桃音
“死刑囚更生施設”っていうのはね、死刑囚に罪の意識を再確認させて、反省してもらう施設なんだ
桃音
そこで私と涙ちゃんは死刑囚が反省してるかどうかを観察するっていう仕事をしているって訳さ
彼岸
死刑囚に反省させるって言うけどさ...結局は死んじゃうんでしょ?☆
彼岸
それって意味あるの?☆
桃音
意味があるかないかを決めるのは、研究者や国でもなく、被害者の遺族だよ
桃音
でも殺したことを悪いことだと思わずに死んでいくのなんて、遺族の方々が可哀想でしょ
桃音
だから私達は遺族の方々の思いを汲み取ってこの研究をしているんだよ
茜
具体的な研究内容は?
桃音
それは守秘義務があるからアカネンにでも言えないよ‼︎
桃音
でも...そうだねー...
桃音
強いて言うとすれば
桃音
桃音
“善悪の分別”ができるような研究かなー
茜
まあ、大事なことではあるな
雀
あ、あの...‼︎
桃音
んー?
雀
さっき六道先生が言ってた“人殺し”っていうのは一体どういうことなんですか?
桃音
ああ、そういえばそれがメインだったね
桃音
残念ながら私は涙ちゃんの言うような人殺しじゃないかな
桃音
でも結果的には人殺しみたいになっちゃったね
涙
嘘だ‼︎あなたが“あんなこと”を言わなければ...‼︎
涙
鵠沼(くげぬま)をめちゃくちゃにしたのはあなたのせいだ‼︎
瑠流
“あんなこと”...?
雀
鵠沼...?
桃音
酷いなー、あれは状況がそうさせたんだよ?
桃音
今までのようにただ死刑囚の様子を観察していれば良いのに、勝手に“私情”を持ち込むからそうなるんだよ
遊
あのー、さっきから内輪揉めしてますけど...こっちには全然伝わってこないんですけど...
桃音
ああ、ごめんごめん
桃音
で、何だっけ?私が人殺しって言われる理由だっけ?
桃音
守秘義務だからあんまり詳しく言えないけど、簡単に言えば私の質問攻めで死刑囚を追い詰めちゃったって話
桃音
その様子を見ていた涙ちゃんが酷いって思った結果そうなったのかなー...
遊
ちなみにその死刑囚は罪の意識を感じることはできたんですか?
桃音
うん、その点に関しては大丈夫だよ
桃音
何か涙ちゃんって私のこと色々酷いこと言ってるけどさ...
桃音
それって“自分の目的”に邪魔だからなんじゃないの?
茜
“目的”...確か“シャーデンフロイデ”だったか?
涙
っ⁉︎
瑠流
しゃーで...何て?
刹那
“シャーデンフロイデ”...簡単に言えば他人の不幸を見て喜ぶ人間のことです
瑠流
じゃあ、誰かの不幸を見たいと思ってるってことですか?
涙
違う‼︎そんなことはない‼︎
桃音
うん、涙ちゃんの言うとおりだよ
雀
え、でもシャーデンフロイデらしいんですよね?当たってるじゃないですか
桃音
それは人の不幸でしょ?涙ちゃんの場合、それを超えたもの...つまり、人の死を見たいんだよ
遊
人の...死?
刹那
まとめると、涙様は人の死を見たいために桃音を貶し、その目的のためにこの死研の顧問になったということです
涙
貴様...裏切ったなぁぁッ‼︎
刹那
裏切った?何を言っているのでしょうか?元々そういうお話だったではありませんか
彼岸
ん?何の話?☆
刹那
話が逸れて申し訳ございませんが、私と涙様は以前のいじめの件を解決に導くため、協力関係にあったのです
茜
ちなみに、どんな関係なんだ?
刹那
私が獲得した加害者の情報を彼女に伝え、それを瑠流様を含めた御学友の方々に広めていただくといったものです
彼岸
何で直接じゃないの?☆
刹那
私は瑠流様のご判断でこの件に関わることを一切禁止されておりました
刹那
その時に偶然彼女と出会い、お互いに条件を呑んで協力をすることになったのです
涙
あの時、貴様は条件を呑んでくれるって...
刹那
そうでしょうか?では再生してみましょう
すると彼女はポケットから
小型のボイスレコーダーを
取り出し再生ボタンを押した。
刹那
《ならば私からも協力する上での条件を提示したい》
刹那
《聞くだけならタダですし、何でも仰ってください》
刹那
《じゃあ...》
刹那
刹那
《死研の誰かの死が見られる手伝いをしてほしい》
刹那
《...理由を聞いても?》
刹那
《私の幸せのためだ》
刹那
《あなた...それでも“教師”ですか?》
刹那
《何だっていいだろう》
刹那
《では、ご協力よろしくお願いします》
刹那
《ああ、こちらこそよろしくな。良い関係を築こうじゃないか》
刹那
...ご理解いただけましたでしょうか?
涙
....
桃音
あちゃー...こりゃ刹那の悪いところ出たね
茜
悪いところ?
桃音
まず何でもすぐに録音することと、「聞くだけならタダ」と言って承諾するとは言ってないことだよ
遊
あー、すぐに録音するのは本当にやめてほしい...
茜
被害者は語るってやつだな
刹那
《あー、すぐに録音するのは本当にやめてほしい...》
遊
それそれ‼︎
雀
まさかずっと録音し続けてるんですか...?
刹那
ずっとはしていませんよ、偶然の産物です
桃音
さてと...何か反論はある?
涙
....
桃音
おや?黙ってしまった
瑠流
最低...信じられない...
瑠流
私に色々黙ってた刹那も死を見たいって思ってる六道先生も...そんなの...
雀
ちょっ、瑠流⁉︎
そんな彼女を追いかけに
1人の女子生徒も
教室を後にした。
桃音
ありゃりゃ...少しやり過ぎちゃったかな...
刹那
大丈夫です、慣れています
桃音
刹那ちゃんも大変だねー
刹那
そんなことより、どうするのですか?とてもメイド喫茶を続けられそうな雰囲気ではなくなってしまいましたが...
桃音
んー...明らかに原因は私だね
桃音
じゃあ後日お詫びの品を持ってくるから今日はお暇するね
桃音
今日はごめんね‼︎それじゃあ‼︎
そう言い残すと彼女は
逃げるようにその場を後にした。
彼岸
んー...どうしよっか...☆
遊
取り敢えず、今から再開しようという気は起きないですね...
刹那
しかし、文化祭が終わるまであと3時間以上ありますね...
彼岸
あっ‼︎☆じゃあこうしようよ‼︎☆
彼岸
あーしと刹那ちゃんでメイド喫茶を運営するから、遊ちゃんと茜ちゃんは別のところ行って楽しんでおいでよ☆
茜
いや、でも2人で運営するのは流石に...
彼岸
大丈夫だよ☆だってあーし達は瑠流ちゃんの元メイドだよ?☆
刹那
私は現職ですが...
彼岸
だから不可能はない‼︎☆...多分?☆
遊
ではお言葉に甘えてお願いします
彼岸
おう‼︎☆任せとけぃ‼︎☆
そして私達は彼女らを見送ると
メイド喫茶の運営を再開した。
文化祭は大いに盛り上がり
2日目も大成功で幕を閉じた。
そして蛇ヶ崎 茜が倒れたと
聞いたのはその後の
出来事だった。