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今は任務外。私は本を読んでいる。ジャンルは私が読みそうにない、恋愛小説。 なぜそんなもの読んでいるのかと言えば、あることを勉強するためである。 本から学ぶつもりで読み始めた小説。ところがこれ、読み始めてみるとなかなか面白い。ヒロインに片想いしている幼馴染の女の子の好きって言いたい気持ちと困らせたくないっていう気持ちの葛藤とか、ヒロインが恋を自覚する瞬間、ハプニングでキスをしてしまう場面…その時の登場人物の心情、気持ちの変化、これからの行動を考察したり、感情移入して胸がきゅんきゅんしたりドキドキハラハラしたりと、とにかく奥が深いのである。 まぁ、そうしてじっくり読み進めること数十分。 「わっ」 突然、視界が塞がれて、真っ黒になる。手で目を塞がれたのだ。 冷静であれば触れている手の状態、大きさから犯人の情報を推測したりできるけど、今の私が冷静でいられるはずがなかった。 え、なんで。どうしよう。 私の目を塞いだのは、だれ? 目を塞がれるってことは私、誘拐されるの? 「だーれだ!」 半ばパニックだった私の耳に飛び込んでくる元気な声と馴染みのある匂いが漂ってくる。 それだけで私の頭は落ち着き、安堵する。 「…フラミンゴ、だよね?」 「正解!さすがフクロウだね!」 手が離れると視界が開放され、振り返る。そこには満面の笑みを浮かべるフラミンゴがいた。 「でもなんでわかったの?」 「フラミンゴだから、だよ。他の人だったらわからなかった。」 「~~~~~っ!フクロウ、うれしいよ〜〜〜〜〜〜っ!!!」 「わ、ちょ、っ」 ぎゅーっと抱きしめられる。バックハグみたいで恥ずかしい… 「ふふ、フクロウの顔,真っ赤っかだね。」 「えっ」 慌てて頬を触る。たしかに熱い。赤くなっているようだ。 「…なんでだろ?」 続けて、フラミンゴにも聞こえないくらい、小さく呟く。 「…ホントは答え、わかってるのに、何言ってるんだろ,私。」 首を振ってから顔を上げてフラミンゴを見る。彼女は私の顔から視線を逸らして本を見ていた。 私が、さっきまで読んでいた本。 れ、恋愛小説なんて呼んでるってバレたらどうしよう…しかも、あれは一般的な恋愛小説に多い男女恋愛ではなく、女子と女子の、いわゆる百合がテーマの小説。 今日初めて読んだとはいえ、そんなの読んでるってバレたら幻滅されちゃうかも… いや、表紙やタイトルはシンプルなのでそれだけでは恋愛小説だとはわからない…はず。そうだと信じたい。 「ねぇねぇフクロウ!」 「どうしたの?」 冷静に,冷静に。 落ち着いて答える。 幸い,フラミンゴに私の動揺は伝わっていないようで、いつもと変わらない様子で会話を続ける。 「フクロウってさっきまで本読んでたでしょ?」 「うん。」 「どんな本読んでたの?…って、あ、もしかして、邪魔しちゃった…?」 「そんなことないよ。フラミンゴが会いにきてくれるの、嬉しい。」 「っ!!」 一瞬、フラミンゴの顔が歪んだような気がした。でも、次の瞬間、私はまた、フラミンゴの腕の中にいた。 「も〜っ、そんなに嬉しいこと言わないでよ〜。照れちゃうじゃん。」 「あ、ご、ごめん…」 「あっ、別に攻めてるわけじゃないんだよ。でも、今日のフクロウ、いつもよりたくさん伝えてくれるから、嬉しくって。」 ふふ、と笑みが溢れる。…綺麗だなぁ。 …今ので本の話題から反らせたり… 「でさ、改めて、なんの本読んでたの?」 しないよねぇ。 今だけは、フラミンゴが悪魔に見える。そこは見のがしてよぉ… なんて心の声が届くはずもなく。フラミンゴは私を見つめてくる。とても、眩しくて目が潰れそうなくらいキラキラした目で。 「そ、そんなにキラキラした目で見るほど、大したものじゃないよ。」 「いいの!フクロウが何読んでたのか、しりたい!」 こうなれば任務でも入らない限り,フラミンゴの気を逸らすのは難しそうだ。逃げたとしても、私の体力と身体能力では逃げ切れないだろうし。 仮に逃げ切ったとしても、気まずくなるか、後で質問攻めにあうかで、確実に面倒なことになる。 諦めて白状するしかない。 「…え、えっと、ね。」 「うんうん。」 「その…恋愛、小説、…///」 「え、っ」 言って、しまった。 めちゃくちゃ恥ずかしい。羞恥心で押しつぶされそう。言うしかなかったとはいえ、やっぱり精神的ダメージが大きい。 フラミンゴはというと、目を見開いて、固まっていた。 そんなに意外だっただろうか。私が恋愛小説を読むというのは。 