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デザイナー

第1話 - 1針目/クローゼットに秘めた想い

404

2025年08月25日

#司類

#冬彰

あかまる🍓🐾໊

型通りに布と布を縫い合わせ、最後に余った糸をパチンと切れば、

司

(……できた、)

世界に一つだけの、特別な服の完成だ。

司

(おぉ……！！これは中々、いい出来じゃないか！)

トルソーに着せ、色々な角度から確認してみる。

司

(む！ここの縫いが少し甘いな…強度を考えるなら、2つ折りだったな。)

司

(だが、布と布のつなぎ目は自然で気にならないな。ここは前回より成長してる。)

コンコンッ

咲希

お兄ちゃーん！入るよー！

ガチャッ

咲希

あっ、完成したんだ！

司

おぉ、咲希！つい先程な！

咲希

わ〜〜！！いいねっ！すっごくカッコイイ！

咲希

この服も、絶対類くんに似合うと思うよ！

司

ふっふっふ、そうだろう！その為に考えたデザインだからな！

司

特に拘った部分は、ここの装飾なんだ！

司

ここは前回の反省を活かして、装飾が着心地に影響しないように生地に工夫を施したんだ！

咲希

うんうんっ！たしかに目がいくし、この装飾が全体のバランスまとめてるって感じ！

司

おぉ！流石は咲希！分かってくれるか！

司

あ、そうだ。何か用だったか？

咲希

あっ、うん！夜ご飯出来たよ〜って！

司

そうか！少し片付けるから、先に降りててくれ！

オレはトルソーから服を脱がしてハンガーに掛け、クローゼットへと閉じ込めた。

咲希

……また、仕舞っちゃうの？

司

…

咲希

類くん、絶対着てくれると思うよ！

咲希

……まだ、言わないの？

司

……言うつもりは無いんだ。

司

それに、ほら。勝手にこんな物を作ってるなんて、気持ち悪いだろう？

咲希

類くんはそんな事、思わないと思うけど…

司

……

司

いいんだ。このまま、閉じ込めておいて。

司

このまま、ただ作るだけでいいんだ。

咲希

でも…

咲希

……私、先に降りてるね。

司

あぁ。後で向かう。

バタンッ

司

…

クローゼットから先程の服を取り出し、壁に掛けてみる。

司

(……今まで作った中で1番、絶対に似合うと思う…)

司

(本当は、これを着た類が見てみたい。)

司

(……だが、ダメだ。)

司

(言えない……そもそも類は、服にあまりいい思い出がないはず、)

司

(着てもらえなきゃ、意味が無いのも分かっているが…)

壁に掛けた服を降ろし、またクローゼットの中へ掛けた。

司

(……閉じ込めてしまって、すまない。)

ゆっくりと、クローゼットの扉を固く閉じた。

翌日

司

(次はどんなデザインにしようか。)

司

(夏も近いし、涼し気な服がいいなぁ)

司

(そうだな。例えばモチーフを水っぽくして…)

類

何を描いているんだい？

司

どわーーーーー？！？！？

類

うっ

司

る、るる、類！！！！

類

動揺し過ぎだよ。

類

何か見せられないものだった？

司

い、いいや！！ただの落書きだ！！

類

ふぅん？

司

(あ、焦った……！！見られてなくて良かった…！！)

神代類。小学生の頃から仲の良い幼なじみだ。

身長は180cmの長身で、手足が長くスタイルが抜群にいい。

司

(……やはり、似合うだろうなぁ…)

