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あくねこ 夢 雰囲気暗め

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あくねこ 夢 雰囲気暗め

27 - ルカス・トンプシー3

♥

9

2025年12月24日

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デビルズパレス

廊下

コツ…コツ……

2人分の足音が鳴り響く

その小さな小さな音が聞こえるくらい

深夜の屋敷は静まり返っていた

((……まるで

ラト

この世界にわたしと主様しかいないように感じます

…っ!

少し前をゆったりと歩く彼は

振り返らずにそう言った

……ラトってやっぱり不思議

ラト

くふふ

闇をまとった紅の長い三つ編みが

少し揺れる

なんだか、久しぶりだね

ラトとお話するの

ラト

………

ラト

そうですね

………

ごめん

あまり思い出したくないよね?

久しぶり、というのは

以前の満月の夜から、ということだった

ラト

いいえ

ラト

主様に救っていただき

ラト

それどころか手当までしていただきました

ラト

忘れたいなど

ラト

思ったことはありません

相変わらずラトは

歩調に合わせて長い三つ編みを揺らし

見えない表情と同じくらい一定のトーンで話続けた

((あのとき、

((あの夜のラトは

((喉が潰れるくらいの叫びをあげながら

((幼い子どものように怯えていた

ありがとう

でもフルーレやミヤジの助けがあってこそだったし

手当だってルカスのおかげが大きいよ

ラト

……

ラト

くふふ

ラト

主様はお優しいのですね

デビルズパレス

治療室

口止めされていたことも含め

ラトの付き添いは治療室の近くまでで お願いした

コンコン…

控えめなノックをするが返事はなく

私は恐る恐る

そっと治療室のドアを開けた

………

ツンと鼻を貫く消毒液の匂い

それに混ざった

よく分からない不快な匂いに

背筋が寒くなる

っ!

静まり返る室内には

白いシーツのベットに包まれたラムリと

そのベットのそばの椅子に座ったルカスの姿がいた

っ!!!

肩、腕

おびただしく巻かれた包帯にはところどころ赤黒いものが滲んでいる

ラムリ

…はぁ……はぁ………

小さな寝息とともに胸が上下する

………

その当たり前のことが苦しそうだった

ひっ……!

その時

ルカス

……主様……?

隣に座るルカスが突然手首を掴んだ

どうやらルカスは座ったまま寝落ちていたようで

まだぼんやりとした声をしていた

ごめん

起こしちゃって

ルカス

……どうしてここに

少し低い声で私を見上げるその顔に

いつもの笑顔はなかった

ごめん

すぐ出ていく

でも

ルカス

っ!

私はルカスの右頬を左手で包み

指で目の下のクマをなぞった

((ルカスが検診のときにしてくれる

((くすぐったくて好きな仕草

私がラムリを見てるから

もう少し寝てて

ルカス

できません

ルカス

主様にそのような……

((……驚いた顔

私はルカスから手を離して

近くから背もたれ付きの椅子をルカスの近くへ持ってきた

ルカス

主様…

私はその椅子に座り

隣のルカスを少し見上げる

((……ちょっと怒ってる顔

私はそのまま

羽織っていたブランケットをルカスの肩へかけた

ルカス

なっ……

さっき頬が冷たかったから

ルカス

これでは主様が風邪をひいてしまいます!

ルカス

わたしは大丈夫ですから

ルカス

主様はお部屋にお戻りください

いつもの気品高い笑みはなくて

………

そこには

私が感じ取れてしまうくらいの

怖いね

仲間が傷だらけなのって

ルカス

っ!

底知れぬ恐怖

でもありがとう

ラムリを助けてくれて

ラムリも命がけで戦ってくれて

ありがとう

かすかに血液のような鉄っぽい匂いがする

ルカス

……ありがとうございます

少しか細い声が聞こえて

っ!

