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蛇と人形　下

第1話 - 蛇と人形　下

2018年04月23日

#ホラー

白鯨

田中

っ…

田中

またハズレか…

田中

これで何日目だ…

田中

あの人形を持ち帰ってから誰も俺を分かってくれない…

田中

家族も、友達も…

田中

…ただ、あいつだけは俺に気づいたみたいだったな…

田中

思わず逃げてきちゃったけど、あいつに助けを求めればよかった…

田中

腹減ったなぁ…

沙羅

よぉ、若いの

田中

えっ…？

田中

だ、誰だ？

花菜

こんにちは、田中君

田中

え…？

田中

あ、蒼井か…？

花菜

うん、大丈夫？田中君…

沙羅

腹を空かせて辛かったろう

沙羅

これを食うといい

田中

！おにぎり…！

沙羅

遠慮するな、毒など入っとらん

沙羅

ただの塩むすびよ

田中

っ…！

沙羅

おいおい、気持ちは分かるがそうがっつくな

沙羅

ほれ、冷たい茶もあるぞ

沙羅

今日は暑いからの

田中

っ…ありがとう、ありがとう…！

沙羅

ははは、遠慮せず好きなだけ食え

田中

っああ…

田中

美味い、美味いよ…！

花菜

…ゆっくり食べてね

沙羅

ああ、落ち着いたら話をしよう

数分後

田中

っはぁ…

田中

ありがとう、生き返ったよ

沙羅

そうかそうか…

花菜

よかった…

花菜

ねぇ田中君、一体何があったの？

田中

っ…

田中

あの、人形だよ…

田中

廃墟からあの人形を持ち帰ってから家族や友達が俺を認識しなくなった

田中

皆が皆、まるで俺なんか最初からいなかったみたいに振る舞うんだ

田中

前会ったあいつは、蒼井達と同じように俺を認識してくれたけどな

花菜

あいつって…同級生の事だね

田中

ああ…

田中

どうしよう…持ってる金も底をついたし

田中

俺はこのままじゃ一生ホームレスだ…！

沙羅

…そうじゃな、“このままでは”そうなるな

田中

えっ…？

沙羅

今すぐお前の家へ案内してくれ

沙羅

早くせんと間に合わなくなる

田中

あ、ああ…！

30分後、田中宅にて

田中の母

ヨシキ、ご飯よ

田中の父

いっぱい食えよ

???

ああ、ありがとう、お父さん、お母さん

田中

ああ…やっぱりだ…

田中

やっぱりあいつを俺だと思ってやがる

沙羅

ほほぉ、やはりそうであったか

花菜

え…？

花菜

何、あれ…

花菜

田中君がもう一人いる…

沙羅

正確には人形じゃよ

田中

ああ、そうだ…

田中

あの人形を拾ってから家族も何も皆人形を俺だと思ってる

田中

一体どうして…

沙羅

…拾ってはいけないものを拾ったの、若いの

田中

え？

沙羅

さて、そろそろ親御にネタばらしと行こうかの

沙羅

あ奴に現実を教えてやろう

沙羅

邪魔するぞ～

花菜

えっちょっ…沙羅！

花菜

さぁ、田中君も行こう

田中

ああ…！

田中の母

だ、誰ですか？

田中の父

不法侵入か⁉

沙羅

まぁそう慌てるな

沙羅

儂らはそこの“息子”に用があるんじゃよ

田中の母

えっ…よ、ヨシキにですか？

沙羅

ああ

沙羅

お前は何故か分かるよな、“息子”とやら

???

！っな、何だよあんた…

???

その気配は何なんだよ？

沙羅

だからそう慌てるなと言うたじゃろう？

沙羅

ほれ、そろそろ入ってこい、若いの

田中

あ、ああ…

田中の母

！あんたはこないだの…

田中の父

この浮浪者め、また来たのか！

沙羅

こらこら、そう目くじらを立てるな

沙羅

何を隠そう、此奴こそがお主らの息子じゃよ

田中の母

えっ…？

田中の父

あんたまで一緒になって何を…！

沙羅

まぁまぁ

沙羅

今一度、此奴とそこに座っとる其奴を見比べてみろ

沙羅

其奴は真にお主らの息子か？

沙羅

儂にはどうにも、藁人形にしか見えんでな

???

