言葉にできない悲観だけが降り積もって
言葉を知らない僕には憎しみというには優しくて、絶望というには深すぎる不明な感情
僕
お母さん
僕
お母さん
僕
今日はお母さんの機嫌が良い。良かった
お母さん
僕
お母さん
僕
机にはラップがかけられたオムレツが置いてあった
僕
冷たいけど、お母さんの愛情を感じ取れるから手作りオムレツは僕の好物だ
僕
お母さんの味に浸っていると「ただいま」という渋い声が玄関から聞こえてくる
僕
別に帰ってこなくても良いのに、と烏滸がましくも考えてしまう自分が嫌いになる
玄関から言い争う声が聞こえる
お母さん
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
お母さん
僕の名前を口論で出すのは辞めて欲しい。僕自身の存在意義を考えてしまうから
お父さん
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
目から溢れる液体は僕ですら分かりたくなかった
お母さん
お父さん
ガチャン!という扉の音とお父さんの声を聞く限りいつもの喧嘩は終わったらしい
僕
お父さん
僕
お父さん
僕
お父さん
僕
お父さんはお母さんのご飯を否定する嫌な所もあるけど、ご飯を全部くれる優しい人なんだ
僕は3人で住むには大きすぎる立派な家と大事な家族がいるんだ
僕
好きな子をいじるとはよく言うし、僕はクラスの愛され者に決まってる
僕はシアワセだ
まだ幸せが迎えに来ていないというのに、どうして僕はここにいるんだ
はやくかえらなくちゃ
僕
僕
堵恵
僕
堵恵
堵恵と言っただろうか
歳がある程度近くてこんなに優しくされるのは初めてかもしれない
僕
堵恵
堵恵
考え込むような動作をして唸っている
灯
堵恵
翠華
レパール
レパールが言ってる案が一番良いかもしれない
第一、想像つかないような理由ではないことが前提だけれども
渚央
堵恵
結月
翠華
結月という黒髪の少女が声を震わせながら上げた
結月
翠華
納得したような声を出した翠華の表情がどこか悲しげだったのは気の所為だろうか
結月
結月
結月が気まずそうに俯くが、僕はそれどころではなかった
灯
堵恵
渚央
僕
もしかして施設にいることが条件なのだろうか
灯
堵恵
翠華
レパール
話がじゃんじゃん進んでいくのを遠目で見つめていれば、時間の流れがほんの少しだけ早くなる
僕は笑うことしかできないから
僕
渚央
渚央
僕
突然かけられた声に驚愕する
堵恵
僕
少し声を強めて返事する。軽薄な笑顔だと思われたくはない
堵恵のサポートに心から感謝した
僕
僕
これで伝わっているのか、上手く発声できない声帯にどうしようもない嫌悪を抱える
レパール
レパール
僕
僕が伝えたいことを短く簡単にしてくれた。非常にありがたい
結月
翠華
翠華の顔は今すぐにでも散りそうな花くらい哀愁が漂っている
堵恵
渚央
灯
レパール
灯が苦手そうな考え事をしているが、トンチンカンな話にならないか心配だ
灯
灯
堵恵
失礼かもしれないが、アホの子だろうと予測できる灯がちゃんと真面目な事を言っている
明日は雪でも降るか?
翠華
翠華
目の前の少女の言葉を皮切りに、シアワセだった僕の過去が鮮やかに蘇る
家での日常は冒頭の通り
学校生活での僕はいじられキャラだった
クラスのトモダチ
いつも僕に元気そうに話しかけてくれるクラスメイトが、声を掛ける
僕
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
僕
クラスのトモダチ
次は女子が話しかけてくれた
あのネタは僕にとっては面白くないしやりたくはない。でも皆笑ってくれる
僕
女子でもやらなさそうな気持ち悪いポーズ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
自分の痴態が晒されるのは嫌だ。でも嫌われるのはもっと嫌だ…我慢しなければ
これが僕の役割なんだから
これが僕のシアワセな日常
立派な家とヤサシイ家族を持っていて、学校でトモダチと笑い合う日常
僕
そんな日常はある日崩れた
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
お父さんが大きく手を振りかぶって
僕
僕が割って入る
鈍い音と痛みが僕に襲いかかった
お母さん
お父さん
お母さん
僕
目に溜まった水が溢れでてもお父さんはおろか守ったお母さんすら心配してくれない
なんの為に、僕は
お母さん
お父さん
お母さん
お父さん
お父さんは大きな音を立てて部屋から出ていった
お母さん
僕
お母さん
僕
「大丈夫?」の一言が欲しいのに
お父さんが単身赴任に行って1週間もしないうちにお母さんが部屋を片付けた
次の日にはキャリーケースに大事な物を一通り詰め始めた
お母さん
僕
お母さん
お母さん
僕
お母さん
僕
お母さん
僕
僕は家に居れなくなった
シアワセな日常が崩れていく
結局学校も離れなくちゃいけなくなって
クラスに一時的な別れを告げる羽目になってしまった事が酷く悲しい
僕
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
僕
トモダチは僕のギャグを聞けなくて寂しそうなのが、僕の心を痛ませる
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
トモダチは僕の為にアドバイスまでしてくれるらしい。凄くイイヒト達だ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
そうやってアドバイスを受けてるうちにクラスメイトが集まってきて
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
クラスのトモダチ
僕は顔は良くても表情が駄目駄目らしい
アドバイスを受けているだけなのに、どうしてこんな辛いのだろう
やっぱり自分自身は思った以上に寂しく思ってるのだろうか
クラスのトモダチ
僕
僕は笑う
何かが壊れる音が心で響いた気がした
僕
堵恵
翠華
結月
分かってた。親は多分迎えに来ないことに
レパール
レパール
渚央
アダルトチルドレン
聞いたこともない単語が出てきて困惑する
僕
レパール
レパール
灯
レパール
レパール
翠華
レパール
レパールのいうアダルトチルドレンの特徴には、嫌と思う程心当たりがあった
堵恵
レパール
僕
翠華
渚央
灯
愛ってこんなに本当は暖かいのかな。僕の話を聞いてちゃんと考えてくれるのかな
僕
目から溢れる涙が止まらなかった
顔は氷のように変わらない
僕
でも今の方が感情を出せているような気がする
結月
灯
皆で抱きしめ合った瞬間にとても暖かで、ささやかな幸せを感じた
コメント
8件
待ってました!!!✨ 過去編入りましたね、、、! 零さんの過去、見ていてしんどくなりますね、、、文章でここまで生々しさを表現できるぬんさんは凄いですね!! こっから全員の過去見ていったら感情が不安定になっていきそうww 順番的に、うちの子は一番最後になるのかな!! 楽しみです!!✨ 投稿お疲れ様です!🍵次回も楽しみでーす!!
愛岐零さんの虐待・いじめ描写が妙に生々しくて、胸がギュッと締め付けられました、、、 顔が良くても表情が駄目って、、、それで表情が笑顔で固定に、、、 よその子がメインでも感情移入できる文章書けるって凄すぎますよ!! 灯がちゃんとアホの子になってて笑った後にこの鬱描写されて情緒がぐちゃぐちゃにされましたね 次回の過去編楽しみにしています!
基本的にネタバレ防止でコメントは書きませんが、過去編を書くにあたって私なりの書き方を説明します。 まず割と生々しくなると思います。こんなんでもリアルに書くことをモットーとしていますので。 今回メインの「愛岐零」という子ですが、参加者の子でして…かなりの捏造が入ってると思います。 虐待という境遇で、どのような虐待かは描写されていなかったので「気づかれにくい虐待」というものを描写しました。