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ベッドの割当が無事(?)に決まったので、みんなで晩ご飯を食べに食堂に来た。

アミキティア魔法学校は魔法使いを育成する学校だけに、食堂のシステムもクセが強かった。

券売機で食券を選んで配膳カウンターで交換してもらうシステムなんだけど、券売機のボタンは1つしかない。

頭の中で食べたい料理をイメージしながらボタンを押せば、その料理の食券が出てくる仕組みになっている。

これも魔法を使うためのイメージ力を養う訓練の一環らしい。

食堂にかぎらず、学校内の施設のほとんどは、クラスによる制限こそあるけど無料で使える。

つまり、上手くイメージを作ることができれば、毎食自分が食べたい物を好きなだけ食べることができるということだ。

アルク

そう都合よく行くとは思わないほうがいいわよー

券売機の列に並ぶところで、ちょうどアルク達と合流したのでいっしょに並ぶ

ユウゴ

そうかな?
料理のイメージって、そんなに難しいと思わないけど

アルク

お手本を見ないで料理の絵を描くって考えてみなよ。
簡単にできる?

ユウゴ

それは出来ないけど

でも、絵を描くのと違って、頭の中でイメージするだけなら、とも思う。

アルク

欲張らないで、はじめのうちは簡単にイメージできるシンプルな料理を選ぶことをおすすめするわ

並んでいた券売機があいたので、シシロウから発券を始める。

シシロウ

アルクくんの言うことも一理ある。

シシロウ

今日はシンプルに、スパゲッティナポリタンにしようか

シシロウはパスタの定番、スパゲッティナポリタンを選択した。 ポピュラーなケチャップ味のスパゲッティなら、たしかにイメージしやすそうだ。

シシロウがボタンを押して出てきた食券は。

シシロウ

ミートスパゲッティだったよ

味はほとんど同じだし、ハズレでも無いだろう。

ショウリ

次は、ぼくかな

ショウリが券売機のボタンを押す。

ショウリ

今日はいろいろあって疲れたし、ガッツリ食べたいから、ボリュームのあるカツサンドとか食べたいかな

ショウリがボタンを押して出てきた食券は。

ショウリ

ハムカツサンドだったよ

ほぼ同じ。

ショウリ

これでもいいんだけど、ボリュームがなー。

ショウリ

夜中にお腹すきそう

アルク

情けないわね。あたしがお手本を見せてあげるわ

アルクがフラグにしか聞こえないセリフを言いながら、券売機のボタンを押す

アルク

大きい肉まんが食べたーい

アルクがボタンを押して出てきた食券は、そのまま肉まんだった。

肉まんじゃなくて、実はあんまんというオチも無し。

アルク

ほらほら~、イメージってのはこうやるのよ

ドヤ顔がうざいけど、今は結果を出しているから反論できない。

メイカ

あたしはショウリと同じ物を食べる~

間髪入れずに、メイカが券売機のボタンを押す。

メイカがボタンを押して出てきた食券は、宣言通り、ショウリと同じハムカツサンドだった。

メイカ

ふふーん、あたしだってこれくらいできるのよ

メイカもまた、ドヤ顔をアルクに向ける。

ナミスケ

要するに、シンプルな食い物のほうがイメージしやすいってことだな

次はナミスケが動いた。

ナミスケ

オレはハンバーガーだ

ハンバーガーはパンズにハンバーグが挟んであるだけのシンプルなファストフード。

たしかに、ぱっとイメージできる。

ナミスケがボタンを押して出てきた食券は。

ナミスケ

半チャーハン……って、なんでだよ!

ユトリ

ぶふぉう!

ユトリが吹き出した。

ユトリ

なんで、ハンバーガーが半チャーハンに……

ユトリ

ハンしかあってないし、パンがご飯になっちゃってる……

ユトリ

あははは

笑いすぎて涙目になってる。

ナミスケ

そんなに笑うなら、次はお前がやってみろよ

ユトリ

わ、わたしが……?

ユトリ

あはは、お腹痛い……

今のユトリは笑いすぎて、絶対にまともなイメージはできそうにない。

ユウゴ

ぼくが……

ホマレ

私がやりますわ。
今のユトリさまは、正常ではありませんもの

ホマレがユトリをさげて、券売機の前に出た。

アルク

ユウゴも何か言いかけてなかった?

