読切集

事の発端は 一年前のこと

当時銀行員だった藤堂龍樹の口座に 知らない間に500万円という 大金が入金されていた

それと同時に龍樹には 身に覚えのない 業務上横領の容疑が掛けられ

終いには、懲戒免職処分が 下される事態にまでなり 職場を退社せざるを得なかった

自分は潔白だと主張する 龍樹だったが

会社は龍樹の声に 耳を貸さなかった

何か理由が張る筈だと 龍樹は資産を使い果たして 事実の究明に尽力した

最終的に政治家による マネーロンダリングの 影響なのでは無いか？ という真相にまで辿り着く

マネーロンダリングとは 一般に、犯罪によって得た収益を 出所や真の所有者が分からないようにし 捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為を言う

龍樹の口座に500万が 入金された頃と同時期に 同様の現象が多発していたため その可能性は十分にあった

しかし、その真相に 辿り着いたと言えど 龍樹に貼られた 業務上横領をした元銀行員という レッテルが剥がれる事はなかった

そんな人間の言葉など 信用する人間がいるはずもない

龍樹に残されたのは 残高が一桁になった預金通帳と 彼女の星咲希華だけだった

人生に希望を無くした龍樹は 希華にこう言い放つ

一緒に 死んでくれないか？

龍樹と希華は 頑丈な木の枝に結んだ ロープに首をかける

そして、ゆっくりと 体の力を抜き 体をロープに預ける