コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
延々と続く向日葵畑の、真ん中を歩く一人の少女
風景が変わる気配はなく、人影もない
自分一人だという事実に少女は一抹の恐怖を覚え、
そして察する
少女
少女
思わず伏せていた顔を上げると、道の先に何かが見えた
少女
漫画のような屋根付きのバス停があった
少女
そっとベンチに腰掛ける
遠くで蝉の鳴き声が聞こえた
少女
極楽浄土は、もっと楽しいところだと思っていた
少女
彼女の言葉は路上に溶けた
もはやバスが来ることすらも疑って、
少女はしばらく俯いていた
それから、どのくらい経っただろうか
やや固めの足音が、かすかに聞こえてきた
少女は思わず身を乗り出した
足音の方を見ると、スーツ姿の男が立っていた
男
彼は安堵の表情を浮かべる
男
こつ、こつと無機質なローファーの足音を立てて、
ゆっくりと少女の元に近づいていく
少女
男が少女の隣に座る
男
男
名前を聞いたつもりだった少女は、目を見開いて固まってしまった男を前に戸惑う
少女
男
掠れた低い声が、微妙に震えている
男
少女
彼の一言に、少女も目を見開く
男
少女
当たり前のことが、出てこなかった
少女
男
ふう、と息をついて、男が背もたれに体重を預ける
男
少女
男
少女
沈黙が二人を包む
男
少女
男
男
再びの沈黙
少女の喉元を汗が伝う
ゆっくりと少女は口を開く
少女
少女
少女
無意識に両手を握り込む
男
少女
気まずそうな彼の一言を飲み込む
意図せず視線が泳ぐ
男
男の言葉に、少女は思わず彼の瞳を見つめる
透き通った焦げ茶色をしていた
男
柔らかく微笑む彼の言葉には、裏も表もなかった
頬が濡れる
男
少女
男
少女
思いもしない言葉に、男は腰を浮かす
少女
男
少女
言葉に引っ張られたように、男の両手が伸びてくる
ぽふ、と彼の胸に頭をつける
背に触れる彼の手が温かい
少女も彼の背に腕を回す
蝉が鳴いている