この作品はいかがでしたか?
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◇
" 黒板消し子ちゃん "
◇
山本 智
山本 智
新竹 拓斗
いつものごとく
中庭で過ごす昼休み.
目の前で智が手を振って
不思議そうな顔をして見てた.
今、俺の機嫌は最悪だった.
原因はアイツ.
___ユウ.
さっきまでいた食堂での
会話を思い返していた.
いつも4人で集まっていた
俺らの中に最近では時々
ユウとユウのクラスの
友達だという女子3人も
加わるようになった.
ユウと一緒にお昼を
食べることができるのは
もちろん大歓迎だった.
さっきまではね……。
ユウはアイスコーヒーの
ストローが入っていた袋を
クルクルと指に巻きつけながら
嬉しそうに話し出した.
星野 ゆう
星野 ゆう
新竹 拓斗
俺ら4人は一斉に驚く.
だけどユウの友達は
驚いた様子もなく
ニコニコ笑っている.
彼女たちは同じクラスだし
既に知っていたんだろう.
新竹 拓斗
なるべく平静を装って尋ねる.
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
アイツか……。
以前、ユウと教室で
話していた男.
もう顔も思い出せないけど.
新竹 拓斗
新竹 拓斗
新竹 拓斗
平野というのは今は別の
高校に通っているが
俺らと同じ中学出身のヤツ.
ユウとは確か半年ほど前から
付き合っているはず.
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
あはっ……て.
あはっ……じゃねーだろっ.
俺らは頭を抱えた.
__またかよ.
ユウと俺は幼稚園の頃から
親同士も仲良くて
兄妹みたいに育った.
ずっと一緒にいたのに
不思議なぐらいお互い
意識し合うことはなかったんだ.
__中1の夏まではね.
中1の夏、ユウは俺の
2つ年上の兄貴と
付き合うことになった.
その橋渡しをしたのは
他でもない……オレ.
バカな俺はユウが兄貴の
彼女になって初めて
自分の気持ちに気づいた.
と同時に彼女が俺のことを
単なる幼馴染だとしか
感じていないということを
思い知らされたんだ.
ユウと兄貴は
半年ほど付き合ったと思う.
そして、それからユウは
男に絶やしたことがない.
いつも半年ぐらいで
すぐに別れるが、だいたい
その頃には別の男が現れる.
今回の浅野ってやつが
何番目の彼氏になるのか
俺にもよくわからない.
そんな事情をよく
知っている俺ら4人の間では
『ユウにだけは手を出すな.
痛い目にあうぞ』みたいな
空気が流れている.
だから、ユウも逆に俺らとは
友達として
付き合いやすいのだろう.
天使のようなルックスのユウは
とにかく男受けが良かったが
当然、中学時代は女子の間では
かなり評判が悪かった.
そんな事情が高校ではまだ
バレていないことを願う.
正直、ユウが女友達を
連れて来たとき俺はあいつに
友達ができたことに
ホッとしたぐらいだ.
ユウのことを悪く言うヤツは
たくさんいる.
でも、俺は知ってる.
アイツは別に男を手玉に
とってるわけではない.
恋愛ゲームを楽しむかのように
気をひいてサヨナラする
わけでもないし、ましてや
騙して貢がせるなんて
器用なことができる
ヤツじゃない.
いつも、どの恋も本気で相手を
好きになって付き合ってる.
まぁ……そのサイクルが
短いっつか惚れっぽいっつか.
新竹 拓斗
俺はため息を一つ
ついて言った.
新竹 拓斗
新竹 拓斗
新竹 拓斗
新竹 拓斗
精一杯の嫌味のつもりだった.
だけど、ユウは一瞬
キョトンとした顔をして……
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
星野 ゆう
全ての男を魅了するような
天使の笑顔でそう言った.
__ユウ……
お前は悪魔だよ.
日下部 健二
山本 智
さっきのユウの話など
俺以外のヤツは誰も
興味がないようだ.
みんな、いつも通りの
くだらない話で盛り上がっている.
でも俺の気分は沈んだまま.
どうしても腑に落ちない.
ユウとは10年以上の付き合いだ.
それなのに、再会してまだ
2ヶ月足らずのアイツに
もってかれるなんて.
くそっ……。
何やってんだろ.
告白する勇気も
持てないなんて.
__パン……パン……パンッ
その時、俺の沈んだ気分とは
対照的に能天気な音が
頭上で響いた.
なんの音か、なんとなく
想像つくけど.
ゆっくりとその音がする方を
見上げ、思わず
吹き出しそうになった.
女の子が窓から身を
乗り出して黒板消しを
パンパン叩いている.
しかも、かなり真剣な表情で…
ナゼ君はクリーナーを
使わない……。
今時、パンパン叩いてる
ヤツなんかおらんでっ.
真宮 桜音
ぷっ……
むせてるしっ……。
俺はもはや、彼女から目が
離せなくなってしまった.
すると、突然彼女が
こちらを向いてきた.
まさか、視線に気付いたか?
" 黒板消し子ちゃん"!
(勝手にあだ名をつけてみた)
彼女は俺と目が合うと
驚いたような表情をした.
そして……
真宮 桜音
という悲鳴とともに
黒板消しが落下した.
新竹 拓斗
堪えきれず、とうとう
声に出して笑ってしまった.
日下部 健二
皆が不思議そうに尋ねる…。
新竹 拓斗
誰にも気付かれないように
みんなの会話に入る.
横目で黒板消しの落ちた方を
盗み見しながら.
やがてかなり慌てた様子で
真っ赤な顔した
"消し子ちゃん"がやってきた.
彼女は黒板消しを
拾い上げると一目散に
逃げて行ってしまった.
新竹 拓斗
こっそりと一部始終を
見ていた俺は、たまらず
大声で爆笑してしまった.
山本 智
山本 智
智が眉を吊り上げて
不機嫌そうな顔つきで尋ねる.
新竹 拓斗
新竹 拓斗
この不可思議な光景を
誰にも言いたくなかった.
あまりにも面白すぎて.
気がつくと、さっきまで
落ち込んでいた気分は
すっかり晴れてしまっていた.
ありがと.
消し子ちゃん………プッ.
◇
その日以来、時々彼女は
窓辺に現れるようになった.
いつも黒板消しを
パンパン叩いて.
さらに言えばたまに黒板消しを
落としているのを
俺は見逃していなかったぜ.
♡きたら続き出します!! 読んでくれて📖 ありがとです!!☺︎ ぜひほかの作品も 見てみてください!!☃
コメント
1件
すれ違いで切ない系かなって思ったけどなんか凄い展開!!