！っ…

沙羅

ほれ、若いの、お前も言うてやれ

田中

ああ…

田中

間違いない、お前は誰が見ても人形だ

田中

廃墟で拾った藁人形だ‼

???

‼っ…

???

な、何でそんな事言うんだよ、俺は人間だ、間違いなく人間なんだぞ‼

花菜

！…姿が…藁人形になってる…！

沙羅

ほぉ、ようやっと正体を表したか

沙羅

その姿…お前“ヒトガタ”じゃな？

田中の母

！きゃあぁっ！

田中の父

！うわぁっ、何だお前…！

沙羅

ようやっと正気に戻ったか

沙羅

お主らは危ないゆえ下がっておれ

沙羅

後は儂らに任せろ

田中の父

あ、ああ…！

沙羅

…さて、若いの

沙羅

奴を追い出すにはもう少しやらねばならん事がある

沙羅

お焚き上げで焼き払う事じゃ

田中

えっ…

花菜

…田中君、“ヒトガタ”はそもそも“身代わり”なの

花菜

役目を終えればお焚き上げで焼き払われるんだけど、

花菜

その役目を終えた直後のやつを拾ってきちゃったみたいだね…

沙羅

結果、捨てられたくないが為に身代わりとして入れ替わってしまったんじゃな

沙羅

これはお前が悪戯に拾うからぞ

田中

…

沙羅

火はこちらで用意してやる

沙羅

お前の手で責任持って焼き払うがいい

田中

…分かった

???

嫌だ、嫌だ‼

???

俺は人間なんだ、焼き払われるなんて嫌だ‼

花菜

田中君、少し庭先を借りるね

田中

ああ

???

よせ、やめろ‼

田中

お前は藁人形だ、人間なんかじゃない

田中

拾ってきて悪かったな

田中

今元通りにしてやるからな

???

な、何を今更…

田中

ごめんな

???

嫌だ、嫌…

???

あああああぁあっ‼

沙羅

…よし、ようやっと人形に戻ったか

沙羅

あとはこのまま灰にして天へ返してやろう

田中

ああ、ありがとう

数日後

花菜

田中君も学校に戻れたし

花菜

元通りの生活に戻れたけど…

沙羅

何じゃ？

沙羅

納得いかんか

花菜

…何かあのヒトガタ…

花菜

可哀想だなって思ってさ…

沙羅

…人の身代わりとして役目を終えた後

沙羅

あの廃墟で捨てられておった訳じゃからの

花菜

うん…

花菜

でも人間の身代わりとして使われるうちにさ、

花菜

感情が芽生えて、人間として生きたくなっちゃったのかなって…

花菜

そう思ってさ…

沙羅

うむ、確かにあり得ん事ではないし気持ちは分かるぞ

沙羅

だが…悲しいかな、それが定めじゃ

沙羅

花菜、辛いかもしれんがあまりそういうのに同情を抱くなよ

沙羅

魅入られてしまうぞ

花菜

…分かってる

沙羅

…そうか

沙羅

どれ、儂は一眠りしようかの

沙羅

何かあったら起こしてくれ

花菜

うん

睦月

不在着信

花菜

あれ、睦月から電話だ…

花菜

！また心霊スポットかな、嫌な予感がする…

花菜

もしもし？

睦月

あっもしもし花菜⁉

睦月

大変なの、助けて‼

花菜

え？

花菜

どうしたの？

睦月

大変なの、今すぐ来て‼

睦月

吉野君が、吉野君が…！

吉野

jづrはて

花菜

吉野君⁉

睦月

意識がないの、今すぐ橋に来て‼

睦月

お願い‼

花菜

わ、分かった！

花菜

すぐ行くから待ってて！

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