「うう、やっぱり陰キャがこういうの読むの、変だよね…」 「あ、いや、そういうわけじゃないよ。正直驚いてるけど。今までワタシがわからないような、難しい本読んでることが多かったし。」 「確かに…」 いままでは『宇宙誕生の原理と理屈』とか『ニンゲン』みたいに心理学を追求している本とか、『落下の法則と空気抵抗』って言う専門書みたいな本ばっかり読んでたし。 物語といえば『なぜ童話のオオカミは悪役なのか。救う手はあるのか。』『ロミオとジュリエットを深読みする〜ロミオとジュリエットは地域によって違う〜』みたいに考察する話だったし。物語といえるのか、少し怪しいけど。 「フクロウって、恋愛に興味あるの?」 「まぁ、一応…」 本についてそれ以上深く聞かれることはなかった。けどその次の話題でも私は疲弊することになりそうだ。 「そうなんだ。」 フラミンゴはいきなり爆弾を落としてきた。 「じゃあ、好きな人はいるの?」 「……ぇ、」 いやいやいや、いきなり聞く?それ。だいぶハードルたかいんですけど?!なんでいきなり突っ込んだ会話をするの?! 「ぃ、いる、よ。」 「ほ、んと?」 「、ぅ、うん。」 なんで、こんなに雰囲気が重くて、どんよりしてるの…? この流れ、この雰囲気、無理…つらい 自分のことに精一杯でフラミンゴの顔を見れない。今,私の顔は真っ赤に染まっているのだろう。 …まさか、誰のことが好きなのかは聞かれないよね。そこまで深く追求するわけがない、よね。 いや、これ、自分でフラグ立ててない? この流れだと… 「誰が好きなの?」 そう、来ますよね…フラグ回収、お疲れ様でした。 ていうかさ、詰みじゃない、これ。 私が好意を抱いている相手は目の前にいる。そう、フラミンゴだ。 だからフラミンゴに言うわけにはいかないし、ずっと黙ってるのも私のメンタルが死ぬ。 ここは、どう切り替えそう… あ、そうだ…! 「いや、私のことより、さ、フラミンゴは、す、好きな人、いるの?」 「え。」 今度はフラミンゴが固まった。…この反応、もしかしてホントにいるのかな? 「…ぇ、と、い、るよ。」 うん、いるよね。わかってた。わかったたけど、ショックだな…。 せめて、誰が好きなのか、聞いてみたい。その人がいい人なら任せたいな。 誰だろう、カラスさんか、ハクチョウさんかな。2人ともかっこいいし、好きになっても仕方ないよね。 「誰なの、フラミンゴの好きな人。」 「っ、と、ぁっ、は、」 すぅうううう、とフラミンゴが息を吸う。息を吐く。 「あのね、フクロウ。ワタシの好きな、人は、ね。」 「うん。」 「人見知りだけど頑張り屋さんで、かっこよくて、とっても素敵な人なんだよ。周りのこと、ちゃんと見れるし、それにーーーーーーーー。」 「ふ、フラミンゴ?」 ぐいっ、と、フラミンゴに腕を引かれて胸に飛び込む。抱きしめられるような形になり、顔に熱が集まっていくのがわかる。 「人一倍優しくしてくれる人。ワタシのために、色の勉強までしてくれてる、幼馴染の子だよ。」 ぼそっ、と 耳元で囁かれる。 …今の、聞き間違い?聞き間違えじゃ、ないよね? 「もちろん。これが、ワタシの本当の気持ち。…でも、フクロウには好きな人がいるみたいだし、今、ここでワタシのこと振ってよ。そしたら、吹っ切れるか「フラミンゴ。」」 自虐的な発言をするフラミンゴの口を塞ぐ。…手で、だからね!キスして、口で塞ぐ、とかそういうロマンチックなものでもなんでもないけどね! 「私の話も、聞いてよ。…私の好きな人ってね、明るくて、誰とでも仲よくなれて、強くて、かっこよくて。本当にすごい人なんだ。私と一緒にいてくれるのが不思議なくらい。」 「え、」 「私も、私もフラミンゴのこと、好きだよ。」 「…ほんと?嘘じゃ、ない?」 「嘘じゃ、ないよ。」 「じゃあ、夢?」 「夢でもないよ。だって、」 フラミンゴの頬に口づけを落とす。しばらくは何されたのかわからない、って顔してたけど、今は自覚したのか真っ赤になって、可愛いなぁ。 「あ、わ、わ」 「私、あったかいでしょ?」 「う、うん。」 フラミンゴがまだ真っ赤な顔を隠すように俯く。 「じゃあ、改めて。私は、フラミンゴーーーーーエマのことが好きです。こんな私でよければ付き合ってください。」 「っーーーーー!もちろん、ワタシ、フクロウーーーーー波瑠じゃなきゃやだ!こっちこそ、よろしくね。」 ちゃんと向かい合って、告白する。今度は言葉を濁したり、置き換えたりすることなく、はっきりと。 ぁあーーーーーーーー幸せだな、私。
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