悪魔とオレが働くコンビニにも新しい学生バイトが入ってきた。
オレ
…
オレ
新人くん?
新人
…
新人くんは商品の陳列中に声をかけられたことに気づき、ジロッとこちらを睨んできた。
オレ
ま、また間違えてるよ…
オレ
商品を棚に置くときは新しいものを後ろに置く!
オレ
「先入先出(さきいれさきだし)」だよ!
新人
…ちっ
オレ
(「…ちっ」だって!!?)
新人
毎日毎日小言ばっかり
新人
そんなに俺が嫌いっすか
オレ
(…はあああっ!!?)
オレ
(なんでそうなるんだよ…!!?)
悪魔
落ち着かんか2人とも
悪魔
喧嘩してどうする
新人
あ、先輩聞いてくださいよー
新人
またオレ先輩がいびるんっす
悪魔
…不器用なやつだからな
悪魔
指導に慣れておらんのだろう
客
すみませーん、レジいいですかー
悪魔
あ、すまん新人行ってきてくれ
新人
了解っす!
新人
オレ
ちょっと、悪魔までオレを悪者にしないでよ
悪魔
悪いなオレ
悪魔
でもな、あそこまでこじらせた奴はなかなか考え方の修正が難しい
悪魔
…正直、指導が雑なのも一因だと思うぞ
オレ
…
オレ
まあ…それは…
オレ
後輩ちゃんはあんな感じだけどバイト掛け持ちしてるみたいでしっかりしてるし
オレ
指導するのは今回が初めてみたいなもんなんだよね…
悪魔
うーむ…
悪魔
ここは一旦、新人の立場になって考えてみろ
悪魔
お前は慣れてきてるから全体の流れ
悪魔
次の仕事でこうするから今はこうしたほうがいい、と分かったり
悪魔
周囲に気が裂けるが
悪魔
何もわからない新人は今の仕事しか見えていない
悪魔
経験も少ないから一つの行動が何を意味するかもわからない
花音(ペンダント)
ゲームに例えていうなら「初見プレイ」と「周回プレイ」の差だね!
悪魔
1から10まで説明してもわからんと嘆いておるのなら
悪魔
お前が見落としている「小数点」のところでつまづいているのかもしれんということだ
悪魔
新人の立場に立って指導してみるといい
オレ
な、なるほど…?
新人
…ガサゴソ
オレ
(…また新しい商品を手前に置いてる…)
オレ
…新人くん、ちょっといいかな?
新人
…なんすか?
露骨に不機嫌になる新人にちょっと怯みながら側に立つ。
オレ
新人くんってスーパーかなんかに行く時、商品をどこから取る?
新人
…手前っすけど
オレ
そう!
オレ
買い置きの為に買う時は賞味期限を見るかもしれないけれど
オレ
すぐに食べる時はあまり良く見ないよね!
新人
…そっすね…
オレ
だから前に新しい商品を置いちゃうと
オレ
古い商品が奥の方に残っちゃって
オレ
賞味期限切れになって捨てることになるんだ
オレ
それを防ぐ為に奥の方に新しい商品を置いて
オレ
手前にある賞味期限に余裕のない商品から使ったり買ってもらったりする!
オレ
これが「先入先出(さきいれさきだし)」って言うんだ!
新人
…
新人
…なるほどっすね
新人
わかりました!
オレ
じゃあ商品の陳列お願い!
新人
了解っす!
悪魔
オレー!ちょっと来てくれー!
オレ
わかったー!
悪魔
相手の立場になっての指導
悪魔
さらに実力を見極め、もう1人でやれると考えたら「任せる」と明言し、自信の形成につなげる
悪魔
いいじゃないか
オレ
そ、そうかな?
おばはん
悪魔くんの言う通り
おばはん
最初は子供が子供に指導なんて無理と思ってたけど
オレ
…
悪魔
(…これはもう諦めろ…)
悪魔
(そう言う奴だ…)
おばはん
できないなりにあんたもやれるじゃん
おばはん
じゃあ私はまだ他の仕事があるから
おばはん
悪魔
…ああ見えてお前の事を認めている…のではないか?
オレ
そうなのかなあ…