アンナ
まり、聞いてよ

マリ
ん?

アンナ
あの噂、聞いた?

アンナ
真夜中の12時に、東駅のホームに立つと、線路の上に影が現れて、連れ去られるっていうやつ

マリ
あー、聞いた聞いた。変な噂だね

アンナ
でも実際に、うちの学校で連れ去られた人いるらしいよ

マリ
誰?

アンナ
さあ知らない。一年じゃないの

アンナ
ま、もう二年のうちらには関係ない話でしょ

マリ
そうだね。元々は一年の女子が噂し始めたらしいし

アンナ
女子なんて話を盛り上げるために嘘の情報流すもんだよね

マリ
我ながらそうだねwww

アンナ
でもマリ、東駅の近く帰り通るんじゃなかった?

マリ
いやあれは遠回りで、ただあの道中にめっちゃ上手いたこ焼き屋があるだけなんだよね。しかも、ホームに立たなきゃいいんでしょ

アンナ
確かにそれはそうかも。東駅なんてあんま有名じゃないからね。

アンナ
そんな真夜中にホームに立つわけないか笑

マリ
そうだよ笑もっと上手い噂流せよって感じだわ

アンナ
ホント笑

アンナ
まあじゃあ、私もうピアノ行くから

マリ
うん、じゃ

お母さん
あんな、ちょっと頼みがあるの

アンナ
ん?何?今もう、11時半になるけど…

お母さん
東駅知ってるでしょ?

お母さん
アンナ聞いてる?

お母さん
どうしたの?聞いてる?

アンナ

アンナ
うん

アンナ
それがどうしたの

お母さん
ちゃんと聞いててよ

お母さん
そこのすぐ隣のお店にちょっといい物があって

お母さん
あとでお金は払うからちょっと買って欲しいの。24時間営業だから

アンナ
うん…いいけど

お母さん
ごめんなさいね。可愛い花柄のコップと、紺色の布みたいなやつで

アンナ
なんでそんなのが欲しいの?

お母さん
仕事で必要なのよ。ともかく、今帰り途中でしょ。寄り道してくれない?

いや、そういえばちょうど昨日、お母さんが一万円札を財布に足してくれたばかりだった。
無理だ…スマホの充電がなくなったと言っても、もう頼まれてしまったからまさか頼みを聞けなかったなんて言えない。
あんなの…嘘だよね。そうよ、あんなの噂よ。何怯えてんのよ…駅に入らなきゃいいのよ。
お母さん
あんな?さっきから返信遅いわよ

お母さん
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不在着信

お母さん
あんな!何かあったのー?

アンナ
ううん大丈夫。

アンナ
そのお店が分からなくって調べてた

お母さん
心配したわよ。大丈夫?頼んだわよ

アンナ
うん

アンナ
マリー驚きの事実があります

マリ
なんじゃいな

アンナ
東駅の近く…いや、真隣のお店に

アンナ
おつかいに行って来いってお母さんに言われた

マリ
わお。でも、駅内にあるとかじゃないんでしょ?

アンナ
うん、隣にあるだけ

マリ
てか、こんな夜中にお母さんも行かせるかよ笑

アンナ
明日、仕事に朝早くから行くんだけど、どうしても必要なんじゃないの

マリ
まあ…それならわからんくもないけど。とりま、気をつけて。まあ単なる噂には過ぎないけど笑

マリ
もしそれがホントだとしても、影の正体はわかんないもんね。銅像とかかもしれないし

アンナ
それは確かにそうだな笑

アンナ
とりあえず…着いたらラインする!

マリ
了解!まだ寝るつもりないし、ライン待ちしとく!笑

アンナ
うん

マリ
ねえ、真夜中ってさ…12時とかだよね?

アンナ
うん多分…

マリ
今、11時52分。な、なんかイヤーな時間だね…

マリ
あんなも断ればよかったのに

アンナ
いや、言い訳がなくて。それに急ぎみたいだったし

マリ
でも、東駅まで電車で行ったわけじゃないでしょ?

アンナ
うん、東駅の一個前で降りて歩いた

マリ
店は見つかった?

アンナ
うん、今店内なう

アンナ


マリ
でか!品揃えもいいんだね!東駅見直したわ

アンナ
うん、それな。ていうか、もう55分じゃん!早くしないと!

マリ
やばっ、邪魔したね、ごめん。

アンナ
いや、いいよ。大体の物の位置は見当つく

アンナ
あ、コップ、あった

マリ
その調子!今…56分

アンナ
やばいなー。布が見つかんない!

マリ
まだ見つかんない!?もう、58分!

アンナ
あーっ、あった!

マリ
そのままレジへレッツラゴー!

アンナ
支払いしてる…あーカードでお支払いとかもうどうでもいいじゃん

マリ
笑

マリ
いや、笑える状況じゃないな…

マリ
う、59分だ!

アンナ
終わった!帰る!

マリ
12時!

アンナ
あっ…あ…

マリ
見ちゃダメだよ!

マリ
線路の上を見ちゃダメ!

アンナ
い、いや…、もう…私…ダメ

マリ
見たの!?

アンナ
影…影が来る…

アンナ
やつが…来る!

アンナ
助けてマリ!いやっ、早く!

マリ
影…見ちゃったのね!?

アンナ
足が…速い…影からは逃げられない…

マリ
走るのよ!前に!電車に乗れば安全よ!

アンナ
いや、もう…無理だよ

アンナ
影、ぺちゃんこになれるんだ

マリ
え?

アンナ
あいつ…ぺちゃんこになって、細すぎる近道を通って先回りしようとしてる

マリ
え…ええ…逆に逃げられないの!?

アンナ
無理…影はたくさんいる。線路の上にはまだまだたくさんいた

アンナ
戻ったらもっと危ないよ挟み撃ちにされちゃう

アンナ
ああ!足が…もつれ…

マリ
走って!私、迎えに行く!

アンナ
ダメだよ、マリまで死ぬよ!

マリ
いいよ、行く!私の方が近いよ!

アンナ
あ、あああ…

マリ
無理に打たないでいい!連絡が取れなくなったら困るから充電とっておいて!

アンナ
速いよ、あいつ…

マリ
あんた長距離走得意でしょ!しかもリレー選なんだから!

アンナ
だって…あいつには体力なんてないもん…

マリ
いいから逃げてて!今電車乗ったところ!

マリ
アンナ!着いたよ!

アンナ
今んとこ…まだ逃げてる…

マリ
結構逃げれてるっぽいから、東駅のだいぶ前で降りて見たけど…

アンナ
西駅見えてきた…

マリ
ホントに!?私も西駅にいるよ!

アンナ
会えるね…

マリ
でもあってどうしよっか…あ、アンナが見える!

アンナ
うっ、も、もう…むり…胸と足が…

マリ
アンナ!

アンナはその場にぐにゃりと倒れた。すぐ後ろを走っていた影が、捕まえて食べる。
逃げなきゃ!と、マリは逃げ出した。影がその音に顔を上げる。
思わず振り向くと、すぐ後ろに影はいた。影は耳元でこう囁いた。
たとえホームじゃなくとも俺を見たものは殺される……そんな噂を聞かなかったのかい。さあ、食べさせてもらおうか
ぐみファン
この物語はフィクションであり、実在する人物とは一切関係ありません。
