テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
3件
空さんの一人称が変わるのが… 苦しいよね…大事な人と会えなくなるって考えたら…神作品ありがとぉ
ああ…読み終わって、しばらく動けなかったよ。 「俺」と「僕」、一人称が切り替わるたびに、空くんの心の揺れが肌に刺さった。最後くらい自分でいたい、って願いが、あまりにも切なくて。 海兄ちゃんが「なんかあった?」と聞く場面、あの短いやりとりに兄の洞察と、弟の優しい嘘がぎゅっと詰まってた。 「綺麗だなぁ」が何度も反復されるのも、この世界への未練と諦念が同時に迫ってくるようで…。 最終話じゃないと願いたいけど、それでも、この一篇の完成度は本当に、見事だった。
俺たちはいつも平凡な日々を送っていた
兄ちゃんたちは喧嘩ばっかりしてたけど、兄弟仲は良い方だった
この日常が、ずっと続くと思ってた
続いてほしかった
陸
海
空
居間に響くのは、兄ちゃんたちの怒鳴り声だけ
あの戦争が始まってから、俺たちの日常は一変した
__いや、あの戦争が始まる前から、僕たちの日常は崩れていたのかもしれない
兄ちゃんたちのちょっとした喧嘩も、全部軍事的なものに変わっちゃったし
家族なのに、どこかよそよそしくて
空気も重くて
とても耐えられる環境ではなかった
ドンッドンッドンッ
戸が叩かれる無機質な音が聞こえてきた
よくあることだ。きっと軍事的なあれだろう
でも、俺は嫌な予感がした
ガラガラッ
兵士
兵士
空
俺の嫌な予感は当たった
_当たってしまった
空
俺がそう言うと、兵士は敬礼をしてから去っていった
俺は、しばらく動けなかった
召集令状_赤紙を、俺は静かに見下ろした
空
本当の気持ちなど言えるわけもなく、俺はただ、赤紙を握りしめていた
でも、ずっとそうしているわけにはいかない
俺は赤紙をポケットに突っ込んだ
そして居間に戻った
_いつも通りの僕を演じて
スーーー..
俺は静かに襖を開けた
でも、居間の中にいたのは_
空
海兄ちゃんだけだった
海兄ちゃんは刀を拭いていた手を止めて、チラリと俺に視線を向けた
海
それだけ言って、海兄ちゃんは刀に目を戻した
_けど、すぐに視線を俺に向けてきた
さっきとは違って、まっすぐと僕を見つめてきた
海
空
..やっぱり海兄ちゃんは鋭いなぁ...
_でも
空
俺は言わないよ
無駄な心配はかけたくないからね
海
そう言って、海兄ちゃんは刀に視線を戻した
空
...ごめんね、海兄ちゃん
時間はあっという間に過ぎていった
俺の人生は今日で終わり
空
まだ朝日は昇りきっていない
でも晴れている
秋の涼しい風が僕の頬を撫でる
...こんな麗らかな日に、自ら敵艦に突っ込むだなんて..
...そろそろ時間か..
早く行かないと
今の時間は午前6時
あと1時間経ったら、僕はあの空へ飛び立つ
空
僕は空に手を伸ばした
_わかっている
空に触れることはできない
触れることができたら...
..いや
触れられないからこそ綺麗なのか
兵士
空
兵士
空
もう時間か..
早く行こっと
相変わらず空は澄んでいて
容赦ない日差しが俺を襲った
_絶好の特攻日和だ
空
こんな時でも空は綺麗だ
明るくて、広くて、澄んでいて
終わりが見えない大きい空
_こんな綺麗な空で空戦が起こるだなんて..
空
正直、少し憂鬱だった
_でも
二人が_陸兄ちゃんと海兄ちゃんがどこかにいるって思うと
ちょっとだけ気分が良くなった
空
そう小さくつぶやいた
何に対してかは、自分でもよくわからなかった
しばらく空を飛んでいた
広い海に、ポツリと1隻の艦が浮かんでいるのが見えた
敵艦だ
この高さから急降下すれば、きっとあの艦は沈む
俺は操縦桿を握りしめた
_手が震えていた
それに気づいた瞬間、俺のなかで何かが音もなく切れた
死にたくない
死にたくない
まだ生きたい
兄ちゃん達と一緒にいたい
離れたくない
空
何考えてんだろ、俺
今更こんなこと思ったって
もう遅いのに
_でも
最後くらい
俺じゃなくて
僕でいたい
僕はもう一度操縦桿を握りしめ
敵艦めがけて、一気に急降下した
敵艦との距離が縮まる
空
視界がじわりと歪んだ
自分の頬が濡れていた
泣いたのはいつぶりだろうか
それすら思い出せない
やっぱり、この世界は
空
僕の機体は、敵艦にぶつかった
衝撃で、僕の体は海に投げ飛ばされた
僕には、世界がゆっくり流れているように見えた
目の前に広がるのは
広大な空
さっきまで近くに感じたのに
今はもう遠い
僕は空に手をかざした
..最後くらい、兄ちゃん達とこの空を見たかったなぁ
..あぁ...
空
その言葉を最後に
僕の視界は
暗転した
@メロン☆カンヒュ絵師
202
#旧国