類

…そんなに全身見られると、ちょっと恥ずかしいんだけど。

司

わーーー？！！？！すまん！！！見過ぎた！！

類

ふふ、構わないよ。司くんなら。

類

あと、さっきの僕の話聞いてた？

司

ん？

類

夏祭り一緒に行こうって。

司

何っ？！すまん、聞いてなかった！！

類

だろうねぇ

司

夏祭りだな、もちろん構わんぞ！

司

しかし、まだ7月上旬だが、祭りはいつだ？

類

8月上旬だねぇ

司

おぉ…少し気が早くないか？

類

司くん、今ならまだ誰とも約束していないだろう？

司

あぁ、していないが。

類

だからだよ。

司

？

司

別に、他の誰かに誘われたとしても、類を優先するぞ。

司

オレも類と行きたいしな。

類

……そうかい。

司

む、何故顔を逸らすんだ。

類

ちょっと見せられない顔をしていてね。

司

どんな顔だ？？

類

まぁまぁ、気にしないでおくれよ。

司

そう言われると気になるんだが…

キーンコーンカーンコーン

司

はっ、予鈴だ！！席へ戻れ！

類

えぇ〜、まだ5分あるのにー

司

お前の机、何も置いてないじゃないか！準備してきなさい！

類

相変わらず真面目だねぇ

類

次の授業なに？

司

国語だ！時間割も自分でしっかり管理してだな…

類

おっと、君の小言面倒なんだよね。

司

面倒だと？！

類

準備してきま〜す

司

あっ！…全く！

司

…

司

(すまない、類…あの服のことはきっと、墓場まで持っていくことになるんだろう、)

放課後

司

……類、

司

この穴だらけのエプロンはどうした…？？

類

うん、インパクトが欲しくてね。

類

気付いたらこうなってしまったのさ。

司

これ明日提出の課題だよな？！

類

お願い、司くん。なんとかして欲しいな。

司

はぁぁ……全く、

司

なら一旦、これは預かるぞ。家で修正してくる。

類

本当？ありがとう！

類

あ、ねぇ。今日君の家行っちゃダメ？

司

む？

類

君が直すところ、ちょっと見たいからさ。

司

何も面白くないと思うぞ……？？

類

いいの。

司

まぁ…オレは全然構わんのだが。

類

ふふっ、ありがとう。

類

じゃ、帰ろうよ。君の家行くの久しぶりだから、ちょっと楽しみ。

司

久しぶりと言っても、2週間しか経ってないだろう。

類

2週間もだよ。

類

ほら、早く帰ろう。

司

こ、こら！引っ張るんじゃない！

類

…おや、

司

(はっ！！)

類

これ、司くんのミシン？

司

母さんの！母さんのミシンを借りていたんだ！！

司

実は、咲希が体操服を破いてしまってな！それを直すのに借りたんだ！

類

へぇ、相変わらず器用だねぇ

司

(み、ミシン置きっぱなしなの忘れてた…危ない…)

司

早速だが、直しておくぞ。類は適当に過ごしててくれ。

類

僕はここで見てるよ。

司

おぉ…まぁ、いいが。

エプロンと布をミシンにセットし、電源を入れた。

パチンッ

司

…よし。

司

出来たぞ、類。

類

わぁ、ありがとう！

類

ふふ、これで提出できるよ。

司

持ってくるの忘れるなよ…？

類

ふふ、大丈夫。

類

それにしても、本当に上手いねぇ。

司

そうか？人並みだぞ。

類

いやいや、絶対それ以上だよ。

類

司くんって、もしかしてお裁縫好きなのかい？

司

？！

司

な、何故だ？

類

ミシンしてる時、楽しそうだったから。

司

い、いやぁ…普通だぞ。家庭科の授業くらいでしかしないしな。

類

そうかい？

司

そ、そうだ！飲み物すら出せてなかったな！

司

取ってくるから、少し待っていてくれ！！

類

あぁ、うん。ありがとう。

類

(それにしても、本当に上手いねぇ)

類

(才能ありそうだし、もっとお裁縫とかやってみたらいいのに。)

類

(まぁ、それは本人次第か。)

キィ…

類

ん？

風が吹いたのか、ひとりでにクローゼットらしきものの扉がほんの少し開いた。

類

(おや…閉めておいた方がいいかな。クローゼットだし、)

類

(でも、このクローゼット…)

類

(司くんが普段使ってるクローゼットは、あっちだよね。なんで部屋に2つも？)

類

(司くん、そんなにたくさん服を持っている感じじゃないけど…)

ほんの少しの好奇心が働き、魔が差した。

類

(…司くん、ごめんね。)

クローゼットに手を掛け、少しだけ開く。

中には、綺麗な服がたくさん仕舞われていた。

類

(わっ…！)

類

(す、すごい…！オシャレな服がたくさん、)

類

(司くん、こういうの着るんだ…着てるの、見た事ないけど…？)

類

(それになんだか、司くんが着るにはサイズが大きいような…)

