男
男
男
男
もうここ毎晩
羊を数えている
目の前の柵を
羊が軽々飛び越えていく
私はそれを見守りながら
手元のカウンターを押していく
男
男
もうすぐだ
男
男
男
男
男
こない
羊が来ない
男
最後の一匹が小屋に 入らなければ
私は眠ることが できない
男
だんだんと あたりが明るくなっていった
男
男
ここ最近
ベッドについても すぐ目が覚める
なにか夢を見ている 気もするが
覚えていない
男
男
重たい体を 無理矢理起こし
身支度を始める
男
食パンとコーヒーを 適当に突っ込み
背広に着替えて 家を出る
ここ最近 眠れない
体は疲れている はずなのに
全く眠れない
男
思わずため息が出る
男
目の下のクマを こすりながら
やってきた電車に乗り込んだ
上司
上司
上司
男
男
上司
上司
上司
上司
男
上司
上司
上司は仕事はできるが 圧が強い
他社からの引き抜きで来た 実力者だし
言っていることは 間違いない
だが圧が強い ニガテだ。
男
男
霞む目をこすり
一瞬視線を前にやる
男
もう一度 目をこする
男
目をこする
男
こする
男
視線の先には 社内一の美女と謳われる マドンナ
春日井さんの席がある
その春日井さんの 左肩に
大きなモコモコした…
男
私は思わず 声をあげた
突然声を上げた私に 部署中から視線が飛んでくる
慌てて口を塞いだ
春日井
気まずそうに春日井さんが 声をかける
男
男
男
上ずった声で 返事をする
上司
部署中笑いに包まれた
男
再び春日井さんに目を向けると 羊はいなくなっていた
男
昼飯を食べながら 先程あったことを 思い返す
男
今思い返しても 顔から火が出そうだ
ましてや憧れの 春日井さんの前で…
豆乳パックをすすりながら 自己嫌悪に浸っていると
春日井
目の前に 春日井さんが 現れた
男
驚きすぎて
豆乳が鼻から 吹き出してきた
男
春日井
あぁ…
俺の人生…
寝ぼけて みんなに笑われて
好きな人を 前にして
鼻から豆乳…
なんて
なんて 惨めだろう…
春日井
春日井
春日井
男
男
あぁ 春日井さん…
こんな俺でも
あなたの笑顔が 見れるなら
いくらでも あなたの道化に なりましょう…
もらったちり紙で 鼻をかむ
ツンとする 感覚は
鼻からなのか
ココロからなのか
春日井
春日井
男
春日井さんが 指差す方向
そこには
男
今度は食堂中の 視線を集めることになった。
男
春日井
男
春日井
男
春日井
今度こそ はっきり見える
春日井さんの左肩に ピッタリ収まるそれは
男
春日井
春日井さんは 確信を得たように 話し出す
春日井
春日井
春日井
春日井
春日井
春日井
なんだと お前…
うらやましすぎるじゃないか。
春日井
春日井さんに なでくりまわされ まんざらでもない表情の羊
私はそれを 歯ぎしりしながら 見つめていた
まぁとにかく
こいつが帰ってくれば 俺の眠りも元に…
ん?
いや待てよ
こいつがこのまま 戻らなければ…
こいつがこのまま
春日井さんのところに 居座り続ければ…
春日井さんと俺が
今後もお近づきになれる
口実になるのではないか!?
そういう私の思いを 知ってか知らずか
私の羊は春日井さんの 胸元にダイブしたまま
動こうとしない
春日井
春日井
男
私は決意した
春日井
男
この思いのためならば
春日井
男
己の健康など
春日井
男
打ち捨ててでも
春日井
男
大好きなあなたに 関われるなら
眠れなくたって 別にいい
むしろ
幸せ過ぎて眠れない
男
男
春日井
春日井
春日井
春日井
羊はキョトンと した顔を見せて
キュキュっと 可愛く鳴いてみせた
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