テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

メロンパンはおいしい

甘くて

ほのかにメロンが香るから

ブロロロロ…

どこかのお父さん

うーん

どこかのお父さん

なんか腹減ったなぁ…

どこかのお父さん

と言っても近くにコンビニもないぞ?

どこかのお父さん

どうするかなぁ

どこかのお父さん

どこかのお父さん

おっ

どこかのお父さん

あの止まってるトラック、パン屋って書いてあるぞ

どこかのお父さん

これはラッキーだ

どこかのお父さん

早速行ってみよう!

どこかのお父さん

いやぁ、暑いなぁ今日

甘井さん

いらっしゃい!

どこかのお父さん

あ、どうも!

どこかのお父さん

いやいや、ドライブしてたら道迷っちゃってさ

どこかのお父さん

参っちゃうよ…!

どこかのお父さん

でもこんなとこでパン屋に出会えるなんてなぁ

ノア

ナァーーー

どこかのお父さん

あらら、可愛い猫さんまでいるのか

甘井さん

あははっ、お疲れのようですね

甘井さん

何にします?

どこかのお父さん

いっぱいあるから選ぶの大変だねぇ

その時私は

どこかのお父さん

おっ…

ある見慣れたパンが

何故か無性に気になった

どこかのお父さん

メロンパン…!

どこかのお父さん

このメロンパンが良いです!これにします

甘井さん

はい、かしこまりました!

甘井さん

100円になります

どこかのお父さん

随分安いねぇ

どこかのお父さん

はい100円

甘井さん

では、10秒ほど待って頂けますか?

どこかのお父さん

10秒…?

………

甘井さん

……、、、

甘井さん

さん

甘井さん

にー

甘井さん

いち

カサっ

甘井さん

はいどうぞ!

どこかのお父さん

おおっ、ぴったり10秒ですね!

どこかのお父さん

このままここでかじっちゃって良いかな?

甘井さん

ええ、どうぞ遠慮なく

どこかのお父さん

では…、ひと口

ぱくっ

お父さん!

芽衣、メロンパン食べたい!

ふわふわの焼きたてのパンがいい!

メロンパン食べたい!

どこかのお父さん

甘井さん

どうです?美味しいでしょう?

どこかのお父さん

甘井さん

甘井さん

どうしました?

どこかのお父さん

あ…、、

どこかのお父さん

いや…、、、

どこかのお父さん

どこかのお父さん

少々…

どこかのお父さん

娘を思い出しましてね

どこかのお父さん

甘井さん

どうぞ

甘井さん

ただの紅茶ですが

どこかのお父さん

おお、これはこれは

どこかのお父さん

気を使わせてしまいましたね

どこかのお父さん

いただきます

どこかのお父さん

甘井さん

どこかのお父さん

さっきのメロンパン

甘井さん

えっ?

どこかのお父さん

さっきのメロンパン、すごく美味しかったよ

どこかのお父さん

すごく暖かくて

どこかのお父さん

温かくて…

どこかのお父さん

香りも甘味もちょうど良くて

どこかのお父さん

とにかく美味しかったよ

甘井さん

ありがとうございます…!

甘井さん

良かったです、気に入ってもらえて

どこかのお父さん

…、、

どこかのお父さん

娘にも

どこかのお父さん

ここのメロンパン…、食べさせたかったな

甘井さん

娘さん、いらしたんですね

どこかのお父さん

いや……

どこかのお父さん

もう…悔やんでも仕方の無いことなんだがね

どこかのお父さん

何ともかんとも…

どこかのお父さん

愛するものを亡くすというのは、深く悔しいもんだね

私には、6歳の娘がいた

可愛らしくて可愛いものが好きで

良い子だった

でも、神は微笑んでくれなかった

私の娘を幸福には導いてはくれなかった

どこかのお父さん

芽衣ー!

芽衣

お父さん!

どこかのお父さん

今日は仕事休んで来ちゃったぞ!

芽衣

ええー?お父さんズル休みだー!

娘は幼少期から大病を患っていてね

ほんと

信じられないくらい元気だったんだけど

余命は僅かだと言われていた

だから私はできるだけ

できる限り娘と一緒にいようと思った

たとえそれが死を意味するとしても

それが

親としての使命であると思ったから

どこかのお父さん

芽衣は、いつも明るく笑顔だった

どこかのお父さん

どんなに治療が辛くても

どこかのお父さん

苦しくても

どこかのお父さん

芽衣はいつも笑って……

甘井さん

…、、

どこかのお父さん

娘の大好物が、

どこかのお父さん

…、、

どこかのお父さん

メロンパンだったんだ

甘井さん

あ…

どこかのお父さん

そう

どこかのお父さん

メロンパン

どこかのお父さん

君が作ったやつみたいな

どこかのお父さん

ふわふわのメロンパンが大好きだったなぁ

どこかのお父さん

ある日、入院中に芽衣が言ったんだ

どこかのお父さん

メロンパンが食べたいと

どこかのお父さん

そう私にせがってきた

あんまりにも娘がせがむもんだから

私は急いで

近くのスーパーでメロンパンを買った

その時はたまたま

いつものおいしいパン屋で

メロンパンが売り切れてて

慌てて買ったメロンパンは

少ししぼんだメロンパンだった

私は芽衣の病室へと走った

どこかのお父さん

芽衣!

久しぶりのメロンパン

芽衣はどんなを顔するだろうか

楽しみだった

シャッ…!

どこかのお父さん

芽衣!ほら!メロンパンだぞ!

芽衣

……

どこかのお父さん

芽衣?なんだ寝てるのか

芽衣は眠っていた

いや

眠ってるように見えていた

どこかのお父さん

芽衣…?

