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ある日

晴人

いらっしゃいませ〰

パスタ、持ち帰りできる?

晴人

もちろんです!メニューをご覧ください!

じゃあ、孫にナポリタンを1つ、私はボロネーゼ1つにしようかしら

晴人

ありがとうございます!

晴人

お作りする間、こちらのチェアにかけてお待ちください

晴人

(店長から引き継いで5日目)

晴人

(まだ、トラブルは起きていないし、今のところは順調だ)

店長は治療のために仕事を休職している。

今だけ、臨時で俺が店長だ。

いつもありがとうね

今日は島さん、いないの?

晴人

実は島は、休職中でして…

あら、そうだったの?

…戻ってくるわよね?

晴人

晴人

はい、きっと大丈夫です

もし、島さんに会ったら伝えて。

「大島っていうオバサンが孫と一緒に、島さんの帰りを待ってるよ」って

晴人

オバサンだなんてそんな…

晴人

大島様ですね!必ずお伝えいたします

店長が無事に戻ってこられるかは、まだ分からない。

俺の母親が、同じ病で亡くなっているから。

晴人

(店長の場合は早期発見だったから、きっと大丈夫だ)

カラン

晴人

いらっしゃいませ!

女性

…こんにちは

晴人

ああ、どうもこんにちは!

晴人

(そうか、今日は7日だ。忙しくて忘れてたけれど、彼女の旦那さん、今日が月命日か)

女性

さっき、あの女性と話してるの、店の外から見えてたよ。

晴人

そうでしたか

女性

しっかり店長やってるね…

女性

若いのに、偉いなぁ

晴人

そんな!俺なんてまだまだです

晴人

晴人

いつものメニュー、用意しますね!

女性

ありがとう、お願いね

彼女は、いつもの席に座った。

旦那さんの月命日に、ここにやって来て必ずレモンクリームパスタとガーリックトースト、アイスティーを注文するのだ。

女性

…私も、前に進みたいな

晴人

お待たせいたしました

女性

ねぇ、あなたがホールも回して、料理もするの?

晴人

はい、時間帯によっては今みたいにワンオペになってしまいますね…

晴人

バタバタして、すみません

女性

謝らないでいいわ。でも、随分頑張ってるのね。

晴人

(人員が足りてないだけなんだけどな…)

女性

無理はしないで…

晴人

はい!ありがとうございます。気をつけます

女性

・・・

晴人

ごゆっくりどうぞ

仕事帰り

晴人

(今日、平日の割に売上良かったな)

晴人

(最近テイクアウト増えてるし、メニューも増やしたいな…)

晴人

(いや、まだワンオペタイムがある。今テイクアウトメニューを増やしたら、全体のサービスが悪くなってしまうし…)

晴人

(うーん、悩ましいな)

臨時とは言え今の店長は俺だ。島店長が戻ってくるまでは、あの店を守らなければならない。

可能な限り売上を維持。今の時代に合わせ、テイクアウト用のサイドメニューやオリジナルメニューも考えたい。

女性

…うっ

どこかから、呻き声がした。

晴人

(ん?)

俯きがちに立っている女性に声をかけた。

晴人

…大丈夫ですか?俺、席変わりますよ?

晴人

あっ

女性

あれ?パスタ屋さんの店員さん?ありがとう

女性

座らせて貰います

晴人

…今日はよく会いますね!

昼に会った時より、かなり顔色が悪い。

晴人

もしよかったら家まで送りましょうか

女性

…いいの。ただの貧血だから

晴人

いや、昼より顔色悪いし、心配なんです

晴人

せめて俺を家に送るのが怖いってことなら、親か兄弟か、どなたかに来てもらわないと危ないのでは…?

女性

…私、家族いないから。それに少し休めば、きっと大丈夫よ

女性

いつもそうしてるから

晴人

そうですか

晴人

晴人

すみません、出過ぎた真似をしました

女性

ううん、ありがとう………

女性

(この人はいつも優しいな…。私はいつまで、何の為に、こんなに頑固でいるんだろう…)

女性

(私も、変わりたい。人の優しさを素直に受け取れるようになりたい)

晴人

じゃあ、本当にお気をつけて

女性

休憩しながら行くから、大丈夫

女性

女性

でも、いつもありがとうね

晴人

いいえ。それじゃ

女性

(…変わりたい)

女性

(私、もう弱いままなの、やめたい)

女性

女性

あの!店員さん

晴人

晴人

はい

女性

名前、聞いてもいいかしら

晴人

俺のですか?晴人です

女性

そう。晴人くん…

女性

私はね、ショウコって言うの

女性

結晶の「晶」に、子供の「子」っていう字よ

晴人

そうですか。晶子さん、ですね

晶子

晶子

…はい

晴人

晶子さん、またお店で待ってます

晶子

………ッ

晴人

(本当に大丈夫かな??)

晶子

はい、また

晶子

(今、心臓が大きく脈打ったような………)

晶子

(気のせいよね。きっと貧血だから、体がおかしいんだわ)

晶子

帰ろう

晶子の自宅

晶子

ミナトさん、今日もレモンクリームパスタ食べてきたよ。

晶子

相変わらずおいしかった…。

晶子

今日はね、いつもの店長さんはいなくて、代わりに晴人君が臨時店長してるんだって。

晶子

でもね、味も前と変わらないし、うまくお店回してたんだ…

晶子

(私、晴人君の話ばっかりミナトさんにしちゃったな)

晶子

あれ?私、何か忘れてないかな…

晶子

晶子

何だろう

晶子

晶子

あーっ!ミナトさんのお墓参りに行くの、忘れてたっ!!

月命日には必ずお墓参りしていたのに。

晶子

今まで、こんなことなかった…!

晶子

さすがにこの時間からお墓参りに行くのは危ない…

いつもは、パスタ屋の帰りにまっすぐは墓参りに行くのだが、今日は服屋や雑貨屋に立ち寄ってしまった。

晶子

(ミナトさんが亡くなってから服や雑貨なんて、着回してずっと新しいの買ってなかったのに)

晶子

やっぱり、私、ちょっとずつ変わってきたのかな…

晶子

お墓参りは、忘れちゃダメだけど…

晶子

前と違う。何でだろう

晶子

晶子

あ、もうこんな時間!考え事してる場合じゃないや。お風呂掃除しなきゃ

晴人の家

晴人

(疲れた…風呂で眠りそうだった)

晴人

あ!店長からLIMEが来てる!

島: お疲れ様。店はどうだ? 俺は抗がん剤治療を始めたよ。効いてくれたらいいんだけど。こればっかりは試さないと、分からないらしいな。 お前も無理はするなよ。キツかったら本部に相談すること。 俺が寛容したら、俺の娘と一緒に焼き肉行かないか?

晴人

店長…

晴人

抗がん剤、効くといいな…

晴人

(母さん、どうか店長を助けて…)

LIMEの返信を送信してから、俺は眠りについた。

つづく

レモンクリームパスタ

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