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本土に着くと、わたし達は中心街のアーケードに向かった。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

時間はあまりない。急ぐぞ

 吾蓮を引き連れ、バスケ用具専門店に向かう。

 わたしも久し振りに来たので、迷わずに行けるかはかなり心配だが。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

吾蓮、お前はこのあたりに住んでいたのか?

 無言で歩き続けるのもつまらないので、何となく話題を振ってみた。

相羽吾蓮(あいば あれん)

いや、市内の外れの方

木崎姫歌(きさき ひめうた)

そうなのか? じゃあ、あまりこの辺には来ないのか?

相羽吾蓮(あいば あれん)

そうだな。たまには来るけど、部活も忙しかったし、ここまで遊びに来る機会はあんまりなかったかな

木崎姫歌(きさき ひめうた)

部活、ね。野球部か?

相羽吾蓮(あいば あれん)

え? あ、ああ……

 吾蓮は妙に歯切れの悪い言い方をした。

 どうやら、あまり触れられたくはない話題らしい。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

そうか、部活とストーカーの両立は、大変だったろう?

相羽吾蓮(あいば あれん)

待てこら

木崎姫歌(きさき ひめうた)

何だ?

相羽吾蓮(あいば あれん)

誰がストーカーだ

木崎姫歌(きさき ひめうた)

お前だろ

 今更それを否定するのか。

相羽吾蓮(あいば あれん)

くっ、ストーカーに言われるとショックがデカい

木崎姫歌(きさき ひめうた)

誰がストーカーだ

相羽吾蓮(あいば あれん)

お前だろ

木崎姫歌(きさき ひめうた)

何だと?

相羽吾蓮(あいば あれん)

んだよ?

 バチバチと火花が散った。

 気まずい空気は去ったが、不穏な空気が流れ始める。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

わたしはストーカーなどではない。尊君に、『お姉ちゃん』と呼ばれたいだけだ!

相羽吾蓮(あいば あれん)

どっちにしても犯罪臭しかしねえよ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ふっ、お前にはわからんさ。『兄ちゃん』と呼ばれているお前にはな。幸せというものは、案外近くにあるものだ

 さしずめ、青い鳥ならぬ青い尊といったところか。

相羽吾蓮(あいば あれん)

お前の変態性には、尊も真っ青だわ

木崎姫歌(きさき ひめうた)

何ぃ!? 青ざめるほど美しいと言っていただと!?

相羽吾蓮(あいば あれん)

どんだけポジティブなんだお前は!?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

脈ありか……

相羽吾蓮(あいば あれん)

ねえよ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ふふ、妬くな妬くな

相羽吾蓮(あいば あれん)

殴りてぇぇぇえええ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……ん?

相羽吾蓮(あいば あれん)

? 木崎? どうした?

 ピタリと足を止めたわたしに、吾蓮が怪訝そうな声を上げた。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 …………。

相羽吾蓮(あいば あれん)

おーい、木崎?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

な、ななな、何だ!?

相羽吾蓮(あいば あれん)

何キョドってんだよ? 道にでも迷ったか?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 …………………………。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

はっはっはっ! 何を言うのかね吾蓮君! IQ180の天才少女を捕まえて

相羽吾蓮(あいば あれん)

おい、何だ今の間は?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 ………………………………………………………。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

何でもない!

相羽吾蓮(あいば あれん)

いやいやいやいやいや! 間! その間をどうにかしろ! つーか、もはや間とも呼べねえよ! 迷ったろ? 迷ったんだろ?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

人間は皆、人生という名の迷宮の迷子

相羽吾蓮(あいば あれん)

いや、そういうのいいから

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……

 追い込まれるわたし。

 まだ夏には早いというのに、背中から流れる汗が止まらない。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 うう……。

 心中で呻く。

 普段強気な態度を取っているせいか、追い詰められると意外と弱いのだ。

 わたしは、若干目を潤ませながら口を開いた。

 そして、

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ああ迷ったよ! 迷いましたよ! これ以上なく完璧に! IQ180の天才少女なのに! これで満足か!? この腐れ残虐ドSブタ野郎!

相羽吾蓮(あいば あれん)

逆ギレ!? つーか俺が罵倒されてる!?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 だから久し振りだと言っただろう!

相羽吾蓮(あいば あれん)

だったら意地張らずにすぐ認めろよ。引き返せばいいだけだろ

 暢気そうに言う吾蓮。

 しかし、それが出来れば苦労はいらない。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

知らぬ間に、見たこともない場所に迷い込んだ

相羽吾蓮(あいば あれん)

お前バカだろ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

うううぅぅぅっ! 仕方ないだろ! お前がわたしと尊君の仲に妬いて、突っかかってくるから!

相羽吾蓮(あいば あれん)

どこにそんなエピソードがあった!? ……って、ああ、この道か

木崎姫歌(きさき ひめうた)

? 知っている道か?

相羽吾蓮(あいば あれん)

ああ。何とか戻れるだろ

木崎姫歌(きさき ひめうた)

本当だな? 迷ったら地獄を見ると思え

相羽吾蓮(あいば あれん)

誰のせいで迷ったと思ってんだよ……

 そう言いながら吾蓮は反転。

 来た道を戻って行く。

 当然、わたしには着いて行くしか選択肢はなかった。

ファウル・ファイブ

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