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放課後。
寮の案内を受けて、荷物を持ったまま廊下を歩く。
窓の外はもう少し暗くなり始めていて、校舎とは違う静けさがあった。
teacher
軽い説明を聞き流しながら、ぼんやりと周りを見る。
……全部同じに見える。
正直、どこでもいい。
teacher
先生が立ち止まった部屋の前。
プレートには、すでに2人分の名前が書かれていた。
一つは“山中柔太朗”。
もう一つは——
山中柔太郎
小さく名前を読み上げる。
teacher
さらっと言われて、思考が一瞬止まる。
……いや、ちょっと待って。
よりによって?
teacher
軽いノリで去っていく先生。
足音が遠ざかる。
廊下に残るのは、俺一人。
山中柔太郎
小さく息を吐いて、ドアノブに手をかけた。
ガチャッ
扉を開けると——
佐野勇斗
中にいたのは、やっぱりその人だった。
ベッドに座っていた佐野勇斗が、当たり前みたいにこっちを見る。
佐野勇斗
山中柔太郎
佐野勇斗
それだけの会話。
気まずいとかではないけど、空気が妙に静か。
とりあえず、荷物を中に運び込む。
もう一つのベッドに鞄を置いて、部屋を軽く見渡す。
思ったより狭い。
ベッドと机、クローゼット。
距離、近いな。
佐野勇斗
勇斗が顎でベッドを示す。
山中柔太郎
短く返して、上着を脱ごうとした時だった。
ガタンッ
手が滑って、鞄が床に落ちる。
山中柔太郎
しゃがんで拾おうとした、その瞬間——
同時に、もう一つの手が伸びてきた。
山中柔太郎
被った。
顔を上げると、すぐ近くに勇斗の顔。
思ってたより、距離がない。
数秒、無言。
先に手を引こうとしたのに、
なぜか、勇斗の方が少しだけ早く動いて、
そのまま——
グイッ
手首を掴まれた。
山中柔太郎
強くはないけど、簡単には離れないくらいの力。
佐野勇斗
視線を落とされる。
自分の手首を見ると、うっすら赤くなってた。
ぶつかった時か、さっき落とした時か。
山中柔太郎
そう言って引こうとするけど、 一瞬だけ、掴む力が強くなる。
佐野勇斗
低い声。
命令ってほどでもないのに、妙に逆らいづらい。
そのまま、親指で軽く触れられる。
確認するみたいに。
佐野勇斗
山中柔太郎
やっと手が離される。
ほんの数秒。
それだけ。
それだけなのに、
さっきより少しだけ、距離が近く感じる。
山中柔太郎
とりあえず言うと、
佐野勇斗
短い返事。
それ以上、何もない。
そのまま何事もなかったみたいに、勇斗はベッドに戻る。
……
俺も何も言わずに、荷物を整理し始めた。
会話は続かない。
でも——
完全に無関係って感じでもない。
さっきまでより、少しだけ。
ほんの少しだけ、空気が変わった気がした。
……その夜🛏️🌌
電気を消して、ベッドに横になる。
隣のベッドとの距離は、思ってたより近い。
寝返りを打てば、届きそうな距離。
……
静かすぎて、逆に落ち着かない。
その時、
ガサッ
隣で、布が擦れる音。
佐野勇斗
暗闇の中で、声が落ちてくる。
山中柔太郎
少し間があって、
佐野勇斗
予想外の言葉。
山中柔太郎
適当に返す。
それ以上の会話は、続かなかった。
でも——
さっきまでより、
少しだけ、気になった。
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