ガタンッ

類

！？

司

えっ……あ、

類

あっ……ご、ごめんね。

類

閉めようと思ったんだけど、気になっちゃって。

司

あ……あぁ！

司

そうか！！ただ服があるだけだっただろう！

類

うん。全部素敵で、綺麗な服だね。

類

司くん、こういうの着るのかい？

司

ま……まぁな！

司

実は親戚からもらった服なんだ！！

類

ふふ、そうなんだ。親戚さんセンスいいねぇ。

司

そ、そうだろう！！

司

さぁ、類！お茶でも飲んでくれ！

類

うん、ありがとう。

咲希

お兄ちゃん！

司

！？

類

おや、咲希くん。

咲希

もう……言いなよ、お兄ちゃん。

咲希

お兄ちゃんも、本当は言いたいんでしょ…？

類

？

司

……

咲希

類くん、いらっしゃい！私は今から出かけるけど、ゆっくりしていってね！

類

う、うん。ありがとう。行ってらっしゃい。

類

えっと……司くん？

類

…何かあるなら、聞くよ。

司

(類……)

司

…

司

………この服、オレが作ったんだ。

類

えっ？

類

この服って……クローゼットの、全部？

司

あぁ。

類

え？！

類

す、凄いじゃないか！！本当に、全部作ったのかい？！

類

まさか、司くんが服を作れるだなんて……！

司

全部、お前の服なんだ。

類

…え？

司

このクローゼットの服は、全部……オレが、お前に似合うと思ってデザインした服なんだ。

類

？！

司

……本当にすまない。気持ち悪いだろう。

類

いいや、全く。

司

えっ

類

ねぇ、着てみてもいいのかい？

司

？！

類

僕のために作ってくれた服なんだろう？

類

なら、僕が着ないと意味が無いじゃないか。

司

そ、そう……だが、

司

着てくれるのか…？

類

もちろん！せっかく君が作ってくれたものなんだもん。

類

これ、全部着てみていい？

司

も、もちろんだ！

司

類がいいなら、全部着てみてくれ！

類

ふふっ、うん。ちょっと着てみるね。

類

どう？

司

に、似合う！！！やはり物凄く似合うぞ！！

類

ふふ、本当？

司

あぁ！やはりオレの見立て通りだ！

司

着心地はどうだ？特に、それは首周りが心配なんだが。

類

腕とかは動かしやすいし着心地はいいけど、少し首元が痒いかな。

司

なら、次はこっち着てみてくれ！首元を改良した方だ！

類

ふふ、うん。

類

おぉ！たしかにこっちの方が快適だねぇ

司

良かった！！そっちの方が似合ってるぞ！！

類

ふふっ、次これ着ていい？

司

あぁ！もちろん！！

司

(はぁ、はぁ…楽しかった……！！)

類

ふふっ、すっごく楽しかったよ！

司

！

類

司くん、こんなに素敵な服が作れたんだね。

類

着させてくれてありがとう。

司

お、オレの方こそ！！

司

着てくれてありがとう。長年の夢が叶った。

司

(咲希にも、あとで礼を言わねば。)

類

それにしても、本当にすごいねぇ。全部で26着もあるじゃないか。

類

いつから作ってたんだい？

司

えっと……中学2年生辺りからだな。

司

本格的に作り始めたのは、高校へ入ってからだ。

類

そんな前から……気付かなかったな。

司

…必死に隠してたからな。

類

何か隠してるのは知ってたよ。まさか、こんな凄いことだとは思わなかったけど。

類

……司くんが良かったらなんだけど、

類

浴衣って作れる？

司

…浴衣？

司

いいや、作ったことは無いが…

類

僕、お父さんのお下がりの浴衣しか持ってなくて、今年新調しようと思ってたんだけど、

類

もし司くんさえ良ければ、僕の浴衣作って欲しいな。

司

何っ？！？

司

い、いいのか？！作っても！？

類

ふふっ、うん。君の作ってくれた浴衣着て、お祭り行きたいな。

司

お、おぉ……！！！

司

作るぞ！！作らせてくれ！！

司

そうと決まれば、早速反物を見に行かねばだな！！

司

類！今週末時間あるか？反物を見に行こう！

類

うん、もちろんあるよ。楽しみにしてるね。

司

あぁ！！

この作品はいかがでしたか？

404

5件

最高です……(遺言) 穴だらけのエプロンを想像したら笑っちゃいました笑僕、不器用なんで司くんが羨ましい…

浴衣作るのってめちゃくちゃ難しそうだな…続き待ってます！

ゎ‹ゎ‹（๑ ᷇ 𖥦 ᷆๑)♡ゎ‹ゎ‹ 可愛い((o(｡･ω･｡)o))

あかまる🍓🐾໊

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