ユウゴ

……いいえ、なにも

アルクにツッコまれそうになったので、視線をそらした。

ホマレが券売機のボタンを押す

ホマレ

私はボンゴレスパゲティにいたしましょう

ホマレがボタンを押して出てきた食券は、宣言通りのボンゴレスパゲティだった。

ここまで男子は全員狙いを外して、女子は全員狙い通りの食券を出していることになる。

ナミスケ

おれたちの最後はユウゴだ。

ナミスケ

頼むぞ

ナミスケがいらんプレッシャーをかけてくる。

そもそも完全に外してるのナミスケだけで、シシロウとショウリは、それなりに近い料理の食券を出せている。

ユウゴ

何にしようかな

今までの傾向を見るに、身近な料理のほうがイメージしやすそうだと思う。

普段から食べていて、形や味をイメージしやすい料理にしよう。

そう考えて最初に脳裏に浮かんだのがカレーライスだった。

家でもよく作ってもらうし、給食にもよく出る。

家庭科実習や林間学校でも作ったことがあるから、料理工程もわかる。

カレー、カレー、カレー、カレー……

頭の中をカレーでいっぱいにしてから、券売機の発券ボタンを押した。

出てきた食券は、カレイの煮つけ定食……?

ユウゴ

カレイって何?

アルク

魚よ。
ずいぶんとベタな失敗をしたわね

アルクにツッコまれ、というかあきれられた。

ユトリ

ぶはあっ!

ユトリ

カレーがカレイって、インド料理が日本料理に……

ユトリ

国が違うっ、海をこえちゃった……

ユトリ

あははは

笑いが収まりかけていたユトリが、また爆笑した。

なんだか、すごく恥ずかしい。

ナミスケ

定食なら、まだいいじゃねーか。

ナミスケ

おれなんか半チャーハンだけだぜ。
大盛りとかに出来ないのか?

ユトリ

半チャーハンの大盛りって、それ普通っ……あははは

ナミスケのボヤキに、ユトリがまた吹き出した。

ホマレ

ユトリさま、後ろの方々が待っていますわよ

ユトリ

あ、はいっ……

ユトリ

すみません、人の失敗を笑うなんて最低ですよね……

ユトリ

本当にすみません。

ユトリ

今日は何も食べません

ホマレ

なんでいきなり暗くなってますの?

ユトリが反省モードに入っちゃった。

この切り替わりは初めて見ると戸惑うよね。

アルク

ユトリ、なんでもいいから発券ボタンを押して。

アルク

早くいきましょう

ユトリ

は、はい

アルクに言われて、ユトリが発券ボタンを押す。

出たのは、大盛りトルコライスだった。

ユトリ

トルコライスってなんでしょうか?

ボタンを押したユトリも知らないメニューらしい。

ナミスケ

またすげーのが出たな

ナミスケはトルコライスを知っているみたいだ。

ナミスケ

口で説明するより、実物見たほうが早いだろ。

ナミスケ

配膳カウンターに交換しに行こうぜ

みんなで配膳カウンターに食券を持っていって、それぞれの料理をもらって、テーブルに付いた。

その中でも異質だったのは、ユトリのトルコライスだった。

大きなお皿にライスとスパゲッティが盛られ、その上に大きなとんかつがのっている。さらに全体にカレーソースがかかっている。しかも、大盛りだから山のように迫力があった。

ユトリ

なんですか、これー?

頼んだユトリが1番ひいている。

ナミスケ

それがトルコライスだよ。
トルコライスって名前だけど、国のトルコとは関係がない。
見た目が3色《トリコロール》になっているからって説がある

とナミスケが解説してくれる。

けど、なんでトルコライスを知らないユトリが、トルコライスの食券を出したんだろう。

ユトリ

みなさんの出したメニューに引っ張られたんだと思います

言われてみれば、 シシロウやホマレのスパゲッティ、 ショウリやメイカのカツサンド、 ぼくが食べたかったカレーライス、 ナミスケが言っていた大盛りと、 みんなのメニューや会話の要素が一通りそろっている。

ユトリ

あの、こんなに食べきれないので、みなさんも協力していただけませんか?