芽衣

……

娘はそれから一言も話すことなく

深い深い

永遠の眠りについていった

大好きなものを食べられないまま

眠ってしまった

どこかのお父さん

余命が短いのは分かっていた

どこかのお父さん

それでもこの子は生きる

どこかのお父さん

生き切ってくれると思い込んでいた

どこかのお父さん

しかし、学校も行けぬまま死んでしまった

どこかのお父さん

生きていたら今頃、小学6年生なんだけどなぁ

どこかのお父さん

もっと可愛くなってるんだろうなぁ

甘井さん

お父さん…

どこかのお父さん

あ…、申し訳ないね

どこかのお父さん

こんなしんみりした空気にさせてしまって

甘井さん

いえ、そんな

甘井さん

甘井さん

あの

甘井さん

少し待っていて下さい

どこかのお父さん

へ?

ザッ

甘井さん

どうぞ

甘井さん

これ娘さんに

どこかのお父さん

君……

どこかのお父さん

もう1つ焼いてくれたのかい?

どこかのお父さん

そうだな…

どこかのお父さん

1つ娘へ買って行こうかな

甘井さん

いえ

甘井さん

これは僕の気持ちですから、お代は結構ですよ

どこかのお父さん

え、いやいや…、そういう訳にはいきませんな…!

どこかのお父さん

ちゃんと払いますから

甘井さん

いえ、遠慮しないで下さい

どこかのお父さん

でも…、、

甘井さん

あっ、、!

どこかのお父さん

甘井さん

すみません…、、!すっかり忘れていました!

甘井さん

今日からメロンパンが半額セール中なんです!

どこかのお父さん

甘井さん

ということは……

甘井さん

あれっ?

甘井さん

さっきのとこれで……ぴったり100円になるなぁ

どこかのお父さん

はぁ……

どこかのお父さん

全く……君って人は話がうまいもんだ

甘井さん

どうぞ、遠慮なさらずに

どこかのお父さん

……

どこかのお父さん

うむ

どこかのお父さん

半額セールなら仕方ないな!

どこかのお父さん

喜んでいただきましょう

甘井さん

ではいってらっしゃいませ

どこかのお父さん

あぁ、いろいろありがとう

どこかのお父さん

やっと娘においしいメロンパンを渡すことができるよ

どこかのお父さん

正直なところ……、、

どこかのお父さん

あの頃からメロンパン自体を避けて来てしまっていたんだ

どこかのお父さん

渡せなかったという気持ちが…

どこかのお父さん

胸のどこかに常にあったんだ

どこかのお父さん

しかし、わたしが1番しなきゃいけなかったのは

どこかのお父さん

おいしいメロンパンを届けることだったんですね

どこかのお父さん

でも、墓地へ向かう途中に冷めてしまわないだろうか

甘井さん

そのメロンパンいつ食べても出来立てですから、安心して下さい

どこかのお父さん

ははっ、冗談が上手いですね

どこかのお父さん

本当に

どこかのお父さん

ありがとうございました

甘井さん

いえいえ!

甘井さん

運転お気をつけて

どこかのお父さん

では…

ザッ…、、

どこかのお父さん

どこかのお父さん

そういえば、あなたのお名前を…、、

ザァッ……!

どこかのお父さん

どこかのお父さん

えっ…

どこかのお父さん

あ、、

どこかのお父さん

あれぇ……??

どこかのお母さん

あら、あなたおかえり

どこかのお母さん

遅かったのね

どこかのお父さん

ああ、ちょっと芽衣のところに行って来たんだ

どこかのお母さん

そうだったの?私も誘って欲しかったわ

どこかのお母さん

私も行きたいと思ってたのよ

どこかのお父さん

すまんすまん、、

どこかのお父さん

でも、途中で道に迷っちゃってね、

どこかのお父さん

ちょうど近くにキッチンカーのパン屋さんが止まっててさ

どこかのお父さん

そこのメロンパンがめちゃくちゃ美味しくてなぁ

どこかのお父さん

さっき芽衣にも渡したんだよ

どこかのお父さん

びっくりだったのがメロンパンさ、何時間経っても出来立てのように温かいんだ

どこかのお母さん

え?

どこかのお母さん

あなた、それって…

どこかのお父さん

ん?

どこかのお母さん

ううん、何でもないわ

どこかのお母さん

(まさかね…)

どこかのお父さん

でも奇妙だったなぁ

どこかのお父さん

いやね、車へ向かう途中に振り返ったんだよ

どこかのお父さん

でもそこには誰も何もいなくて

どこかのお父さん

殺風景な草原が広がってるだけだった

どこかのお父さん

夢でも見てる気分だったよ

ノア

……

甘井さん

芽衣ちゃん

甘井さん

今頃喜んでくれてるかな

ノア

なぁ

ノア

お前どうせ最初から分かってたんだよな

ノア

あのおっちゃんが、何に後悔してるのかまで

甘井さん

あははっ

甘井さん

君も気づいてたくせに

ノア

まあな

ノア

つーか俺にもメロンパンくれよー!

ノア

ここにいるとなんかメロンパンが欲しくなっちまうんだよぉー

甘井さん

ダメダメ

甘井さん

もう別の場所に移動しなきゃいけないからね

甘井さん

次のお客さんが待ってる

甘井さん

ほら、早く乗って

ノア

ちぇーー

トンっ

今日も甘井さんはパンを焼く

おいしいメロンパンを焼く

お客さんの待つ場所へ

幸せのメロンパンの乗せて

この作品はいかがでしたか?

119

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