大きな手が私の手に重ねられた

ルカス

申し訳ございません

ルカス

少し、少しだけ

ルカス

お許しください

肩にそっと乗せられた少しの重み

頬をくすぐるやわらかな

紅い髪と

いつもより近くで耳を撫でる声

ルカス

主様……

心臓の音が全身に響く

うん

いいよいくらでも

いつも見上げるばかりのあなたが

今日は

なんだか少し幼く感じる

いつも助けてくれてありがとう

ルカス

………

返事の代わりなのか

手にまだ残る小さな震えを隠すためなのか

少しぎゅっと

ルカスが私の手を強く握る

ドクン…ドクン……

((ありがとう…か

私は

改めてラムリに視線を落とす

((全身は見えないけど

((本当にひどい傷……

いつも人懐っこい笑顔と弾んだ声で

私を呼ぶラムリの面影はまるでなかった

ドクン……ドクン……

((あらゆる交渉役を任せられるほどの冷静さと感情を押し殺す術を持ったルカスでも

仲間の死には抗えない

((医者である以上

((自分の力不足で命を取りこぼしたとき

その時の恐怖はどれくらいのものだろう

ドクン……ドクン……

ルカスとラムリの寝息に耳を傾けながら

私は流れ込んでくる 大きな温もりとともに

夜が明けるのを待った

……ごめんね

デビルズパレス

主の部屋

……

目が覚めて

一番に飛び込んできたのは

紅い、髪だった

………

ラト

ラト

おはようございます

ラト

主様

うん

全身が鉛のように思い

今までどうやって力を入れて動かしていたのか不思議な感じがした

私、どうなった?

ラト

右脚の骨折と全身打撲、軽い擦り傷がいくつか

ラト

だそうです

そう

((やっぱり階段から落ちたくらいだとそんなものか

………

ラト

私が以前……

ラト

満月の夜に暴走してしまったとき

ラト

あまり記憶がなかったのです

ラト

ただ、漠然とした大きな恐怖だけが残っていました

ラト…?

ラト

でも……

ラト

でも、なぜでしょうか

ラト

あなただけは、怖くなかったのです

ラト

こんな私に触れてくださる手が温かくて

ラト

包帯を巻いてくださる手が優しくて

………

青い瞳が細く笑う

ラト

……それが

ラト

主様にとってはあの方、なのですね

なんだか

やっと彼の顔を見たような気がした

………

ねぇ、ラト

私、元の世界でこんなに大事にされたことなかった

親も学校の人たちも私をゴミみたいに扱ってたんだよ

私はみんなと同じになれない

殴られたり傷つけられることはあったけど

傷に薬を塗ってもらって

熱が出たら看病してくれて

ずっと味方だって

優しく言ってくれる人なんか…いなかったんだよ

全部、ルカスが初めてだった

ラト

………

私は人と関わることがあまり得意じゃないから

こんなことしかできなかった

ルカスが嫌がることをするっていう案しかでてこない

((絶対に抗えない仲間の死の恐怖

((それの恐怖を前にして幼い子供のように震えていたあの手を

((私のものにしたいと思ってしまった

((医者にとって、自傷行為とはどれくらい嫌悪するものだろうか

だって強い怒りとか嫌悪感ってずっと胸の中にこびりついて離れないし

そんな邪魔者でもいいから

私はあなたの中にいたい

思い出せば虫唾が走るような最悪な感情で

あなたの頭をいっぱいにして

心をかき乱して

傷だらけにして

そんな風にあなたの中に居座っている

忘れられない存在でありたい

私だけを見て欲しい

でも

でも

ここにラトがいることが

ルカスの答え

ラト

あなたはラムリさんとご自分を天秤にかけて

ラト

ルカスさんに突きつけたのですね

そうだね……

……ごめんね、ラト

私は大丈夫だから

少し1人にしてほしい

ラト

………

私とラトって似てる感じがした

なんとなく

だから

全部話したけど

自覚しなきゃね

私はあなたよりもとても醜いんだって

ラト

………

ラト

私はあの夜

ラト

優しくてあたたかいあなた様に改めて忠誠を誓いました

ラト

悪魔執事の忠誠は

ラト

違えることを許しません

ラト

何があっても

…でも

ラト

そうでしょう?

ラト

ルカスさん

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