ユウゴ

いいの?

少しでもカレーが食べられるなら、ぼくは大歓迎だ。

カレイの煮つけも美味しそうだけど、魚料理はちょっと苦手なんだよね。

ナミスケ

オレも結構もらうぞ。半チャーハンだけじゃ足りねぇ

半チャーハンを大盛りにできなかったナミスケは、取皿にごっそりと自分の分を確保する。

ショウリ

ぼくもとんかつを2~3切れもらっていいかな?
ハムカツだけだと、やっぱり足りないや

ショウリも取皿にとんかつをもらっていく。

ユトリ

はい、どうぞ。
私、寝る前に油物は食べないので、全部持っていっていいですよ

ショウリ

本当に?
それじゃあ、遠慮なく……

ショウリがさらにとんかつを取ろうとしたところで、メイカがショウリとユトリの間に割って入った。

ユトリ

あ、メイカさんも欲しい物があったらどうぞ

メイカ

あんた、ショウリに色目を使ったわね

にこやかに話しかけるユトリに対し、メイカは険しい表情でにらみ返した。

ユトリ

わ、私、そんな事していません……けど

メイカ

ウソよ。

メイカ

ご飯が少なくて残念がっているショウリに分けてあげるために、わざと大盛りの料理を頼んだんでしょ

メイカが、みんなで取り分けたけど、まだかなり残っているトルコライスのお皿を指差す。

ユトリ

それは券売機でのイメージが上手く出来なかったから

メイカ

あんな簡単なもの、失敗するわけ無いでしょ

思い通りの食券を出せたメイカからすれば、イメージした物と違うメニューが出たこと自体が信じられないみたいだ。

アルク

あのねー、メイカ落ち着きなさいって

肉まんを食べ終わったアルクが鼻息を荒くするメイカをなだめるように話しかけた。

アルク

ユトリの本命はユウゴだから、トルコライスはカレーライスを食べられなかったユウゴのために選んだのよ

ユトリ

ええー、ちちち……

ユトリがぼくとアルクを交互に見て、否定とも肯定とも取れない言葉を発しながらうろたえる。

メイカ

そんなわけないでしょ。
そいつよりショウリのほうが、何百倍もかっこいいじゃないのよ

アルク

くっ、完全に論破されたわ

メイカのバッサリとした物言いに、アルクはあっさりと屈した。

外野のぼくを意味もなく傷つけるのやめてくれないかな。

と言うか、この状況は嫌な予感がする。

ガイド妖精

トラブル確認。トラブル確認

やっぱりだ。

騒動を察したガイド妖精が、ユトリとメイカの間に出現した。

ガイド妖精

君達は意見を違えて争っているな

メイカ

アミ戦するっていうの?
あたしはいいわよ

ユトリ

争うなんて、大げさなものでは

大乗り気なメイカに対し、物怖じしているユトリ。

始める前から気持ちで負けている。

ガイド妖精

今は食事中だから、きちんと全部食べたあと、30分ほどしてから屋上に来い

メイカ

すぐじゃないの?

ガイド妖精

食事は大事だ。
食後すぐに動くのも、成長に良くない

学校のシステムだけに、その辺の配慮はそれなりに行き届いているみたいだ。

メイカ

あたしは今すぐでいいのにー

やる気満々だったメイカが、歯がゆそうに両手をふるわせる。

ショウリ

お腹が空いていたら、思うように戦えないだろ

ショウリがメイカのとなりの席に座り直して、なだめるように言う。

ショウリ

メイカもとんかつもらって食べるかい?

メイカ

うん、食べるー

メイカは態度をころっと変えて、ショウリからとんかつを受け取った。

もう少し早めに声をかけていたら、ガイド妖精に目をつけられなかったんじゃないかな。

ユトリ

どうしましょう

逆にユトリの方は、この後のアミ戦が気になって、食事どころではなさそうだ。

アルク

腹をくくるしかないんじゃないの?

ナミスケ

食わねえなら、もっともらうぞ

アルクがスパゲッティを取り、ナミスケがカレーライスのおかわりを持っていく。

ユトリはお皿に少しだけ残ったカレーがかかったスパゲッティを、お茶で無理やりおなかの中に流し込んでいた。

アミキティア魔法学校の闇

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