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少女

ん?……

少女

ここは、どこ?

一面真っ暗で何も見えない

人の気配もないし、音も空気の流れもない。

あらゆる刺激が遮断された不思議な空間

少女

わたし、なんでこんなところに

声がトンネルの中のような響き方をする

だがどこにも壁は見当たらない

感じるのは地面の冷たさだけ

少女

誰か、いませんか?

誰か、いませんかー…………

少女

少女

います!

います…………

少女

(なんだ、やまびこか)

それから何時間経っただろう

ここには時間という概念もないからよくわからない

自分の体が本当にあるのかだってよくわからない

…………

…………

…………

少女

少女

ひゃっ

何かが私の手首を掴んだ

すごく冷たい、氷のような物体だ

少女

なんですか?
誰かいるんですか?

少年

誰だ!!!!

少女

そ、それはこちらのセリフですが

大声がすぐそこで聞こえて、 ようやくあれが人の手だったことに気がつく

距離は近いはずだが相手の顔は全く見えない

まるでその少年が闇の一部であるかのように わたしは感じた

少年

いつから、ここにいる

少女

数時間前ですが……

少女

あなたはいつから

少年

わからない

少年

10年近くここにいる

少年

それ以上かもしれない

少女

ここは、一体どこなんですか

少年

わからない

少女

あなたは一体、何者ですか

少年

わからない

少女

わからないって……

少年

じゃああなたは何者だ

少女

わからないです……

少年

そうだろう?

少年

ここに来ると気が狂って何も思い出せなくなってしまうんだ

少女

ほかのひとたちも?

少年

ほかの人なんて見たことないからわからないな

少女

ここにいるのは、わたしたちだけってこと?

少年

理解がいいね

少女

この状況あなたが仕組んだの?

少年

そうじゃないよ

少年

意図してそんなことができるだけの力があるなら

少年

普通ここを出ることを最優先に考えるだろう?

少年

それに俺は君のことをよく知らない

少年

よく知らない人間を自分の世界に連れてきたいとは思わないだろう?

少女

なんだか、ごめんなさい

少年

別に構わない

少年

むしろ少し心強い、誰かがいてくれると

少女

わたしもそう思っていたところよ

不思議な語り口の少年だった

性格や語彙が捻くれているところに どこか好感と親近感が宿る

少女

早いところここを脱出しましょう

少年

それは無理だ

少女

なぜ

少年

十年余りここに閉じ込められている人間がいるんだ

少年

ここからそう簡単に出られるわけないだろう

少女

でも頑張ればできるかもしれない

少女

これまでと状況が違うはずよ

少女

ここにいるのはあなた一人じゃない

少年

知ったような口を叩くね、
初対面の人間に

少女

知っているような気がするの、初対面だけれど

嘘はなかった。

彼が男でなく「少年」だとわかる時点で、 わたしの中に記憶の断片が宿っている。

少年

ひとまず、君が満足するまで一緒に足掻いてみようか

少女

ええ、諦めるのは一旦足掻いてからにしたいわ

少年

少年

少し着いてきて

少年

ここの暗闇の中で、唯一明るい場所があるんだ

光は少し温かさを含んでいた

太陽のような温かく穏やかな光。

少女

ここは?

少年

さあ

少年

ずっと考え続けているんだけれどわからないんだ

少女

いつもは、ここにいるの?
明るいし、すごく綺麗だわ

少年

ううん、いつもここにだけは来ないようにしてる

少年

無駄な希望を与えられるよりは、絶望の中でぼうっとしている方が楽だろう

少年

惰性で過ごすにはここは悪くない環境なんだ

少年

雑音もないし、痛みもないし、誰もいないし、衣食住も気にかけなくっていい

少年

自分と他人を比べることもしなくていいし毎日の生活のことだって考えなくていい

少年

幸せなんだ、
この闇の中が一番

少年

君もいずれそうなるよ

少女

こんなところにいるのは
しあわせじゃないわ

少女

わたしは必ずここを出るわ、
あなたも連れて

少年

それは、心強い

少年

でもここを出る気はないよ

少年

ここを出たらみんなが俺を
鬱陶しがる

少年

永遠に闇の中にいてほしい存在だと思われてるのさ

少女

わたしはそんなことないわ

少年

何を根拠に

少女

根拠なんていらないわ

少年

世の中そんな人間ばかりじゃないだろ

少女

そんな人間ばかりよ

少年

そんな人間ばかりの世の中でどうして戦争が起こるの

少年

どうして人と人が憎み合うの

少年

生半可な希望、与えないでほしい

少年

それじゃまるでこの光とおんなじだ

少年

分かり合えると思ったのに

少女

分かり合えないわ、違う人間同士だもの

少女

でも少し付き合ってちょうだい

少女

ここを出るために、一緒に足掻いてほしいわ

少年

構わないよ

少女

ほんとうにいいの

少女

わたしが鬱陶しくないの

少年

それだけの希望を持っているうちに

少年

この闇から這い出てほしいからね

少年

全ての希望を失う前に、綺麗なものを掴んでほしい

少年

だから、協力するよ

少女

ありがとう

少女

もし気が変わったら、ここを一緒に出ましょう

ここから出られる希望などなかった

それでも、わたしは信じ続ける

惰性のなかにある幸せは偽りだということ、

本当の幸せを少年と 共に掴むことができるということ

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