たちはただただ抱き合っていた。 「フクロウっ!」 フラミンゴがようやく泣き止んで、手を離す。 …ちょっと、寂しいな。 ……って、何考えてるの,私! 「なぁに、フラミンゴ。」 「ワタシの、ワタシの悩んでたことはね、『ピロリロリンピロリロリン』 フラミンゴの声を遮って、それは音を発した。 「…副司令からだね。」 「うん、出るよ」 ぽち 副司令の姿が端末に表示される。 『フクロウさん、フラミンゴさん。夜分に申し訳ございません。』 「全然構いませんよ!何かありましたか?」 『新たな黒柱、γが出現しました。今までのものより成長速度が速く,厄介です。早急に破壊するべきとの結論に至り,連絡させていただきました。出撃願います』 「「了解!!」」 『詳しい情報は端末に送りました。あとは頼みます』 ヴィン その言葉を最後に通信は切れた。 「…フクロウ。」 フラミンゴは私の手を握っていった。 「ワタシの悩み事、解決しそうだよ!でも、ちゃんと話したいからまた今度、時間もらえる?」 フラミンゴからのお願い。答えはもちろんーーーーーー 「うん、いつでも。待ってるから。」
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